交響組曲「ラメセスU世」 Symphonic Suite -Ramesses U-
このページでは、2020年2月1日(土)に開催した第57回定期演奏会にて演奏しました交響組曲「ラメセスU世」のライブ演奏音源をYoutubeリンクにてお聴きいただけます。
この作品は1995年全日本吹奏楽コンクール課題曲として発表された行進曲「ラメセスU世」を大幅にスケールアップして再構成された交響組曲で、曲は4つの楽章からなり、それぞれの楽章ごとにエジプト史上の中でも英主の一人とされるファラオ「ラメセスU世」の生涯や、それに関わる人物や風景が音楽によって描かれています。(演奏時間約31分)
〜交響組曲「ラメセスU世」について〜(作曲者より)
20代半ばの若き日、私は古代エジプトをテーマにした一風変わったマーチを書きました。
その曲は朝日作曲賞を受賞し、翌年1995年度全日本吹奏楽コンクールの課題曲『行進曲ラメセスU世』として多くの方々に演奏していただきました。
それから十数年経った2011年9月、行進曲を含む全4楽章の『交響組曲ラメセスU世』をブリディッシュブラスバンド版で発表する機会をいただき、翌2012年4月には吹奏楽版での再演が実現しました。
そして2020年、この曲が生まれてからちょうど25年という節目の年に、こうした華やかな舞台で披露いただけるという思いがけない幸運に恵まれました。
私の心を揺さぶる古代エジプト・・・。幼い頃、エジプトを舞台にした古い映画の世界観に魅せられました。
その長い歴史の中でも最大最強といわれるファラオをテーマに行進曲を書いた後、私は作曲賞の賞金で念願のエジプト旅行に出かけたのでした。
実際に目にする"とてつもないスケール"の古代遺跡は、さらに私の創造意欲を掻き立てました。
あの日からずっと、いつか『交響組曲ラメセスU世』を書くことを人生の目標としてきたのです。実際にこの目で見た遠い異国の風景と私の空想を織り交ぜて描いたこの4曲、古代エジプトにタイムスリップして想像を膨らませながら聴いてもらえたらと思います。
最後になりましたが、このような機会を与えて下さった航空自衛隊航空中央音楽隊の皆様をはじめ、すべての関係者の方々に、厚く御礼申し上げます。
また、25年前、多くの方々と青春を共にしたこの『ラメセスU世』という曲を、いつまでも愛してくださるすべての方々に、心より感謝申し上げます。
阿部 勇一
〜演奏の様子〜
楽曲解説
第1楽章:前奏曲「夜明けのアブシンベル〜太陽と砂の地ヌビア」
(動画内演奏開始時間:00:03〜、08:17〜)
冒頭にアブシンベルを中心とした壮大な砂漠の地の夜明けを描写される。
やがて夜になりラメセスU世を称えるダンスの場面に展開し、高らかなファンファーレを合図にラメセスU世が登場する。(約10分27秒)
第2楽章:行進曲「ラメセスU世」
(動画内演奏開始時間:10:35〜)
全日本吹奏楽コンクールの課題曲となったのがこの楽章であり、ラメセスU世率いる軍隊が勇ましく行進する様を描いている。(約3分15秒)
第3楽章:夜想曲「愛するネフェルタリ」
(動画内演奏開始時間:14:00〜)
ラメセスU世が生涯で最も愛したと言われている王妃ネフェルタリを題材にした楽章で、曲想からもラメセスU世の彼女に対する愛の強さを感じ取ることができる。(約5分43秒)
第4楽章:終曲「カディッシュの戦い〜ナイルの平和」
(動画内演奏開始時間:19:53〜、28:08〜)
戦に向かう前の不安な心境〜戦闘開始のファンファーレ〜戦闘風景〜撤退〜戦の後の静寂と場面は展開していく。
この戦はラメセスU世にとって非常に苦しい戦いだった事が古代エジプト文献にも残されており、決着がつくことはなく、最終的に世界最古と言われる平和条約が結ばれたと言われている。
やがて場面は移り、カディシュの戦いによって荒廃したエジプトの大地に平和が訪れ、民衆から称えられるラメセスU世。軍隊はファンファーレと太鼓を鳴り響かせ、偉大なラメセスU世の姿を輝かしく浮き彫りにして、華々しく曲は終わる。(約11分17秒)
作曲家プロフィール
阿部 勇一(あべ ゆういち)
吹奏楽曲・ブラスバンド楽曲・アンサンブル楽曲・合唱曲などの作曲を主な活動としている。
1992年『吹奏楽のためのフューチュリズム』、1995年『行進曲ラメセスU世』(朝日作曲賞受賞)が全日本吹奏楽コンクール課題曲に採用された。
2002年に第5回21世紀の吹奏楽「響宴」に初参加。以後8回参加し新作を発表している。
近年はアンサンブル楽曲も多数手掛けており、クラリネットの為の超絶技巧練習曲シリーズ (2020年現在第10番まで)は全日本アンサンブルコンテストなどで度々演奏されている。
小編成作品にも力を注ぎ、『ファンタスマゴリア』『折鶴』『ヒロイック・ストーリー』など、スクールバンド向けの演奏し易い作品も発表している。
大編成作品の代表作としては『大唐西域記より』『交響詩ヌーナ』『交響組曲ラメセスU世』『沈黙の地球(ほし)〜レイチェル・カーソンに捧ぐ〜』とその続編『われらをめぐる海」などがある。
また明治期日本の夜明けを描いた『黎明のエスキース』、故郷秋田の英雄で南極探検家の白瀬矗(のぶ)の生涯をテーマにした『極海』など、力強くも抒情的でドラマチックな作風を特徴として精力的に作曲している。