防衛省・東北防衛局がおくる日本の防衛Q&A
(7月放送内容)



 

テ−マ:自衛隊の警戒監視活動

 

 

パ−ソナリティ−:

 
  防衛省東北防衛局が送る、日本の防衛Q&A。このコーナーでは、防衛省・自衛隊や日本の防衛について、詳しく分かりやすくお話しをいただきます。本日も東北防衛局の中村吉利局長にお話をお伺いします。局長、本日もよろしくお願い致します。  

中村局長:
 
  よろしくお願い致します。
 


パーソナリティー:

 
 最近なんですが、南西諸島の方面での中国の活動に伴いまして、部隊の新設など自衛隊の警戒監視を強化、といったニュースをよく聞くんですが、自衛隊による警戒監視とはどのような内容なのか、今日は、この点についてお話を頂ければと思います。


中村局長:

 
  はい、わかりました。
 自衛隊の警戒監視と言いますと、分かり易く言いますと、何か起きた、又は何か起きそうな時には、すぐに必要な行動を開始できるように、日本の領域とその周辺を、常に見張っているという活動であるかと思います。と言いますと単純なようなんですけれども、日本の島の数は六千を超えていて、領海と排他的経済水域を併せると世界で6番目の面積になります。ここからも分かるとおり広大な地域を見張っていなければなりません。また、日本に対して何か仕掛けてくるという方も、単純にやってくるわけではないので、相手に裏をかかれないよう、様々な方法で、細心の注意をもって、24時間365日態勢を維持をしていかなければならない、すごく大変な仕事なんです。
 
具体的な活動についてご説明しておきますと、現在は、北海道の周辺、日本海、東シナ海の3つの海域で、海上自衛隊のP−3C哨戒機によって、船を識別をして、活動の状況を確認をするという活動が毎日のように行われています。また、我が国には、津軽海峡を含め、大陸から太平洋につながるいくつかの重要な海峡がありますけれども、ここには陸上自衛隊の沿岸監視隊ですとか海上自衛隊の警備所が置かれていて、24時間態勢で監視を行っています。さらに、全国28カ所に航空自衛隊のレーダーサイトがあって、我が国の上空とその周辺を常に監視をしています。東北地方で申し上げますと、青森県むつ市、岩手県山田町、秋田県男鹿市、福島県川内村の4カ所にレーダーサイトがあるんです。そのほか、必要があれば護衛艦ですとか航空機を派遣するなど、警戒監視という範疇では、まだまだ挙げなければならない活動があるんですけれども、代表的なところは以上です。
 ところで、最近、警戒監視飛行を行っていた自衛隊の航空機に対して、中国の軍用機が異常に接近をするという事案が発生をしているんですけれども、日常的に行っている活動とは言っても、現場の隊員の緊張感には大変なものがありますし、まさに、警戒監視活動は領域を守るための一丁目一番地、平常時における国防の最前線と言えるかと思います。
 

パーソナリティー:
 
  なるほど。まず日本の島が六千を超えていたことが、世界でも6位に入るという、本当に幅広く警戒の面を行っていかなければならないんだなということを感じました。ところで、このように多くの部隊が活動を行っている中、さらに部隊を新設しなければならないという理由はどこにあるんでしょうか。  


中村局長:

 
 海洋進出を進めている中国が、南西諸島の方面で活動を活発化させているということは、改めてご紹介する必要はないと思いますけれども、実はこの地域で自衛隊が十分な警戒監視活動を行うためには、必要な基盤が完全に整備されているわけではないというように考えられてきたんです。
 
このため、いくつかの施策が進行していますけれども、まずご紹介したいのが、日本の最も西に位置する沖縄の与那国島への陸上自衛隊沿岸監視部隊の配置と、航空自衛隊の移動式警戒管制レーダーを展開させるための基盤の整備というものなんです。これらが実現をしますと、付近で活動する他の国の船ですとか航空機の状況をより早く把握できて、周辺を飛行する自衛隊の航空機のより効率的な運用が可能になるといったようなメリットがあります。
 
また、航空自衛隊には、E−2Cという警戒監視のための航空機がありますけれども、沖縄県の那覇基地に、E−2C部隊を新たに編成しようと計画をしています。さらに、南西諸島で何か起こった場合の初動を担当する部隊を作るための検討も進めているんです。
 


パーソナリティー:

 

 天網恢々疎にして漏らさずと言いますけれども、見張りの網の目は細かい方が安心できますよね。

 

中村局長:
 

 そのとおりなんですけれども、やはり人員ですとか予算には限りがありますので、その時々の安全保障環境に即した、メリハリのある配置がどうしても必要になるということなんです。

 

パーソナリティー:
 

そこで出てくるのが、以前ご説明頂きました「統合機動防衛力」によって、何かあれば全国から部隊が素早く駆けつけてくれるようにしておくということなんですね。

 

中村局長:
 
  さすがですね。おさらいをしますと、「統合機動防衛力」とは、陸海空自衛隊の統合運用と、迅速な展開を意味する「機動」が組み合わされて、様々な事態に素早く対処することはもとより、必要な活動を継続的に、かつ状況が変化しても継ぎ目なく実施出来るようにしていこうとするものでした。とは言っても、例えば、日本のある島が攻撃された場合に、上陸する前に敵を撃退した方が被害も少ないわけですから、様々な兆候を察知するための警戒監視活動の重要性は、「統合機動防衛力」が完成をしても変わらないということなんです。  

パーソナリティー:
 
  日本の領土、領海、領空はなんとしても守ってもらいたいんですが、南西諸島の方面では、領土に関して中国が独自の主張を行っていますし、ちょっとしたことで衝突してしまっても困りますよね。  
 
中村局長:
 
  そうですね。そうした現場での偶発的な衝突を避けるために、日本側からは、中国に対して、連絡のメカニズムを作ろうということを提案していて、これからも機会を捉えて協議を呼びかけていきたいと思っています。この点に関連して申し上げますと、ロシアとの間では「海上事故防止協定」というものが1993年に締結をされていまして、海上での危険な行為や偶発的な衝突を避けるための措置が決まっていて、毎年両国が会合して、さらに安全を確保していくための話し合いを行っているんです。こういった努力を重ねていきますと、両国関係がどのような状況でも、現場レベルでカウンターパートに対する理解と信頼が深まってきますので、是非とも中国との対話も進んでほしいと思っています。  

パーソナリティー:

ところで、中国との関係では、尖閣諸島の周辺などで海上保安庁も大変な思いをしているようですが、自衛隊との関係はどうなっているんでしょうか。


中村局長:
 海上における治安の維持は、海上保安庁が第一義的に担っていて、尖閣諸島の周辺で海上保安庁は、巡視船ですとか航空機による警告・退去要求などを行っていることはよくご存じだと思います。日本の領域は断固として守りつつ、事態をエスカレートさせないような対応を長期間強いられているわけで、現場の人たちの苦労は並大抵ではないんだろうと思います。一方、自衛隊は、先程来申し上げている各種の警戒監視活動で得られた情報を海上保安庁と共有をしたりして、密接に連携をしています。なお、海上保安庁が対応できないような事態になった場合、防衛大臣は、総理大臣の承認を得た上で、自衛隊に対して「海上における警備行動」というものを命じることができるんですけども、現在はそのような状況にはなっていないということです。

パーソナリティー:
 なるほど。さて本日のこのコーナーは、自衛隊の警戒監視というトピカルな話題についてお話を頂きました。私の得意な四文字熟語がまた一つ増えました。どうも有り難うございました。
 
中村局長:
 こちらこそ、どうも有り難うございました。

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