防衛大臣記者会見

日時
令和2年1月10日(金)16:56~17:17
場所
防衛記者会会見室
備考
河野防衛大臣閣議後会見

1 発表事項

 本日、JAXA筑波宇宙センターを視察いたしました。昨年度、新たな防衛計画の大綱及び中期防衛力整備計画が策定され、宇宙空間が新たな領域として死活的に重要だという位置付けをされました。JAXAの保有する宇宙分野に関する様々な技術的知見は、これまで以上に重要になってきているところです。JAXAの高い技術や知見、防衛省と連携して進めている宇宙状況監視、こうした取組のほか、理事長との意見交換、また、自衛官から宇宙飛行士になった油井亀美也さん、金井宣茂さんにもお会いをして、国際宇宙ステーションに係る取組等について、説明を受けました。宇宙利用の優位性を確保するための能力の強化にしっかり取り組んでいきたいと思います。

 二件目は、中東地域における日本関係船舶の安全確保に必要な情報収集のための取組に関し、先程、防衛会議を開催し、防衛省としての対応を決定しましたのでお知らせをしたいと思います。昨年末、国家安全保障会議及び閣議において決定された政府の方針を受け、これまで所要の準備を進めてまいりましたが、準備完了の時期について目途がたったことから、先程、「中東地域における日本関係船舶の安全確保に必要な情報収集活動の実施に関する自衛隊一般命令」を発出いたしました。護衛艦1隻をもって派遣される「派遣情報収集活動水上部隊」は、2月2日に出国し、2月下旬に活動を開始するとともに、明日、出国させる「派遣海賊対処行動航空隊」のP-3Cが、1月20日から情報収集活動を併せて開始する予定となります。防衛省・自衛隊としては、日本関係船舶の安全確保のための情報収集活動に万全を期する所存であります。なお、1月11日、海上自衛隊那覇航空基地で実施される本海賊対処行動航空隊の出国行事に私も出席し、出国する隊員に訓示を行い、現地に向かう部隊を見送る予定にしております。

 三件目は、1月12日(日)、陸上自衛隊習志野演習場において実施する予定の令和2年降下訓練始めを視察し、行事に参加する陸上自衛隊の隊員に対して、訓示を行う予定であります。

 四件目です。1月12日から16日の日程で米国を訪問いたします。13日にハワイにある太平洋ミサイル実験施設において、イージス・アショア試験施設等を視察するとともに、インド太平洋軍司令部を訪問し、14日には、ワシントンの国防省を訪問し、エスパー国防長官と日米防衛相会談を予定しております。細部については調整中でありますが、ハワイでは、イージス・アショア試験施設を視察し、アメリカのミサイル防衛庁から性能・安全性等について説明を受けるとともに、米インド太平洋軍司令部を訪問し、意見交換を行う予定であります。エスパー長官との会談では、中東を含むインド太平洋地域の情勢等の共通の幅広い安全保障上の課題、あるいは両国の戦略を具体化するための安保協力推進を含む同盟の強化について話合いをしていきたいと思っております。また、ワシントンでは、シンクタンクにおける講演を予定しております。日本の防衛政策あるいは日米同盟の強化の方策について話をするとともに、有識者の理解の促進を図っていきたいと思っております。

2 質疑応答

Q:海上自衛隊へのアセットの派遣命令について伺います。改めてになりますが、不安定な中東の情勢下で派遣する意義、目的について、説明をお願いします。

A:わが国は、エネルギーの輸入の多くをこの中東地域に依存をしております。特に、原油輸入の9割はこの海域を通るわけで、この海域を通る日本関係船舶の航行の安全の確保に必要な情報収集というのは、極めて重要だと思っております。そういう意味で、2月2日の護衛艦の出港、あるいは明日の哨戒機の出国、以後しっかり準備をして情報収集活動に臨んでいきたいと思います。

Q:関連して、哨戒機を明日、船は3週間余りしかありませんが、先ほど防衛会議で家族への万全のサポートとお話がありましたが、こういう中東情勢で隊員若しくはその家族は不安を感じている方もいると思います。その辺どのようにお考えで、どのように取り組んでいくのでしょうか。

A:昨日、図上演習を視察しましたし、幕僚長を始め、様々意見交換をしておりますが、非常に隊員は士気高く、誇りを持って取り組んでくれていると理解をしております。

Q:家族へのサポートの面についてはどのようにお考えでしょうか。

A:しっかりと家族へも今回の派遣の意義、そうしたことについて説明をしていきたいと思っております。

Q:最後に別件ですが、今日のJAXAの視察について、視察した感想と、政府は、宇宙安全保障上、非常に重要な新領域と位置付けていますが、宇宙防衛の取組として、今後、JAXAと連携を進めていくつもりなのか、どのような連携をしていくつもりなのかお願いします。

A:宇宙というのが、自衛隊が対処しなければならない新しい領域にこれからなってまいります。JAXAの技術、知見を活かした宇宙状況監視をしっかりとやっていかなければならないと思っております。今日もそうした方面の技術の説明等をいただきました。JAXAとしっかり連携し、まず宇宙で何が起きているのかしっかりと把握できる、そういう体制を作っていきたいと思います。

Q:中東派遣についてですが、ソレイマニ司令官が殺害された以降、12月27日以上に緊迫した状況にあると思うのですが、大臣の認識としては、アメリカとイランの危険性についてどのように認識しているでしょうか。

A:中東の緊張が高まっているという状況にはあると思います。だからこそこの日本関係船舶の航行の安全に必要な情報収集活動をしっかりと強化していかなければならないと思っております。

Q:イラク特措法では、自衛隊の活動地域は非戦闘地域ということで一定の制約を設けられておりますが、「調査・研究」では、条文上では非戦闘地域のような制約はなかったと思いますが、憲法上の制約も含めて、今後、自衛隊の活動地域で戦闘状態のようなことになった場合は、どのように対応して隊員の安全を確保していくのでしょうか。

A:自衛隊の活動は、当然、憲法並びに各種法令に従って行うことになります。

Q:戦闘地域の活動というのは非常に危険で憲法上の制約で武力行使ができないと思いますが、そういった場合は自衛隊はどのような対応をすることになるのでしょうか。

A:現在そういった状況にあるとは考えておりません。

Q:今回派遣する中東地域ですが、海上自衛隊が情報収集活動中に近くの米艦が攻撃を受けた場合、その米艦を防護したり又は一緒に反撃することは法律上どういう解釈になるのか。また、米側から燃料とか水とか食料だとか、米軍から依頼を受けた場合、派遣されている護衛艦から提供することは可能なのか、これについて教えてください。

A:今回はIMSCに参加する訳ではありませんので、そうした状況になるとは想定しておりません。

Q:先ほど派遣命令を出して、派遣命令がかかるのは明日出発する哨戒機だけなのか、若しくは2月2日に出発する護衛艦も含めての派遣命令なのか。

A:そういうことです。

Q:アメリカ訪問で、イージス・アショアの試験施設を視察されるということなのですが、現在、秋田県の候補地を巡って再調査が続いていて、遮蔽条件とかインフラ条件とか、あるいは住宅地とかを考慮して再調査されると思いますが、大臣はどのような点に着目して視察をしたいと思いますか。

A:今、詳細は調整中ですが、レーダーですとか、発射装置、あるいは電源といった補助施設というのも、時間が許す限りしっかりと見ていきたいと思っております。能力を含め、安全性についてもきちんと説明を受ける予定にしております。

Q:秋田県あるいは山口県の現場を視察するお気持ちは現時点でありますでしょうか。

A:どこかの段階で行こうと思っております。

Q:不測の事態に備えた対応という意味では、海上警備行動の発動等を想定して、大臣も昨日図上演習などを視察されたりとか、アセットに対して必要な機材を備えたりとかされてきていると思うのですが、現状大臣としては、あらゆるケースを想定した準備、あるいは情報伝達のあり方、課題とかは全て万全を尽くしたと言ってよろしいのでしょうか。

A:2月2日までにそうした準備に万全を期すように指示をしております。2月2日に出港する予定で準備は進んでいると理解しております。

Q:2月2日まで準備が続いていくということですか。

A:食料の積み込みまで含め、2月2日には出港できるように万全の準備を進めているところであります。

Q:護衛艦の補給に関しては、派遣される3海域に面する地域だと思いますが、具体的にどの国とお考えでしょうか。

A:3海域に面するところで、補給を受ける予定になっておりますが、これは相手国との関係で、今、公表を差し控えたいと思います。先方から公表の了解をまだいただいておりませんので、今の時点で公表するのは差し控えたいと思います。

Q:米国でエスパー長官と会談されるということですが、今回の自衛隊派遣を含めて、中東情勢の緊張緩和に向けてどういう効果を期待しますか。

A:これまでも電話会談もしながら、中東の状況については様々意見交換をしてきましたし、自衛隊それぞれ米国のカウンターパートと情勢認識のすり合わせはやってきているところであります。来週ですから、そんなに大きく変わっていると思いませんが、少し時間を取って対面で落ち着いて色んな議論をしていきたいと思います。

Q:海上警備行動が出た場合、イギリスとの連携はあり得るのでしょうか。

A:今回はIMSCに参加をしているわけではありません。

Q:不測の事態への対応ということで、大臣は武力衝突ということは想定していないみたいですけれども、武力衝突が起こるような想定はまだしていないということでしょうか。

A:現在そういう状況にあるというふうに認識をしているわけではありません。自衛隊を派遣する以上、いかなる状況になっても隊員が安全に帰国できるように準備はしておかなければいけないと思います。

Q:航空自衛隊を航空宇宙自衛隊と改称すると報道が出ていますが、現在の検討状況を教えてください。

A:ありません。検討しておりません。

Q:不測の事態への対応ですが、安全に帰国できる準備はしているとありますが、衝突が起きるようなことを踏まえて訓練をしていると考えてよろしいでしょうか。

A:これまで中東の各国を訪問し、先方と会談し、あるいは電話会談等しながら日本の閣議決定の意義、内容を説明し、それに対する様々な支援、協力をお願いしてきているところであります。これまで何度も申し上げているように、それに対してネガティブな反応は全くありません。そういうことから、まず外交的な努力で日本関係船舶の航行の安全並びに派遣される自衛隊のアセットの安全について、かなり地域では理解が進んでいると思っております。

Q:イギリスはホルムズ海峡に護衛艦を出すことを決めていますが、状況の変化を受けて、海域の変更ですとか、ホルムズ海峡への今後の派遣の検討はありますでしょうか。 

A:閣議決定を変更する予定は今のところありません。ホルムズ海峡あるいはペルシャ湾に、派遣された護衛艦が入るということはありません。

Q:今後の情勢の変化次第では、閣議決定の変更もあるということでしょうか。

A:どういうふうに変化するのかにかかってくるのでしょうが、現在、閣議決定を変更しなければならないような情勢には全くないと思っております。

Q:自衛隊派遣なのですが、報道各社の世論調査では、一部反対が賛成を上回るものもあるのですが、現時点で、部隊派遣について、大臣としては国民の理解が十分に得られているとお考えでしょうか。

A:わが国の原油輸入の9割は、先ほど申し上げたように、この海域を通って日本に入ってくるということを考えると、日本の原油、天然ガス、その他を積んだ船舶の航行の安全というのは日本経済にとっての生命線だと思います。その関係船舶の航行安全をしっかり守っていくために、政府としては外交努力をしっかり継続をすると同時に、それぞれの船舶に安全対策の徹底をお願いし、また、今回、自衛隊のアセットを派遣して、そのために必要な情報収集を強化して、こうした政府一体としての努力を通じて、こうした日本関係船舶の航行の安全を守り、わが国へのエネルギーの供給が途絶えるということが万が一にも起こらないように、万全の準備をしていきたいと思っているところであります。国民の皆様には、こうしたことは御理解をいただけるように、これからもしっかりと周知に努めていきたいと思います。

Q:先ほどイギリス軍が護衛艦をホルムズ海峡に派遣するという話がありましたが、日本の今回派遣される護衛艦がホルムズ海峡に万が一入った場合、調査・研究目的でホルムズ海峡を抜けるということをお考えなのか、又は新たな新法の制定が必要なのか、その辺どのようにお考えでしょうか。

A:今回派遣される護衛艦はホルムズ海峡に入りません。

Q:緊張高まる中で中東に自衛官を派遣する命令を出されたわけですけれども、率直に今の心境を教えてください。

A:先ほどから繰り返し申し上げているように、わが国はエネルギー資源、特に原油の大半をこの地域に依存をし、その原油のほぼ全てが船舶で日本に入ってきているわけでありますから、日本の経済、あるいは国民の暮らしを考えれば、こうしたエネルギー資源を積んだ船舶の航行の安全というのは、日本経済あるいは国民の暮らしの生命線と言ってもよいと思います。日本政府が外交努力を続け、先ほど申し上げましたように、船舶それぞれに安全の徹底をしていただくと同時に、必要な情報収集をきっちりやって、このエネルギー供給を守っていきたいと思います。

Q:命令の重みというのはどのように感じられましたか。

A:エネルギーの供給というのが日本経済並びに国民の生活の生命線でありますから、それに資するようにしっかりと情報収集活動をやってもらいたいと思っております。

Q:調査研究というのは、元々部隊の行動を規定したものはないのですが、そういった軽い規定で、極めて危険な地域に自衛隊を派遣することに何か問題があると思いますか。

A:思っておりません。

以上