MAMOR(マモル)2021年11月号

MAMOR(マモル)は、防衛省が編集協力をしている唯一の広報誌です。
防衛省の政策や自衛隊の活動を分かりやすく紹介し、国民とともに防衛を考える広報誌を目指しています。

FEATURE

特集

地図から読み解く 日本の防衛
マモル・アトラス

Military Report

杉山隆男 兵士シリーズ番外編
「自衛隊ワクチン大規模接種」戦記

編集後記

編集長 高久 裕

取材で基地や駐屯地に伺うと、南北が逆になった日本地図が壁にかけてあるのをよく見かけます。初めのころは、その意味が分からなかったのですが、『防衛白書』を見て理解しました。逆さにすると太平洋に進出しようとする中国やロシアにとって、日本列島はフェンスとなっているのがよく分かります。地図からは非常に多くの情報を読み取ることができます。カーナビやスマホの地図アプリに慣れてしまうと、重要な情報を見落とすことがあります。今号のマモルでは、日本の防衛問題を理解するために、地図をじっくり見ていただきます。ここ数年、国内や日本周辺海域で起きているさまざまな事象の理由が分かる、その名も「マモル・アトラス(地図帳)」、とくとご覧あれ!

特集

地図から読み解く 日本の防衛
マモル・アトラス

ライター 古里 学

自衛隊を取材していると、いろいろな名称に面食らったり感心したりすることがあります。たとえばヘリコプターは「AH-64」が「アパッチ」、「CH-47」が「チヌーク」、「UH-60」が「ブラックホーク」、「UH-1」が「イロコイ」と、なぜかアメリカ先住民に由来する愛称が多くあります。「110mm個人携帯対戦車弾Light-weight Anti-tank Munition)」の「ラムLAM」、「軽装甲機動車 Light Armored Vehicle」の「ラヴLAV」などの英語名の略はなんとなくカッコよく、「10式戦車」の「ヒトマル」、「89式小銃」の「ハチキュウ」はいかにも自衛隊という感じ。「中距離多目的誘導弾」の「ちゅうた」、「寒冷地天幕」の「寒天」は、マルクスの『ドイツ・イデオロギー』を『ドイデ』、『ヘーゲル法哲学批判』を『ヘホヒ』というのを思い出しました。

今回、航空自衛隊航空研究センターでお話をうかがい、抑止力が冷戦期のソ連1国から個別の相手に対して使い分ける戦略へと変遷していると知りました。名付けて「テーラード抑止」。仕立て屋さんが客の体型に合わせて服をあつらえるところから付いたネーミングだそうです。国防とオーダーメイド被服の思わぬマッチング。いったい誰が考えたんだろう。

フォトグラファー 江西 伸之

今回、陸上自衛隊東立川駐屯地にある地理情報隊を取材、撮影してきた。「地図を独自に作る唯一無二の部隊」と言われても、正直最初は地味な印象を受けた。

しかしながら、取材を通じ自衛隊の最大の使命である国防はもとより、災害時の国民の生命、財産を守る上で欠かせぬ存在であることを痛感した。

そもそも名前にある「情報」はインフォメーションとも訳される。しかし、彼らの英語名はGeospatial Intelligence Unit(GIU)。収集し蓄積したデータに考察を加えることで、インフォメーションがインテリジェンスへと変わる。宇宙やサイバーなど新たな領域が加わり、技術も進歩する今だからこそ、地理情報隊の存在がより際立つのだと思う。

Military Report

杉山隆男 兵士シリーズ番外編
「自衛隊ワクチン大規模接種」戦記

作家 杉山 隆男

ふつうの日本人がじかに自衛隊の「お世話」になることって、ほとんどないですよね。たぶん119番の消防や警察よりはるかにその機会は少なく、災害の被災地でもなければ接することはまずありません。その意味で今回のコロナワクチン接種によって、国民が自衛隊の「お世話」になる機会は格段に増え、自衛隊の存在をより身近に感じることができたでしょう。そして現地で「お世話」になった人たちは(私も含めてですが)、接種に当たる自衛隊の対応が一切の混乱も生じさせず、いかにスピーディで水際立っていたか、刮目させられたと思います。この組織の頼もしさや実力のほどを、恐らく初めて身をもって体験したのです。

[自衛隊が国民から歓迎され、ちやほやされる事態とは、‥‥国民が困窮し国家が混乱に直面しているときだけなのだ]。そう言ったのは自衛隊の生みの親でもある宰相吉田茂ですが、つまりそれだけ今の日本は、平時ではない、「有事」にあるということです。

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