第15回 IISS地域安全保障サミット マナーマ対話における河野大臣スピーチ(仮訳)

【English】

 2019年11月23 日(土)第3セッション
「 Maritime Security in the Middle East」

 チップマン事務所長、敬愛すべき関係閣僚の皆様、ご列席の皆様、河野太郎です。ここマナーマで改めて日本の防衛大臣としてスピーチできることを光栄に思います。

 私は本年9月に外務省から防衛省に異動し、より多額の予算を持つようになりましたが、同時に頭を悩ませる問題も増えました。昨年と一昨年にお話ししたとおり、私は、中東の平和と安定が日本を含む世界の平和と経済の繁栄に直接関わっており、日本だからこそ中東地域に対して果たせる役割があるとの信念の下、770日にわたり、外務大臣として、日本外交の舵を取りました。そして、その信念は、防衛大臣となっても変わることはなく、防衛大臣となった今、この地域における日本の安全保障上の関与の方向性を導く羅針盤となっています。

 中東は、世界的な商業活動と貿易の中枢です。そして、世界で最も石油の生産量と輸出量が多い地域であるとともに、スエズ運河、ホルムズ海峡、バブ・エル・マンデブ海峡といった海洋のチョークポイントを擁する物流の拠点です。この地域の海洋安全保障が世界の平和と繁栄に大きく直結していることは論を俟ちません。

 日本は、実に貿易量の99.6%を海上輸送が占めています。そして、石油の輸入となれば、中東地域の海上輸送への依存は特に顕著です。したがって、ここマナーマから約8,000km以上離れた日本で安定した経済活動を営むことができているのは、この地域の海洋の安全のおかげと言っても過言ではありません。

 中東における海洋安全保障の課題は、国際社会において、日本の経済成長に見合った責任を果たす機会をもたらしました。中東の原油の安定的な供給は、日本の戦後の高度経済成長を可能にした要因の1つであり、国際貿易の中で、日本の継続した繁栄の基礎であり続けています。我々は、グローバルな経済成長と繁栄を支え、促進し続けている海洋安全保障を維持することの重要性を、強く認識しています。

 1991年、日本は、1954年の自衛隊創設以来の初めての海外実任務として、海上自衛隊の艦艇6隻をペルシャ湾に派遣し、各国海軍部隊と協同して掃海作業を実施しました。このオペレーションは、湾岸戦争後に希望の夜明けが訪れるようにとの思いを込めて「湾岸の夜明け作戦」と名付けられました。派遣された自衛隊は、1件の事故もなく合計34個の機雷を処分し、この極めて重要な地域の安全と安定に寄与しました。「湾岸の夜明け作戦」の成功は、日本の国民の意識にも変化をもたらし、自国の利益のみを追求してはいけないとの日本の国際協調主義の精神に、「目覚め」を与えたと言えます。

 その後も、自衛隊は、この地域の海洋安全保障に寄与し続けてきました。約10年に渡って、インド洋上において、テロリストや武器の海上輸送を断つ海上阻止活動に対する支援を行いました。また、ここバーレーンにあるCTF151司令部に司令官・司令部要員を派遣し、ソマリア沖・アデン湾での海賊対処活動にも10年に渡って参加してきました。現在も、アデン湾において、自衛隊の哨戒機2機と護衛艦が、海賊対処活動を行っています。更に、2012年から「International Maritime Exercise」などの訓練への参加、防衛装備協力、若手士官を中心とした人的交流など、自衛隊と中東地域とのつながりはより幅広く、緊密に行われるようになってきています。

 このように、日本が、周辺の安全保障環境が厳しさを増す中にあっても、湾岸地域やインド洋に自衛隊のアセットや人員を継続的に派遣しているということは、日本が、中東地域の海洋安全保障や平和と安定に人的に貢献する強い意思と能力を有していることの証左です。特に、我々の過去20年以上にわたるアセットや人員の派遣は、日本の周辺の安全保障環境が厳しさを増す中で行ってきました。言い換えれば、我々は、我が国の近くの安全保障上の課題が差し迫っている中においても、ここ中東の海洋安全保障が継続して重要であることを認識しているということです。

 こうして、日本が、中東の海洋安全保障に寄与してきたのは、開かれ安定した海洋秩序が国際社会の安定と繁栄の基礎であると考えてきたからです。過去何世紀にも亘って、海洋に係る情勢は変遷してきましたが、航行の自由の原則は海洋制度の基盤的原理であり続けてきました。そして、今後もそうあらねばなりません。国際法で認められる飛行、航行及び活動が妨げられないために重要なのが、海洋における法の支配の遵守です。

 海洋における法の支配については、安倍総理が2014年のシャングリラ・ダイアローグにて提唱した「海における法の支配の三原則」、すなわち、国家は「法に基づき主張する」「主張する際に力や威圧は用いない」「紛争を平和的に解決する」という原則が端的に日本の基本姿勢を表しています。これらの考え方に立ち、中東地域の海洋を、引き続きいずれの国にも分け隔てなく安定と繁栄をもたらす国際公共財とすることが、全世界の平和と安定にとって必要不可欠だと考えています。

 最後に、これまでの話を踏まえた、昨今のこの地域における地域情勢の変化に対する日本の取組について申し上げます。昨今、中東の海洋安全保障を考えるうえで看過できない事案が続いています。日本は、中東情勢が深刻の度を増していることを強く懸念しています。

 日本は、従来から、中東の緊張緩和と情勢の安定化に向けた外交努力を行っており、本年6月には、安倍総理がイランを訪れ、ハメネイ最高指導者との会談を行い、ローハニ大統領との首脳会談には外務大臣である私も同席しました。日本は、更なる外交努力を行うこととしています。

 また、情報収集態勢の強化を図るため、日本独自の取組として、自衛隊アセットの活用について検討を開始しました。これは、我が国に関係する船舶の安全は勿論、中東地域の平和と安定に資するものです。

 最後に一言申し上げます。日本は、国際協調主義に根差した「自由で開かれたインド太平洋」ビジョンの下、法の支配に基づく国際秩序・海洋秩序の維持に全力を傾ける決意です。これは中東の海洋安全保障だけでなく、世界の平和と安定に資するものと確信しています。ご清聴ありがとうございました。

(以上)