第6回アジア安全保障会議(平成19年6月2日 久間防衛大臣のシンガポール訪問)

 久間防衛大臣は、第6回アジア安全保障会議に出席し、「核の挑戦」に関してスピーチするとともに、シンガポール首相を表敬、シンガポール、フィリピン、ニュージーランド、インド、韓国の各国国防相との二国間会談及び日米豪三ヶ国会談を実施した。

第6回IISSアジア安全保障会議(2007年6月2日、シンガポール)「核の挑戦」久間防衛大臣スピーチ(仮訳)

English

第6回IISSアジア安全保障会議
(2007年6月2日、シャングリラ・ホテル(シンガポール))
久間防衛大臣スピーチ
「核の挑戦」

ご列席の皆様、

 本日、このアジア安全保障会議、シャングリラ会合でスピーチをいたしますことを、嬉しく、光栄に思います。この機会を設けていただいたチップマン所長及びIISS関係者の皆様、また、この会合の場を提供してきておられるシンガポール政府に御礼申し上げます。今日、かかる会合が定期的に開催され、この地域のハイレベルの安全保障の関係者が定期的に意見交換をすることとなったということは、信頼醸成を通じたアジア太平洋地域の安全保障の促進にとって、意義あるものと思います。この地域における安全保障環境は、安定化のための重層的な枠組みがある欧州とは異なりますが、この地域の状況も、関係国の努力によって、様々な安全保障環境改善に向けた動きが見られます。
 ここで、我が国の防衛政策の大きな進展について、一言触れさせていただきます。本年1月、防衛庁は防衛省に移行しました。またその中で、自衛隊の国際平和協力業務を、本来任務へ格上げいたしました。私は初めての「防衛大臣」として、この会合に臨んでおります。これは、防衛省が国際社会の平和と安定に取り組み、国際社会からの期待に応えていくべく、政策策定能力を強化していこうとする決意を内外に示すものであります。なおここで申し上げておきたいことは、我々は専守防衛、非核三原則といった我が国の防衛政策の基本方針を堅持し、変わることはないということです。

ご列席の皆様、

 このセッションのテーマとなっております「核の挑戦」は、我々が直面している大きな安全保障上の課題の一つであります。私の出身地、長崎は、広島と並び、世界で唯一、核兵器による大きな被害を受けたところでありますので、私個人の関心も少なからずあります。
 我が国は唯一の被爆国として、核兵器のない平和で安全な世界を実現することを目指して努力してきております。我が国は、締約国が189カ国に達し最も普遍的な軍縮・不拡散条約である核兵器不拡散条約(NPT)を、国際的な核軍縮・不拡散を実現するための重要な基礎であると位置づけ、重視しており、NPTをはじめとする大量破壊兵器の拡散を防止するための枠組みを維持し、現実的・漸進的に核軍縮を進めていくべきであると考えております。同時に、現実の国際社会においては、未だ核兵器を含む多大な軍事力が存在しており、依然として多くの不安定要因を内包していると言わざるを得ません。このような理解を踏まえ、我が国の核に関する基本的な安全保障政策は、防衛計画の大綱にも述べられておりますとおり、核兵器を作らず、持たず、持ち込ませないという非核三原則を守るとの基本方針を引き続き堅持すると同時に、核兵器の脅威に対しては、米国の核抑止力と相まって、弾道ミサイル防衛システムの整備を含む必要な体制を確立することにより、適切に対応することとしております。
 さらに、今日の国際社会においては、核の脅威はより複雑化しています。すなわち、大量破壊兵器や弾道ミサイルの移転・拡散の懸念、とりわけ、それらが国際テロ組織などの非国家主体に渡る懸念が大きくなってきています。通信手段、移動手段の急速な発達によるグローバリゼーションの進展と、国家間の相互依存関係の拡大は、ある国の安全保障上の脅威が、容易に、世界中に拡散しうることを意味します。安全保障は、もはや、特定の地域に限定されるものでもなく、また、国家対国家の紛争の文脈でのみ論じることもできないのです。ゆえに、我々は、そのような脅威の拡散を阻止するため、協力し、責任ある対応を行っていかなければなりません。

ご列席の皆様、

 北朝鮮は、深刻な経済困難に直面しているにもかかわらず、軍事面に資源を重点的に配分し、大量破壊兵器・弾道ミサイルや特殊部隊などの戦力及びその即応態勢の維持・強化に努めていると考えられ、我が国のみならず地域の重大な不安定要因となっています。
 さらに、北朝鮮は、昨年7月、7発の弾道ミサイルを発射するとともに、10月には核実験を実施したことを発表しました。一連の行動は、国際の平和及び安全に対する明白な脅威であります。国際社会はかかる認識を共有しており、北朝鮮の核実験実施発表の直後、これを非難し、北朝鮮及び各国がとるべき措置を盛り込んだ国連安保理決議第1718号は、全会一致で採択されました。北朝鮮をめぐっては、核だけでなく、大量破壊兵器の運搬手段たる弾道ミサイルの問題もあり、また、人権問題である日本人拉致問題もあります。我が国は、6者会合等の場を通じ、これら懸案事項の包括的な解決を目指しております。北朝鮮に対するエネルギー支援については、拉致問題を含む日朝関係に進展が得られるまで、我が国は参加しないこととしています。
 核・ミサイル技術拡散の可能性、人権問題の普遍性等を踏まえると、これらの懸案事項は、日朝間、あるいはアジアだけにとどまる問題ではなく、国際社会全体の問題です。国際社会は、一致結束して、北朝鮮が国際社会のルールに従うよう促していく必要があります。

ご列席の皆様、

 最後に、防衛省・自衛隊としての取組の例について紹介したいと思います。
 先に述べたとおり、現代の世界において、安全保障は各国間で相互に関連しており、核の問題についても、国際社会におけるより幅広い協力が必要とされています。こうした取組の一つに、拡散に対する安全保障構想(PSI)があります。PSI活動は、広く防衛、外交、法執行、輸出管理などを包含した安全保障の問題として、各国が総力を結集し、平素から主体的・積極的に取り組むことにより、大量破壊兵器の拡散防止に万全を期すことが必要と考えます。我が国は2003年5月のPSI発足当時よりその趣旨に賛同し、参加してきておりますが、今後もその枠組みの強化のために積極的に貢献してまいります。  さらに、防衛省・自衛隊は、今日の多様で複雑化した脅威に対応できるよう、多機能で弾力的な実効性のある防衛力を整備してきております。その一つに、大量破壊兵器による攻撃に対して実効的に対処するための努力があり、これにより、大量破壊兵器を用いた攻撃をする意欲を低下させられるものと考えます。
 例えば、我が国は、同盟国である米国とともに、弾道ミサイル防衛(BMD)システムを整備してきています。特に大量破壊兵器と結びついたとき、弾道ミサイルの脅威はより深刻なものとなります。我が国は90年代より弾道ミサイル防衛に関する日米の共同研究を行ってきましたが、1998年、北朝鮮が日本上空を越える弾道ミサイルを発射したことにより世論の関心が高まりました。その後も大量破壊兵器及び弾道ミサイルの拡散の進展が見られる中、BMDシステムの技術的な実現可能性が高いことが確認されたことから、我が国は、2003年、BMDの導入を決定しました。我が国が整備を進めているBMDシステムは、自衛隊が保有している既存の装備品等を活用し、イージス艦による上層での迎撃とペトリオット・システムによる下層での迎撃を統合的に運用する多層防衛の考え方を基本とし、本年3月には我が国初めてのBMD迎撃能力としてPAC-3が実戦配備され、本年12月にはSM-3搭載イージス艦が初めて配備されます。我が国は、能力向上型SM-3ミサイルの日米共同開発にも着手しています。
 また、大量破壊兵器の攻撃を受けた際の、部隊の運用能力の持続及び被害極限のための態勢を整えておくことも喫緊の課題であり、我が国は米国と協力しつつ、かかる能力の向上に努めているところです。

ご列席の皆様、

 こうした重層的な取組を通じて、核の脅威に対抗する手段がより実効的なものとなり、国際社会に脅威を与えようとする試みが割に合わなくなることを期待しております。たとえ大きな飛躍ではなく小さな一歩であったとしても、よりよい未来のために、協力し努力していこうではありませんか。

ご静聴ありがとうございました。

久間防衛大臣の第6回アジア安全保障会議の出席について(概要)

平成19年6月4日

 6月2日、久間防衛大臣は標記会合に出席したところ概要以下のとおり。

1.スピーチ(6月2日)

「核の挑戦」と題するスピーチを実施。

(1)冒頭、我が国の防衛政策の大きな進展として、省移行、本来任務化を紹介。

(2)核兵器の拡散に対する基本的立場

 我が国は唯一の被爆国として、大量破壊兵器の不拡散体制(NPT)を維持し、現実的・漸進的な核軍縮を進めるべきというのが我が国の基本的立場。また、依然として核兵器を含む多大な軍事力が存在する現実を踏まえ、非核三原則を守りつつ、米国の核抑止力と相まってBMD等必要な体制を確立し適切に対応するというのが我が国の基本的な安全保障政策。
 グローバリゼーションの進展等により、核の脅威はより複雑化しており、そのような脅威の拡散を阻止するため、各国の協力と責任ある対応が必要。

(3)北朝鮮

 北朝鮮は深刻な経済困難にもかかわらず、軍事面に資源を重点配備しており、日本のみならず地域の重大な不安定要因。ミサイル発射・核実験実施発表といった一連の行動は、国際の平和と安全に対する明白な脅威。
 安保理決議1718が採択、六者会合等で諸懸案を包括的に解決する必要。
 北朝鮮が国際社会のルールに従うよう国際社会が結束して促す必要。

(4)防衛省の取組:PSI、BMD、WMD対処

 PSI:03年5月の発足当初より積極的に参加、その枠組み強化のため積極的に貢献。
 BMD:90年代より日米共同研究、北朝鮮の日本上空を越えるミサイル発射実験(98年)で世論の関心高まる。BMDシステム導入決定(03年)、イージス艦とペトリオット・システムによる多層防衛。本年より実戦配備開始、能力向上型迎撃ミサイルの日米共同開発にも着手。
 WMDの攻撃を受けた際の対処への取組も実施。

(5)こうした重層的な取組を通じて、核の脅威に対抗する手段がより実効的なものとなり、国際社会に脅威を与えようとする試みが割に合わなくなることを期待。

 なお、スピーチ後の質疑応答において、日本の核武装の可能性、BMD、憲法改正について質問があり、久間大臣より適宜応答。

2.各国国防相等との会談

 シンガポール、フィリピン、NZ、インド、韓国の国防相と個別に会談し、米国及び豪州の国防相と初の日米豪防衛相会談を実施したほか、シンガポール首相を表敬した。

(1)日シンガポール防衛相会談

 テオ・チーヒン国防相と会談、シャングリラ会合の重要性について先方より言及、省移行・本来任務化について当方より説明するとともに、部隊間交流等の日シンガポール防衛交流の促進などについて意見交換を行った。

(2)日フィリピン防衛相会談

 エブダネ国防相と会談、省移行について当方より説明するとともに、留学生等の日フィリピン防衛交流の促進などについて意見交換を行った。

(3)日NZ防衛相会談

 ゴフ国防相と会談、昨年同国防相が来日したことにも触れつつ、部隊間交流等の日NZ防衛交流の促進などについて意見交換を行った。

(4)日印防衛相会談

 アントニー国防相と会談、海上の安全保障や国際平和協力活動での日印の協力の拡大の可能性に触れつつ、部隊間交流等の日印防衛交流の促進などについて意見交換を行った。

(5)日韓防衛相会談

 金国防長官と会談、双方の中国情勢認識について意見交換し、様々な分野での日韓防衛交流の促進などについて意見交換を行った。

(6)シンガポール首相への表敬

 リー・シェンロン首相を表敬、シャングリラ会合の有用性について双方より発言があり、イラク等への国際平和協力活動、我が国と中国・韓国との防衛交流について当方より説明、防衛交流の重要性について認識の一致を見た。

(7)日米豪防衛相会談

 ゲイツ米国防長官及びネルソン豪国防大臣との3者間で会談し、北朝鮮の核問題等について意見交換を行うとともに、4月に初めて開催された局長級の日米豪安全保障・防衛協力会合や5月の太平洋長距離航空輸送セミナーなど、最近の3国間での安全保障・防衛協力関係の進展を確認し、今後とも同分野における3国間の協力関係を推進していくことで意見の一致をみた。

会議・首脳会談等の記録

第6回アジア安全保障会議
第6回アジア安全保障会議
第6回アジア安全保障会議
第6回アジア安全保障会議
日本・シンガポール防衛相会談(平成19年6月2日(土)於:シンガポール)
第6回アジア安全保障会議
日本・ニュージーランド防衛相会談(平成19年6月2日(土)於:シンガポール)
第6回アジア安全保障会議
日本・大韓民国防衛相会談(平成19年6月2日(土)於:シンガポール)
第6回アジア安全保障会議
日本・フィリピン防衛相会談(平成19年6月2日(土)於:シンガポール)
第6回アジア安全保障会議
日本・インド防衛相会談(平成19年6月2日(土)於:シンガポール)

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