この法律は、国際的な武力紛争において適用される国際人道法に規定する重大な違反行為を処罰することにより、刑法(明治四十年法律第四十五号)等による処罰と相まって、これらの国際人道法の的確な実施の確保に資することを目的とする。
この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
次のイ又はロに掲げる者であって、捕虜の待遇に関する千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ条約(以下「第三条約」という。)及び千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ諸条約の国際的な武力紛争の犠牲者の保護に関する追加議定書(議定書Ⅰ)(以下「第一追加議定書」という。)において捕虜として取り扱われるものをいう。
捕虜であって、第三条約第百十条第一項(1)から(3)までに該当する者をいう。
次のイ又はロに掲げる者であって、戦時における文民の保護に関する千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ条約(以下「第四条約」という。)及び第一追加議定書において被保護者として取り扱われるものをいう。
次に掲げる事態又は武力紛争において、正当な理由がないのに、その戦闘行為として、歴史的記念物、芸術品又は礼拝所のうち、重要な文化財として政令で定めるものを破壊した者は、七年以下の懲役に処する。
捕虜の送還に関する権限を有する者が、捕虜の抑留の原因となった武力紛争が終了した場合において、正当な理由がないのに、当該武力紛争の相手国(当該武力紛争の当事者間において合意された地を含む。次項において「送還地」という。)への捕虜の送還を遅延させたときは、五年以下の懲役に処する。
前項に規定する者が、正当な理由がないのに、送還に適する状態にある傷病捕虜の送還地への送還を遅延させたときも、同項と同様とする。
第三条第一号に掲げる事態において、占領に関する措置の一環としてその国が占領した地域(以下「占領地域」という。)に入植させる目的で、当該国の国籍を有する者又は当該国の領域内に住所若しくは居所を有する者を当該占領地域に移送した者は、五年以下の懲役に処する。
出国の管理に関する権限を有する者が、正当な理由がないのに、文民の出国を妨げたときは、三年以下の懲役に処する。
占領地域からの出域(被占領国からの出国又は被占領国の国境を越えない占領地域外への移動をいう。以下同じ。)の管理に関する権限を有する者が、正当な理由がないのに、文民(被占領国の国籍を有する者を除く。)の占領地域からの出域を妨げたときも、前項と同様とする。
第三条から前条までの罪は、刑法第四条の二の例に従う。
この法律は、第一追加議定書が日本国について効力を生ずる日から施行する。ただし、附則第三条の規定は、公布の日から起算して二十日を経過した日から施行する。
第七条の規定は、この法律の施行の日以後に日本国について効力を生ずる条約により日本国外において犯したときであっても罰すべきものとされる罪に限り適用する。
刑法等の一部を改正する法律(昭和六十二年法律第五十二号)の一部を次のように改正する。