自衛隊インビテ−ション
(7月放送内容)



テ−マ:国際社会と自衛隊

パ−ソナリティ−:

 今日は東北防衛局中村吉利局長にお話をお伺いします。
それでは、よろしくお願いします。


中村局長:

 はい、よろしくお願いします。今日はですね、最近広がりを見せている自衛隊と国際社会との関わりにつきまして、その一端についてお話をしたいと思います。実は、このことを考えるきっかけとなりましたのが、先月19日、青森県の八戸航空基地で行われた海賊対処部隊の帰国行事なんです。この活動、5年前の開始当時、私は防衛省の広報を担当して
いまして、マスコミの関心も高かったことから、記者に対する活動の説明ですとか現地見学の機会を設けるということなどしたものなんです。
どういった活動なのかと言いますと、アフリカ大陸とアラビア半島とに囲まれたアデン湾とその周辺の海域で、海上と空から監視を行って、各国の海軍と共同して海賊を防止しようというものなんです。このアデン湾周辺と言いますのは、スエズ運河を経てアジアとヨーロッパを結ぶ大変重要な海域なんですけれども、海賊が横行して、各国の商船ですとか客船が数多く被害に遭っていたんです。2009年から3年間は、年間200件以上の海賊事案が発生していたんですけれども、日本を含む各国の努力もあって、2012年以降は、前の年の3分の1ぐらいに減ってきているんです一方、開始から5年が経ちますと、海賊の件数も減ってきたこともありまして、マスコミの話題に上ることは少なくなってきたんですけれども、海上自衛隊の活動は、今も国際的に非常に高い評価を得ているというものなんです。


パーソナリティー:

 そうなんですね。海賊と言うと、なかなか身近には感じられないんですが、日本の船が海賊被害に遭うと国民生活に直結することになるので、国際的にはもちろんですが、私たちにとっても大変重要な活動ですね。


中村局長:
  そうですね。資源や食料の多くを海上輸送に頼っている我が国にとって、これは本当に重要な問題だと思います。その意味で、減ったとは言え、海賊はまだ予断を許さない状況ですし、まだまだ自衛隊の海と空での活動は続きそうです。このうち、海上部隊は、船自体が隊員の生活と活動の拠点になるんですけれども、航空部隊というのはそういうわけにはいきません。そこで、海賊対処の航空部隊については、アデン湾の西側にあるジブチという国の国際空港に隣接をする形で、自衛隊初の海外基地とも言われる活動拠点を設けているんです。冒頭申し上げました、八戸の航空部隊は、約4ヶ月の派遣期間を全うして、ジブチから帰って
きたというわけなんです。


パーソナリティー:

 国際社会から求められて、様々な活動を行っている自衛隊ですが、海外における活動としてはPKOが有名ですよね。


中村局長:
  PKOと言いますと、国連の平和維持活動ですね。似たような活動に国際緊急援助活動というのがあるんですけれども、もともとの原因となっているのが、基本的にPKOは紛争、国際緊急援助活動は自然災害という違いがありまして、活動の根拠は別の法律になっています。この2つの法律は、今から22年前に施行されたんですけれども、当時は、大変大きな話題になっていました。自衛隊の部隊がPKOに初めて参加したのは、1993年のカンボディアでの活動なんですけども、当時は300人とも言われる日本のマスコミが現地にやってきて、ちょっとした事件が連日ニュースのトップを飾るというような状態だったんです

パーソナリティー:
 最近はその活動がマスコミの話題に上ることが少ないように感じますね。  

中村局長:
  はい。今も自衛隊は、アフリカの南スーダンという、新しい国の国造りのための活動に参加していますけれども、確かに、活動がマスコミの話題に上ることは少なくなってきています。それだけ、PKOなども自衛隊にとっての通常の業務であるという認識が深まってきたのだろうと思いますけれども、遠く離れた異国の地で、厳しい環境の中、重要な任務を行っているわけですから、国民の皆さんの理解がより深まっていってほしいと思います。
  一方、国際緊急援助活動の方ですけれども、最近の例では、今年1月にもお話をしました、フィリピンの台風被害に対する派遣があります。海外とはいえ自然災害に対する救援活動ですから、活動の期間は比較的短くなります。一方、PKOは、紛争の後の国家再建ですとか停戦の監視が主な業務になりますから、1948年から継続をしているものなど、非常に長い期間活動しているものも中にはあるんです。 ところで、自衛隊による国際社会との関わりの中でも、こういった部隊派遣を伴うものは、割と皆さんの関心を引くんですけれども、そのほかの目立たないところでも、自衛隊は様々な面で国際社会に貢献しています。このうちの一つとして、能力構築支援というものをご紹介したいんですけれども、これ、ご存じでしたか。


パーソナリティー:

いえ、このことはちょっと存じ上げないのですが、文字通り能力の構築のための支援ということだと思うんですが、中身を教えて下さい。


中村局長:

 これまで申し上げたPKOといったものは、何か問題が発生した後に行われる活動なんですけれども、近年では、こうした問題の発生を未然に防ごう、若しくは、問題が発生しても被害を最小限にとどめるための努力を日頃から行っておくことの重要性が指摘をされているんです。途上国等に対してこの分野で協力をすることを、能力構築支援と言っているんですね。「事前」に様々な対応を行っておけば、被害の未然の防止などに効果があることは、地震ですとか津波への備えの大切さから、よくご存じのことだと思います。しかし、とは言っても途上国などでは、予算ですとか人材、技術面の問題で、十分に対応できないケースもあって、自衛隊は、近年、様々な支援を行いつつあるんです。例えば、東ティモールでは、災害時の対処ですとか車両の整備要領などについて教育を行ったりして、この分野での人材の育成に協力をしています。また、カンボディアでは、軍の施設部隊がPKOに参加した際に効果的な活動ができるように、道路構築などの教育を行っています。これらは、数ヶ月に及んだ活動なんですけれども、そのほかにも、東南アジアをはじめとする各国で、医療ですとか気象に関するセミナーを開くなど、短期的な活動も行ってるんです。


パーソナリティー:
 
 自衛隊が、これまでに培ったノウハウを伝授していくと、人間的なつながりもできると思います。その国との関係が近くなるというメリットもありますね。

中村局長:
 はい、二国間での関係はそのとおりなんですけれども、やはり途上国が能力を向上させると、その地域の安全保障面での安定にもつながりますし、また、こうした点に努力する自衛隊、更には日本への信頼感の向上にもつながっていくんだろうと思います。そのほかにも、防衛省・自衛隊では、多国間ですとか二国間での関係を強化するために、様々な努力を行っています。各国のカウンターパートと二国間の関係を強化するための取り組みとしては、入り口としての「対話」に始まって、「交流」、さらに「協力」という具合にステップアップしていくんですけれども、自衛隊や各国の軍というのは、自国の平和と独立を守るための実力組織ですから、少なくとも「対話」は十分に行って、お互いに相手を理解することが、近隣諸国との間で偶発的な問題が発生することを避ける上でとても重要だと思います。

パーソナリティー:

 はい、有り難うございました。対話そして交流、協力という、こういった3本柱、本当に素晴らしいものだと思います。今日もたくさんのお話、有り難うございました。

中村局長
  はい、有り難うございました。


TOPページへ