防衛省・東北防衛局がおくる日本の防衛Q&A
(9月放送内容)



 

テ−マ:防衛白書の解説

 

 

パ−ソナリティ−:
 
本日も東北防衛局の齋藤雅一局長にお話をいただきます。局長、よろしくお願いいたします。
 
齋藤局長:
 よろしくお願いいたします。

パーソナリティー:
 今日は、どのようなお話でしょうか。
 
齋藤局長:
 はい。今日は、今年7月21日に発表された「平成27年版防衛白書」のお話をしたいと思います。27年度版においては、読者に容易に理解して頂けるよう、各種施策の関連性を基に部・章を集約した構成となり、平成26年版の4部構成から3部構成となっております。
 第1部では、北朝鮮による核・弾道ミサイル開発や、中国の海空域における活発な活動など、一層厳しさを増す「わが国を取り巻く安全保障環境」について記述をしています。
 第2部では、国会に提出された平和安全法制2法案の経緯と概要などの「わが国の安全保障・防衛政策と日米同盟」について記述をしています。
 第3部では、各種事態に対する実効的な抑止及び対処や、27年度防衛力整備、人的基盤の整備などを一括して記述した統合機動防衛力の構築に向けた取組、防衛装備・技術協力の推進、安全保障協力の積極的な推進としての各国との防衛協力・交流などの「国民の生命・財産と領土・領海・領空を守り抜くための取組」について記述をしています。  
 また、防衛白書は前回の刊行から概ね1年間に発生した事象や政策などを中心に取りまとめており、27年版白書の記述対象期間は、平成26年7月から平成27年5月下旬までを対象として作成しております。

パーソナリティー:
 では、第1部から第3部までのポイントから説明していただけますか。
 
齋藤局長:
 はい。第1部のポイントは、北朝鮮の核・弾道ミサイル開発、自民党の部会で、記述が不十分だとの指摘を受けた、東シナ海での新たな海洋プラットフォームの建設など、新たな中国の海空域における活発な活動、ウクライナをめぐってロシアが欧米との間で対決姿勢を明確にしていることなどを記述しています。
 また、竹島については、17年版白書より、従来からの我が国の立場を踏まえ、「わが国固有の領土である北方領土や竹島の領土問題が依然として未解決のまま存在している」ことを記述しており、27年版白書においても、同記述を踏襲しています。
 また、近年、世界各地で発生する地域紛争は民族、宗教、領土、資源などの様々な問題に起因して発生しており、その態様も、武力紛争から軍事的対峙の継続まで多岐に亘っています。こうした中で、特に23年に本格化した「アラブの春」以降、中東・アフリカ地域を中心に、政情の不安定化や統治能力のぜい弱化を生んでおり、これらにより発生・拡大した国家統治の空白地域が、テロ組織の活動の温床となる例も多く見られています。この点、昨今台頭が著しいイラク・レバントのイスラム国についても、シリア内戦やイラク国内の宗派対立等により生まれた、国家統治の空白を背景に勢力を拡大させたと見られています。
 このように、昨今の地域紛争は国際テロリズムを巡る動向と強い関連を有する事象となっていることから、今回の防衛白書では、地域紛争と国際テロリズムの節を一つにまとめております。
 また、新たに「海洋をめぐる動向」を追加しております。四方を海に囲まれた海洋国家であるわが国にとって、「海洋安全保障」が持つ重要性は極めて大きいと言えます。例えば、我が国は資源、エネルギーの輸入を海上輸送に依存しており、海上交通の安全確保が国家の存立にとり死活的な問題となるからです。

パーソナリティー:
 はい。第1部の内容については、分かりました。今年の始めには、イスラム国により、罪のない日本人2名が、理不尽にも犠牲となった事件もありましたよね。同じ日本人として絶対に許すことのできないことであり、忘れてはいけないことだと思います。
 また、中国については、南沙諸島の岩礁を埋め立て、滑走路や港湾を整備しているという報道もありましたよね。それでは第2部でのポイントはどうなんでしょうか。

齋藤局長:
 はい。第2部のポイントは、平和安全法制2法案の経緯と概要、新ガイドラインや日本の外務・防衛大臣と米国の国務・国防長官による「2+2」、沖縄の負担軽減などを含めた日米同盟の強化、統合幕僚監部への実運用機能の一元化や防衛装備庁の新設といった防衛省改革などについて記述をしています。具体的な内容については、「わが国の安全保障と防衛の基本的な考え方」として、平和安全法制整備法及び国際平和支援法案の2法案から成る平和安全法制について記述するとともに、治安出動・海上警備行動の発令手続の迅速化に係る閣議決定などや、国家安全保障戦略と防衛計画の大綱等の概要などのほか、防衛装備移転三原則に係る内容、そして防衛省改革においては、改革の背景・経緯と防衛装備庁の新設などの具体的な取組などについて記述しています。
 
パーソナリティー:
 はい。それでは第3部でのポイントはどうでしょうか。

齋藤局長:
 はい。第3部のポイントは、統合機動防衛力の構築に向けた取組、防衛装備品に対する諸施策、安全保障協力の積極的な推進及び地域社会・国民とのかかわりなどについて記述をしています。領空侵犯に備えた警戒と緊急発進(スクランブル)については、平成26年度の空自機による緊急発進回数が943回と過去2番目に多い回数となったことや、「防衛装備品に関する諸施策」では、長期契約制度の導入などによるコスト縮減効果として、海自哨戒機P−1(20機)の調達で、約417億円の削減を見込んでいること、各国との防衛協力・交流では、日ASEAN防衛担当大臣テーブルなど、アジア太平洋地域における多国間安全保障枠組み・対話や本年6月のシャングリラ会合などについてや、豪、韓国、インド、中国、東南アジア諸国との防衛協力や交流などを、また、海洋安全保障の確保として、海賊対処について、自衛隊初の多国籍軍部隊司令官となるCTF151、これはバーレーンに本部を置く連合海上部隊:第151連合任務部隊のことですが、この司令官を派遣していることなどについて記述しています。

パーソナリティー:
 今年も盛りだくさんの白書ですね。最後に27年版白書の特徴と26年版からの変更点はなんでしょうか。

齋藤局長:
 全体のページ数は昨年度に比べて81ページ、約16%減っており、ここ10年で最もコンパクトなものになっています。ダイジェスト版を冒頭に掲載したり、巻末資料には、重要な論点を掲示し得る図表を纏めて収録し、利便性の向上を図る目的として巻末に整理しております。
 また、27年版の工夫と致しましては、A4版にして、記述の集約、余白の排除などにより、コンパクト化を図り、文字フォントも0.5ポイントですが、拡大することにより、見やすさを向上しております。毎年発刊される防衛白書は、防衛問題全般について網羅的に記述しておりますので、理解を深めるのに非常に役にたつと思います。是非多くの方にご覧になっていただければと思います。

パーソナリティー:
 はい。本日は、27年版防衛白書について東北防衛局の齋藤局長から、お話を伺いました。局長、どうもありがとうございました。

齋藤局長:
 はい。こちらこそ、どうもありがとうございました。


 

 

 
  
 
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