パ−ソナリティ−:
このコーナーでは、毎月1回東北防衛局長の齋藤雅一さんにおこしいただき、様々なお話しをいただいております。本日もよろしくお願いします。
齋藤局長:
はい、よろしくお願いします。
パ−ソナリティ−:
では、早速ですが、今日の話題はなんでしょうか。
齋藤局長:
はい、今日は、私ども防衛省・自衛隊の装備品等について、お話をしたいと思います。
パ−ソナリティ−:
自衛隊の装備品というと、戦車や戦闘機というイメージがありますが、今日のお話はそういった装備品についてですか。
齋藤局長:
防衛省の装備品と言いますと、確かにそういう戦闘に直接関係するものがイメージされますが、自衛隊の装備品には様々なものがあります。
例えば、自衛官が着用している制服なども国が調達して各人に支給しているものです。
パ−ソナリティ−:
衣服が支給されているんですか。
齋藤局長:
はい、制服や戦闘服、帽子、靴、靴下、シャツなども一定数が支給されています。制服などは、長く使用してすり切れたり、体型が変わったりすると交換したりしています。また、退職したりする際には、制服などは返納するようになっています。
パ−ソナリティ−:
なるほど、その他の装備品はいかがでしょうか。
齋藤局長:
はい、最近話題になっている自衛隊の装備品に、海上自衛隊が保有している「救難飛行艇US−2」という国産の航空機があり、今日はこれを中心にお話ししたいと思います。
パ−ソナリティ−:
あ、それ、私もちょっと聞いたことがあります。
いつでしたか、確か関西の有名なニュースキャスターともう1名の2名が小型ヨットで太平洋横断をしようとした時に、事故でヨットが遭難して、それを最終的に救助したのが海上自衛隊の救難飛行艇だったという話でしたよね。
齋藤局長:
そうです。遭難した場所が宮城県の金華山沖約1200kmの海上であったため、航続距離の長いUS−2の出番となったわけです。機体の上半分は翼のある航空機、下半分は船という個性的な外観です。
まず、通報を受けて現場に真っ先に到着したのは、海上保安庁の航空機で、その航空機が最初にボートの2人を発見しました。
パ−ソナリティ−:
日本の近海ですから海上保安庁が救助に行くということも可能だったのでしょうか。
齋藤局長:
もう少し近いところであれば、ヘリコプターで直接行くことも出来たのでしょうが、なにしろ、片道1200kmも離れた海の上です。行って帰ってくるだけで、約2400kmの距離を飛ばなければいけないので、航続距離が短いヘリコプターでは、どんなに頑張っても、片道で燃料切れになってしまいます。
また、船で行くとすれば2〜3日はかかってしまうでしょう。
この時はヨットが浸水し、雨が降っていて海上が荒れていたこともあり、一刻の猶予も許されない状況でしたから、US−2の出番となったわけです。
なにしろ、US−2の航続距離は約4500km、巡航速度は時速約480km/hもありますから。
パ−ソナリティ−:
飛行艇ですから、直接、海の上に降りることができるんですよね。
齋藤局長:
はい。ただし、この時は雨が降っていて、波の高さは3〜4m、風速16〜18mの荒れた天候だったそうです。
US−2が着水可能な波高は3mですので、かなり厳しい状況でした。現場に到着した1機目のUS−2は現場で1時間ほど上空にとどまっていましたが、波が高いため着水できず、燃料切れで引き返しました。
パ−ソナリティ−:
US−2でも着水できないほどの荒れた天候だったんですね。
齋藤局長:
そうですね。しかし、その後、2機目のUS−2が、波高が3m程度になった瞬間をねらって着水して、2名を救助したそうです。
パ−ソナリティ−:
すごい性能の飛行艇ですね。
齋藤局長:
はい。もちろん、飛行艇を運用している自衛隊員の日頃の訓練の成果があって、初めて生かされる性能でもあります。
実は、US−2のすごい性能は、随分以前から世界では知られていました。
パ−ソナリティ−:
日本では、最近みたいですね。
齋藤局長:
はい、今回の救助活動がテレビで放映されることで、日本では有名になりましたが、世界の舞台では2009年のフィリピンで開催された「ASEAN地域フォーラム災害救援実動演習」において、US−2はマニラ湾に着水して遭難者を救助するという想定で行われた実動演習に参加し、その高い性能を初めて目の当たりにした参加各国(ASEAN諸国、米国、EUなど11カ国1地域)の関係者から絶賛されたそうです。
パ−ソナリティ−:
そんなすごい飛行艇を持っているのは、日本だけなんですか。
齋藤局長:
日本以外で飛行艇を製造している国としては、ロシアとカナダがあります。ただし、着水できる波高はロシアが1.2m、カナダが1.8mと波の穏やかな湖水や湾内の水面の着水を想定しており、US−2のように外洋の荒海に着水することを想定していません。
いかに、US−2が飛び抜けた性能を持った航空機であるか、お分かりいただけるかと思います。
パ−ソナリティ−:
そんなすごい飛行艇なら、人命救助のために色々な国々が欲しがるでしょうね。
齋藤局長:
はい。実際に、現在、インドが具体的にこのUS−2導入に関心があり、現在協議中です。インドの他にもタイ、インドネシア、ブルネイからも引き合いがあるそうです。
パ−ソナリティ−:
日本製の航空機の優秀さが世界に認められたことは、非常にうれしいのですが、自衛隊の装備品を海外へ輸出するのは、ハードルが高いのではありませんか。
齋藤局長:
はい。以前は、「武器輸出三原則」によって、例えば、PKOで使ったブルドーザーでさえも現地に置いてくるのには困難を伴いました。そうした制約の中、実は私が防衛省の航空機課長の時、US−2などを念頭に自衛隊開発航空機の民間転用について指針を取りまとめました。その後、昨年4月に閣議決定した「防衛装備移転三原則」により、防衛装備品の輸出の可能性が更に高まって来ていると思います。
パ−ソナリティ−:
日本のすぐれた技術力を世界に知っていただくためにも、是非実現して欲しいですね。
齋藤局長:
そうですね。なお、「防衛装備移転三原則」については、また別の機会にお話ししたいと思います。
パ−ソナリティ−:
はい、どうも有り難うございました。本日は、自衛隊の装備品等について東北防衛局の齋藤局長から、お話しをお伺いいたしました。どうも、ありがとうございました。
齋藤局長:
はい、こちらこそ、どうも有り難うございました。
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