防衛省・東北防衛局がおくる日本の防衛Q&A
(12月放送内容)



 

テ−マ:防衛施設の建設工事について

 
 


パーソナリティー:

 本日も東北防衛局長にお話を伺います。深澤局長、よろしくお願いします。

局長:
 はい。よろしくお願いします。
 今日は、6月の放送でお話した防衛施設の建設工事について、少し具体的にお話したいと思います。

パーソナリティー:
 前回のお話では「防衛施設」とは、確か、陸・海・空の各自衛隊と在日米軍の施設だったと記憶しておりますが。

局長:
 はい。自衛隊や在日米軍がその能力を発揮するためには、航空機や艦船などの装備が重要となるのはご理解いただけると思いますが、それらを受け入れるための「飛行場施設」や「港湾施設」、装備品の研究開発を行うための「試験施設」なども、防衛力として欠くことのできない重要な基盤となっています。
 また、庁舎や格納庫、レーダー通信施設といった運用に関連する施設に加え、隊員が勤務のために寝泊まりする隊舎や食堂、浴場、隊員とその家族が住むための宿舎など生活関連の施設も自衛隊等が活動するには欠かせない施設です。このような施設をまとめて防衛施設と言っております。

パーソナリティー:
 主に建築工事を行うのですか。

局長:
 はい。建築工事はもちろんですが、他に土木工事、設備工事も行います。

パーソナリティー:
 土木工事と言えば道路・橋やトンネルが思い浮かぶのですが、もう少しくわしく教えて下さい。

局長:
 はい。道路工事と言っても、戦車や自衛隊の特殊車両が通行できるように整備しなければなりません。その他の土木工事では、戦闘航空機などの滑走路や誘導路など舗装工事、航空機・車両の燃料を貯蔵する大規模な燃料タンク工事、自衛隊が扱う弾薬類を貯蔵する地下式貯蔵庫工事、自衛隊の艦船を係留する桟橋工事など多種多様の施設整備を行っています。
 また、設備工事は、電気設備、機械設備及び通信設備の3種類に区分され、電気設備工事では、照明、火災報知設備などの他、発電設備や飛行場照明などの複雑で大掛かりな電気設備の整備も行っています。機械設備工事では、空気調和、換気、衛生器具設備などの他、エレベーター、ボイラーなどの精密な機械設備の整備も行っています。通信設備工事では、電話やインターホンなどの他、自衛隊特有の無線設備などの通信設備の整備を行っています。

パーソナリティー:
 それらの工事は、防衛局の皆さんが行っているのですか。

局長:
 当局では、これらの自衛隊や在日米軍の防衛施設の建設業務を、主に調達部という部署が行っていますが、調達部の職員が実際に工事をしている訳ではありません。実際に工事にあたるのは、民間の建設会社であり、調達部の職員は、その工事を発注するための調査や設計、工事費用の算定、工事の現場監督や工事完成時の検査など一連の業務を行っています。

パーソナリティー:
 調達部でお仕事される方々は、専門的な技術が求められるのですね。

局長:
 はい。戦闘機や護衛艦などの装備品を受け入れるための特殊な施設まで造る必要がありますので、それらを建設するためには幅広い知識と技能を有する職員が必要になります。
 そのため調達部は、建築、土木、電気、機械、通信とインフラ整備に必要な5つの技術分野のエキスパートで構成されており、彼らの身分は防衛技官と称しています。
 建築士、測量士、土木施工管理技士、電気工事士など、特殊な資格や技能を有する職員が多数在籍しています。

パーソナリティー:
 頼もしいですね、まさに建設技術のプロ集団ですね。
 このような自衛隊施設は一般の施設と比べてどのような違いや特徴があるのでしょうか。

局長:
 はい。防衛施設はその特性上から、国土交通省などが建設する一般の人が利用する施設とは異なる基準に基づいて整備することになります。有事や大規模災害の際に、自衛隊がその能力を発揮できるように、建築物の壁を通常より厚くして強くしたり、窓ガラスが飛散して隊員が負傷をしないようにガラス材料を特別なものにする施設もあります。また、自衛隊の施設は、災害派遣や物資輸送の拠点となることから、その機能を維持するため、電力、空調、通信機能などの途絶(とぜつ)対策を行っております。

パーソナリティー:
 東日本大震災では、地震にともなう津波により航空自衛隊松島基地が大きな被害を受けたと記憶しておりますが、電力などの設備は大丈夫だったのでしょうか。

局長:
 はい、東日本大震災では、松島基地の受電所やボイラー設備など多くの設備機器が津波により水没し、これら施設の機能の一部が失われました。
 防衛力の基盤である防衛施設は、平時はもとより、このような非常時こそ機能を発揮するものでなければならず、この震災で得た教訓を踏まえ、東北防衛局管内の各自衛隊施設においては、浸水対策、防水対策などを行っております。

パーソナリティー:
 震災の教訓も踏まえて万全の対策をとっているのですね。
 最近の防衛施設の工事で、何か特徴的なものがあれば紹介していただけますか。

局長:
 はい。まず、在日米軍の関係では、送油管工事についてご紹介したいと思います。
 青森県三沢市に所在する米軍三沢基地の航空機用のジェット燃料は、八戸港にある米軍の燃料タンクから約27qを送油管、つまりパイプラインで送られています。この送油管は地中に埋設されていますが、八戸市内を流れる馬淵川(まべちがわ)を横断する場所につきましては、河口付近を横断する橋の橋桁の下に取り付けられています。
 この橋の老朽化に伴い、橋を管理する八戸市において架け替えが計画されましたので、送油管を別の場所に移動させることとなりました。そこで、川底よりも下の地盤に川を横断するトンネルを掘り、この中に送油管を通すこととしました。このトンネルは「推進工法」と呼ばれる地下鉄や大規模な下水道工事に用いられる工法で、専用の掘削機械を使って工事します。川底の地盤は岩石などの障害物も多く、それを人が入って取り除ける場所でもないことと、少しのミスでも川の決壊を引き起こすことから、現在、慎重に掘り進めているところです。

パーソナリティー:
 複雑で細心の注意が必要な工事なのですね。
 自衛隊の施設の工事についてもご紹介いただけますか。

局長:
 はい。東北防衛局では、航空自衛隊三沢基地において最新鋭の戦闘航空機F−35Aの受入れのための施設整備工事を平成25年度から進めてきました。
 F−35Aは敵のレーダーに捕捉されにくいステルス技術が装備された第5世代の戦闘航空機と言われています。最新鋭の機体を運用するため、乗員及び整備員の教育訓練施設、指揮所、機体の点検・整備を行うための整備場、機体やエンジンの部品などを保管・管理するための補給倉庫などの新設工事を進めてまいりました。現在、訓練機材などの設置が進められており、間もなくして同機は三沢基地に配備され、日本の空の守りとして活躍することになります。

パーソナリティー:
 いろいろな施設を建設されていることがよくわかりました。
 本日は、東北防衛局の深澤局長から、お話をお伺いいたしました。
 貴重なお話、どうもありがとうございました。

局長:
 はい、こちらこそ、どうもありがとうございました。

 
   
  
 
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