自 衛 隊 百 科
自衛隊インビテーション
(2月放送内容)



テ−マ:北朝鮮の核実験について



パ−ソナリティ−:
 本日も東北防衛局の齋藤雅一局長にお話をいただきます。齋藤局長よろしくお願いします。

齋藤局長
よろしくお願いいたします。

パ−ソナリティ−:
 それでは、本日は「北朝鮮の核実験について」のお話しということですが、どんなお話しでしょうか。

齋藤局長:
  本日は、先月1月6日午前に北朝鮮が行った核実験についてのお話しをしたいと思います。これについては1月8日に防衛大臣が会見でもお話ししましたが、政府としては、気象庁が探知した地震波や、北朝鮮による核実験を実施したとの発表など、関連する情報などを総合的に勘案した結果、北朝鮮が核実験を行ったものと判断しております。北朝鮮の発表によれば、水爆実験を成功させたと言っております。今回の核実験による地震の規模はマグニチュード5.0と推定されており、過去3回の核実験と比べても大差がないということから、一般的な水爆実験を行ったとは考えにくいものと認識している旨も防衛大臣からの発言がありました。

パ−ソナリティ−:
  これまでも何回か北朝鮮は、このような核実験を実施していると記憶しておりますが、日本海を挟んですぐ隣の国なので怖いですよね。北朝鮮の核開発はどの程度進んでいるのですか。

齋藤局長:
  はい。北朝鮮の核実験は、今回が4回目となります。過去には2006年10月、2009年5月、2013年2月に実施しており、今回の核実験は、北朝鮮の核兵器開発をより一層進展させるものであり、強く懸念すべきものであると考えます。このような北朝鮮の核兵器開発は、運搬手段となり得る弾道ミサイル能力の増強と併せ考えれば、我が国の安全に対する重大な脅威となります。我が国としては、情報収集に努めたわけですが、北朝鮮による核開発の現状は、北朝鮮が極めて閉鎖的な体制をとっていることもあり、断定的なことは言えません。過去の核兵器開発の状況が解明されていないことや、今回4回目の核実験を実施したことなどを考えれば、核兵器開発が相当に進んでいる可能性も排除できないわけで、さらに、2010年11月には、北朝鮮がウラン濃縮施設を公開し、また数千基規模の遠心分離機を備えたウラン濃縮工場の稼働に言及したことは、北朝鮮が高濃縮ウランによる核兵器開発を推進している可能性があることを示すものであります。
 また、弾頭化の段階まできているか否かを含む北朝鮮の核兵器計画の現状については、断定的なことは申しあげられません。しかしながら、一般的に言って核兵器を弾道ミサイルに搭載するための小型化には相当の技術力が必要とされているため、米国、ソ連、英国、フランス、中国が60年代までにこうした技術力を獲得したと見られることや、2006年以降4回の核実験を実施したことなどを踏まえれば、北朝鮮が核兵器の小型化・弾頭化の実現に至っている可能性も排除できないと思われます。


パ−ソナリティ−:
 現在の北朝鮮の軍事力そして態勢はどのようなものなのでしょうか。

齋藤局長:
  はい。朝鮮半島では、半世紀以上にわたり同一民族の南北分断状態が続いています。現在も、非武装地帯を挟んで、160万人程度の地上軍が厳しく対峙しています。北朝鮮の総兵力は韓国の約66万人に対し、約119万人、陸軍兵力では韓国の52万人に対し、約102万人と韓国と比べても、かなり多い軍事力を誇っています。因みに日本の自衛隊は14万人ですから、その規模の大きさが分かると思います。その北朝鮮は、昭和37年に朝鮮労働党中央委員会で採択された四大軍事路線に基づいて全軍の幹部化、全軍の近代化、全人民の武装化、全土の要塞化ということで、軍事力を増強してきました。
  また、北朝鮮の軍事力は、陸軍中心の構成となっており、現在も依然として戦力や即応態勢を維持・強化していると考えられます。その装備の多くは旧式でありますが、情報収集や破壊工作からゲリラ線まで各種の活動に従事する大規模な特殊部隊などを保有しており、北朝鮮の全土にわたって多くの軍事関連の地下施設が存在するとみられていることも、特徴のひとつです。

パ−ソナリティ−:
  そうなんですね。北朝鮮の兵力の数というのはすごいんですね。ところで北朝鮮が核実験をする背景にはどんなことがあるのですか。

齋藤局長:
  はい。北朝鮮の核兵器開発については、事実上の核兵器保有国として地位を確保することによって米国などとの交渉を優位に進め、何らかの見返りを得ようとするいわゆる瀬戸際政策であるとの指摘がなされてきました。一方で、北朝鮮の究極的な目標は体制の維持であるとの指摘が米国防省からなされているように、米国の核の脅威に対抗する独自の核抑止力が必要と考えているからとも言えます。たとえば、平成26年3月に発表された朝鮮民主主義人民共和国国防委員会声明では「米国が北朝鮮に対して核の威嚇と恐喝を行っており、北朝鮮は国と民族の自主権を守護するためにやむを得ず核抑止力を持つことになった」との主張や、平成25年12月の「労働新聞」論評は、「イラク・リビア事態は、米国の核先制攻撃の脅威を恒常的に受けている国が強力な戦争抑止力を持たなければ、米国の国家テロの犠牲、被害者になるかもしれないという深刻な教訓を与えている」などと主張し、核兵器は交渉における取引の対象ではないと繰り返し主張していることなどを踏まえれば、まさに北朝鮮は体制を維持するうえでの不可欠な抑止力として核兵器開発を推進しているとみられるわけです。
 これまで我が国を含む国際社会は、累次にわたり、北朝鮮に対し、関連の国連安保理決議の完全な遵守を求め、核実験や弾道ミサイルの発射等の挑発行為を決して行わないよう強く求めてきております。

パ−ソナリティ−:
  そうなんですね。北朝鮮の核実験については、少し理解できたかなと思われますが、最終的な目的は何かあるのでしょうか。

齋藤局長:
  はい。核兵器を弾道ミサイルに搭載するための努力をしているものと考えられます。一般に、核兵器を弾道ミサイルに搭載するための小型化には相当の技術力が必要とされています。北朝鮮が平成18年10月に初めて核実験を実施してから既に9年以上が経過し、今回で4回目となる核実験の実施により、このような技術開発期間及び実験回数は、米国及びソ連などにおける小型化・軽量化技術のプロセスと比較しても不十分とは言えないレベルに到達しつつあると思われます。
  また、韓国の「2014国防白書」においても「北朝鮮の核兵器の小型化能力はかなりの水準に達している」との評価が示されているところです。このように北朝鮮が核兵器計画を継続する姿勢を崩していないことを踏まえれば、時間の経過とともに、わが国が射程内に入る核弾頭搭載弾道ミサイルが配備されるリスクが増大していくものと考えられ、関連動向に注視していく必要があります。また、北朝鮮による核兵器開発は、北朝鮮が大量破壊兵器の運搬手段となりうる弾道ミサイルの長射程化などの能力増強を行っていることと、あわせて考えれば、わが国の安全に対する重大な脅威であり、北東アジア及び国際社会の平和と安定を著しく害するものとして断じて容認できるものではないことは明らかであります。
  また、平成26年3月、6月、7月及び27年3月にもみられたように、しばしば弾道ミサイルを発射し、我が国を含む関係国に対する軍事的挑発を行っております。このように、北朝鮮の弾道ミサイルも、核実験ともあいまって、その能力向上の観点、移転・拡散の双方から、わが国を含む北東アジア及び国際社会にとって、より現実的で差し迫った問題となっており、その動向が強く懸念されるものであります。

パ−ソナリティ−: 
  はい。ありがとうございます。今回は北朝鮮の核実験についてのお話し、誠にありがとうございました。

齋藤局長:
 こちらこそ、どうもありがとうございました。




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