防衛省・東北防衛局がおくる日本の防衛Q&A
(10月放送内容)



 

テ−マ:平和安全法制について

 
 
 


パ−ソナリティ−:
 本日も東北防衛局長の齋藤雅一さんにご登場いただきます。局長、よろしくお願いいたします。
 
齋藤局長:
 よろしくお願いいたします。

パーソナリティー:
 今日は、どのようなお話をしていただけるのでしょうか。
 
齋藤局長:
 はい。今日は、先月に成立しました「平和安全法制」についてのお話をしたいと思います。
 まず、背景ですが、国際情勢において、米国が圧倒的な優位を占めていた状況から、パワーバランスが変化するとともに、近年、各国が軍事力を増強するとともに、軍事活動を活発化する傾向にあります。特に北朝鮮の核・ミサイルの脅威が顕在化しています。
 また、イスラム国などの国際的テロ組織や、海上交通路(シーレーン)における航行の自由に挑戦する動きなど、脅威が多様化してきており、日本を巡る安全保障環境は厳しさを増しています。
 また、国連PKOのみならず、その他の国連機関や欧州連合・アフリカ連合などの地域連合も平和維持活動を実施し、各国が協力して活動する国際協力が不可欠な時代となってきております。
 この法案の内容を見てみますと、従来から、自民・公明政権或いは、民主党政権下の有識者懇談会などで指摘されながらも、具体的措置が講じられてこなかった措置が大半を占めています。今までの積み残されていた課題であったと言っても、過言ではありません。

パーソナリティー:
 はい、この法案は成立するまでには何ヶ月もかかって、国会を延長してまで審議されてきたわけですよね。全国各地で反対運動も起こりました。そこまでしてこの法案を成立させなければならなかったのは、なぜなんでしょうか。
 
齋藤局長:
 はい。国民の生命・財産、そして領土・領海・領空を断固として守り抜くためにも、安全保障は政府の重要な責務です。現在の厳しい国際情勢を見ても分かるとおり、「平和」は待っていればやってくるものではなく、志を同じくする仲間とともに、自ら汗をかいて創り出すものです。
 世界第3位の経済大国である日本は、日本周辺の厳しい安全保障環境に対応するとともに、世界のさらなる平和と安定のため、積極的な取組が求められております。
 例えば、これまでですと日本のNGOや、他国部隊を含むPKO要員が自衛隊の所在地から離れた場所で武装集団に襲われた場合、国連PKOに参加する自衛隊は、助けにいくことはできません。
 かつてインド洋やイラクで自衛隊は様々な活動を行いましたが、今では法律が失効したため、洋上給油や海外への物資の輸送などの支援活動ができなくなっています。こうしてできないことや、できなくなったことが実は多いわけです。
 これまで、日本は、アジア、中東、アフリカ、中南米など、世界各地で約30の国際活動に参加し、のべ約5.3万人の自衛隊員を派遣し高い評価を受けてきました。国際社会は我が国のより積極的な関与を期待しています。米国を始め、国際社会のこの法律への期待と評価はとても高いものがあります。
 平和安全法制は、いかなる事態においても日本国民の命と平和な暮らしを守り、国際社会の平和と安定に一層貢献するため、これまでの不備を埋め、抑止力を高め、国際協力の機会を広げようとするものです。よく聞く「戦争法案」というものでは決してありません。

パーソナリティー:
 はい。そうなんですね。言われてみますと、平和安全法制の背景みたいなものや、何で今なのかというものが、少しずつ理解ができたようにも感じますが、もう少し、分かりやすく、平和安全法制についてポイントみたいなものをお話していただけますか。

齋藤局長:
 はい。一般に集団的自衛権の行使とは、同盟国や友好国などが武力攻撃を受けた際、その国を守るため、自らも武力の行使を行うことです。こうしたフルスペックの集団的自衛権の行使は、憲法の制約から認められません。
 今回の法制で認める集団的自衛権は、日本の防衛のために必要な、極めて限定的な場合のみです。
 日本と密接な関係のある同盟国などへの攻撃が発生して、結果的に日本の存立や国民の生命、自由、幸福追求の権利が脅かされるときのみ発動可能ということです。
 ある意味「自分勝手」かもしれませんが、あくまでも「日本の存立のため」にしか発動ができないということです。
わかりやすく火事に例えるならば、隣の家に火事が起きたときに、自分の家に火の粉が飛んでくる場合だけ一緒に消火するということです。
自分の家に燃え移ることがないのであれば、消火はできません。少し厳しすぎるかもしれませんが、これが憲法の要請です。日本の防衛のための必要最小限度の集団的自衛権の行使というわけです。
 また、「日本の平和と安全に重要な影響を与える事態」という定義はこれまでと変わりません。
 これまでは、アメリカ以外の友好国などへの支援ができず、支援内容も限られていましたし、日本の領域外で支援を行うこともできませんでした。今回の法制では、過去の法律である旧テロ対策特措法、旧イラク人道復興支援特措法などの下での支援活動の経験も踏まえ、支援の範囲を拡充します。

パーソナリティー:
 なるほど。集団的自衛権の発動は、あくまでも「日本の存立や国民の生命、自由、幸福追求の権利が脅かされる時にのみ」発動が可能だということが、よく理解できました。そのほかの内容はどうですか。

齋藤局長:
 はい。日本は、武力紛争後の復興支援や人道支援の分野での国際平和協力活動を得意としていて、これまでも高い評価を受け、また、高い期待も寄せられております。
 今回の法制により、活動し得る範囲が広がり、より一層の貢献が可能になります。あくまでも厳格な参加5原則の下での活動にとどめるとともに、隊員の安全確保にも配慮しています。
 また、国際テロ組織への対処など、国際社会が直面する脅威においては、国連のお墨付きを得て、国際社会が一致団結した対応が必要です。国際社会が一致して汗を流している時に、ともに活動する各国の軍に対して、支援を行えるようになります。これにより実施可能となるのは、あくまでも、物資・人員の輸送といった後方支援や、施設活動のような人道復興支援など、武力の行使に当たらない範囲のものであり、かつて、インド洋やイラクで行った活動と同じものです。これにより、国際社会の平和と安定に一層貢献することができることとなります。
 また、活動の際の限定的な武器使用権限や、国会承認、透明性のある手続きなど、歯止めを明確に規定しています。

パーソナリティー:
 そうなんですね。国会承認などは、どのように規定されているのですか。
 また、法案成立後も、マスコミ関係では、国民の理解がなかなか広がらなかったという報道が多数寄せられておりましたが、どのように考えているのでしょうか。

齋藤局長:
 はい。各法律によって異なりますが、原則、事前の国会承認が必要であったり、例外なく国会承認を必要としているなど、厳格な歯止めを明確にしているところです。
 この平和安全法制は、国民の命と平和な暮らしを守る大切な法律です。「スキのない構え」でさらに抑止力を高めます。戦争に巻き込まれることも徴兵制になるようなことも決してありません。
 また、法案成立後の大臣の記者会見でも、「法案成立によって、日本の平和主義を維持しつつ、我が国の安保保障体制をしっかりすることができ、一歩も二歩も、我が国の安全、これが進むのではないかということで、非常に意義のある法案が成立したと認識をしており、今後は、まだ、国民の皆様方には十分にその意味が理解されていない部分がございますので、実際の対応を通じて、引き続き理解されるよう努力をして参りたいと思っている」といった大臣発言がございました。東北局でも、機会あるごとに、法律の内容等について理解が得られるよう説明をして参りたいと考えております。

パーソナリティー:
 はい。本日は、安保法制について東北防衛局の齋藤局長から、お話を伺いました。どうもありがとうございました。

齋藤局長:
 はい。こちらこそ、どうもありがとうございました。



 

 

 
  
 
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