令和4年度研究開発シンポジウム

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 航空自衛隊航空開発実験集団司令部は令和4年11月30日、府中の森芸術劇場において「令和4年度研究開発シンポジウム」を開催しました。

 本シンポジウムはこれまで毎年開催して参りましたが、新型コロナ禍のため、一昨年は中止、昨年はオンラインでの配信のみとして開催いたしました。今年は3年振りに会場に参加者をお招きして開催するとともに、オンラインでの同時配信も行い、産学官の多くの方の参加をいただきました。

 本年度のシンポジウムは、テーマを「挑戦」、副題を「Agile Innovation」として開催いたしました。近年の諸外国の紛争における戦闘様相は急速に変化を遂げており、特に、民間で利用されているドローンなどの無人機、AI、また、米国民間企業などの衛星コンステレーションによる通信などに代表されるような、最新の民生技術の積極的な活用例が非常に多く見られます。このように、民間における最新技術を積極的に活用し、新たなイノベーションを起こしていくことは戦闘に勝利するうえで重要な要件になっており、急速に変化する我が国を取り巻く環境に適切に対応するためには、研究開発や新たなイノベーション創出に繋がる各種活動を、より迅速に行っていく変革(Agile Innovation)を起こすことが必要不可欠です。そのためには、産学官関係者のAgile Innovationへの理解を深め、具体的な活動に繋げることが重要であることから、我々の新たな挑戦としてこのテーマを設定しました。

 午前の部では、司令部研究開発部長による「航空開発実験集団の研究開発の取組み状況」の発表を皮切りに、株式会社アストロスケールCEOの岡田光信氏より「宇宙の持続的利用の実現と令和時代の起業家精神」と題した基調講演をいただきました。この講演は、宇宙の持続可能性の推進に寄与する各種課題や目標達成のための正しい課題設定等の困難を乗り越える秘訣などについて、岡田氏のこれまでのご経験に裏打ちわれた非常に示唆に富むものでした。

 午後の部は、2つのパネルディスカッションを開催しました。

 パネルディスカッションⅠでは「デジタルエンジニアリング×Agile Innovation」をテーマに、デジタルエンジニアリング゙手法を取り入れて事業を展開されている企業等の方々にご参加いただき、それぞれの企業等において直面している課題等、特にAgile Innovationを推進する上でのデジタルエンジニアリングの活用の必要性や課題等についてご発表いただき、それらに対する議論を通じて、今後の方向性や課題等の解決策などを明らかにすることを目的に行いました。モデレータには慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授の白坂成功氏、パネリストにはJAXA航空技術部門航空イノベーション統括の伊藤健氏、株式会社SUBARU技術開発センター空力制御設計課係長の梅沢翔氏、三菱電機株式会社鎌倉製作所主管技師長の廣川類氏の3名の方に参加いただきました。本パネルディスカッションでは、Agile Innovationを推進する上でのデジタルエンジニアリングの活用の必要性や課題等の他に、デジタル技術を活用した革新の推進における人材育成の重要性と難しさについても議論され、デジタルエンジニアリングの推進がAgile Innovationを成功させる鍵となる展望を得ることができました。参加者におかれましても、今後の官民におけるデジタルエンジニアリング推進に向けて大変参考になるものであったのではないかと思います。

 パネルディスカッションⅡでは、「アジャイル型研究開発における課題等」をテーマに、アジャイル型研究開発手法を取り入れて事業を展開されているスタートアップ企業等の方々にご参加いただき、直面しているそれぞれの課題等についてご発表いただいて、その課題等に対する議論を通じて、アジャル型研究開発の今後の方向性や課題等の解決策などを明らかにすることを目的に行いました。モデレータには東京大学スカイフロンティア社会連携講座特任准教授の中村裕子氏、パネリストとしてはインターステラテクノロジズ株式会社代表取締役社長の稲川貴大氏、株式会社SkyDrive CTOの岸信夫氏、株式会社テラ・ラボ代表取締役の松浦孝英氏、メトロウェザー株式会社代表取締役 CEOの古本淳一氏の他、司令部技術課長の5名の方に参加いただきました。本パネルディスカッションでは、スタートアップ企業の方々が抱えるアジャイル型研究開発の課題等に加え、航空自衛隊におけるアジャイル型研究開発の課題等についても発表させていただきました。各スタートアップ企業のアジャイル型研究開発に対する意気込み、特に失敗を恐れないマインドセットの重要性を改めて認識させていただくなど、航空自衛隊おけるアジャイル型研究開発を推進する上だけでなく、スタートアップ企業以外の一般企業の方々にもアジャイル型研究開発の課題を克服するための深い知見を得ることができたものと思います。

 また、ポスター展示会場においては、航空開発実験集団の隷下部隊が実施した試験成果などについても紹介を行いました。それぞれの試験担当者等が、参加者に丁寧に説明を行うとともに、様々な質疑にも対応しました。