自衛隊インビテ−ション
(6月放送内容)



テ−マ:防衛装備移転三原則について

パ−ソナリティ−:

 今日は東北防衛局中村吉利局長にお話をお伺いします。局長、よろしくお願いします。
 
中村局長:
 よろしくお願いします。

パ−ソナリティ−:

早速ですが、今日はどんなお話をお伺いできるのでしょうか。


中村局長:

 今日はですね、少し前にニュースで話題になっていた「防衛装備移転三原則」、これまでの「武器輸出三原則等」に代わるものとして、4月1日に閣議決定されたものなんですけれども、これについてお話をしたいと思います。
  と、その前に、今申し上げた「武器輸出三原則」、これについては聞かれたことはあると思いますけれども、どんな原則であると認識されてますか。


パーソナリティー:

そうですね。その名のとおり、武器の輸出にあたっての三つの原則、規則があるということだと。文字どおりということなんですが。


中村局長:
  一般に「武器輸出三原則」と言いますと、とにかく日本は外国に武器を輸出してはいけない、と考えている人が多いように思いますけれども、厳密に言いますと、共産圏の諸国、国連決議で武器の輸出が禁止をされている国、それと紛争当事国ですとかそのおそれのある国、この3つのカテゴリーに当てはまる国には武器を輸出してはならないというものなんですね。昭和42年に当時の佐藤総理が国会で表明をしたんですけれども、当然のことながら、この3つのカテゴリーに当てはまらない国、すなわち、普通でありますとアメリカですとか、いわゆる西欧諸国などへの武器の輸出は禁じられてはいないということになります。一方で、昭和61年になって、三木内閣の時なんですけれども、この3つのカテゴリーに当てはまらない国への武器の輸出を「慎む」とした政府統一見解が示されています。今回の閣議決定では「武器輸出三原則等」という言葉が使われていますけれども、今申し上げた、三木内閣の時の見解は「武器輸出三原則」ではない「等」の方で、まとめますと、「武器輸出三原則」では共産圏ですとか戦争をしている国への武器輸出を禁止をして、「等」の方でその他の国への輸出を慎むとしてきたのです。
 このように、「武器輸出三原則等」によっても、すべての国への武器の輸出が禁止をされていたわけではないんですけれども、実質的には原則輸出を認めないということになっていたんです。そこで、「等」の方で「慎む」とされていた国に対する事案、アメリカなどですね、が発生するたびに、政府は、個別に判断して例外化を行ってきたんです。今回の「防衛装備移転三原則」は、こうした「武器輸出三原則等」の果たしてきた役割を評価をした上で、これに代わるものとして新たに決定をされました。ちなみに、この放送の2月に触れました「国家安全保障戦略」ですとか、「防衛計画の大綱」の中でも、防衛装備の海外移転に関する政府の方針について検討する旨が示されていました。


パーソナリティー:

そうなんですね。難しいなぁと思うのですが、原則は認めないということを前提に、個別に判断する方法でもいいように思うのですが、なぜ、今になって「武器輸出三原則等」を改める必要があったのでしょうか。


中村局長:
  確かにちょっと難しいと思いますけれども、今回改める理由として3つの点を申し上げたいと思います。一点目は、先ほど申し上げた、個別の事案に対する「例外化」というものが今や20件以上になっていて、何が例外に当たるかといったことなどについて、改めて整理をして明らかにする必要が認識をされていたということがあります。
  2点目ですけれども、これは実質的な理由になるんですけれども、まず、これまでの経験によって、防衛装備品の適切な海外移転によって、人道支援ですとかテロ対策へ貢献をできること、さらに、アメリカなどとの協力の強化が図られることが認識をされてきたんです。最初の点は、なんで装備品の移転が人道支援になるのかわかりにくいかもしれませんので、具体的な事例で説明をしますと、カリブ海にハイチという国があって、そこに自衛隊はPKOに参加していたんですけれども、そこに持って行ったブルドーザですとか重機を、撤収するときに現地に供与したんですね。それがハイチの復興に役立っているということ。また、ソマリア沖で海賊対処に当たっている自衛隊の部隊の装備も武器輸出の対象になっていたんですけれども、当然、こうした装備を用いた部隊の活動が民間船舶の安全な運航にも寄与しているということ、こういった例が挙げられます。

パーソナリティー:
  ブルドーザも「武器」として扱われていたんですね。
  そして、また、部隊が海外で使用する装備も「輸出」扱いだったのでしょうか。

中村局長:
 こうした事例はどちらも「武器輸出三原則等」の対象になって例外化をしていたわけですので、その意味ではおっしゃるとおりなんです。ちなみに、今回の原則では「武器」を「防衛装備」に変更してるんですけれども、その理由としては、ブルドーザですとか重機なども含まれ得ること、さらに「輸出」を「移転」に変えてますけれども、これは技術の移転も含まれ得るということからなんです。
 さて、「武器輸出三原則等」を改める必要性の三点目なんですけれども、装備品は常に高性能化をしなければならない一方で、最近では費用の高騰が問題になっているんです。これに対処するために、国際的な共同開発ですとか、共同生産が各国で主流になっている点を挙げたいと思います。こうした国際共同開発などにおいては、各国が資金と技術を出し合うことになって、様々な意味で「ギブ・アンド・テーク」の関係が構築をされて、装備品や技術を比較的安く手に入れられるだけではなくて、参加した国との関係を強化するという副次的な効果も期待できるのです。
  このように、「防衛装備移転三原則」は、これまでの経緯を踏まえた上で、時代の流れの中で、国際的に貢献して、さらに、我が国の防衛力の強化にも寄与するものとして策定されたのです。


パーソナリティー:

そうなんですね。「武器輸出三原則」をなくすことによって、武器の輸出に歯止めがきかなくなり、さらには日本は「死の商人」になってしまうのではないかという批判がありますよね。


中村局長:

そういうことを言う人もいるんですけれども、装備品の海外移転を、透明性をもってきちんと管理をしていかなければならないことは当然ですので、今回の原則では、まず、移転を禁止をする場合を明確化して、その上で、移転を認め得るケースを限定をして、さらに審査の要領ですとか情報公開についても定めているんです。
 まず、移転が禁止されるケースなんですけれども、
一つ目が、対人地雷ですとかクラスター弾など、日本が締結した条約などで禁止されている装備品の移転、二つ目として、国連決議によって武器の移転が禁止をされている国への移転、三つ目が、武力攻撃が発生して、平和の維持や回復のために国連安保理による措置の対象となっている国への移転ということになっているんです。

 これだけでは、ある種当然のことと思われるかもしれませんけれども、新しい原則は、さらに移転を認め得る場合が限定されていて、大きく言うと2つ、移転によっては、我が国としての平和貢献ですとか国際協力の推進に資する場合と、我が国自身の安全保障に資する場合ということになっています。前者の例としては、先ほど申し上げたハイチへの重機の供与などが挙げられると思います。また、我が国の安全保障に資する場合の例としては、例えば、アメリカとの国際共同開発ですとか、生産に伴うものが考えられます。当然のことながら、こういった例に合致した場合でも自動的に移転が行われるというわけではなくて、個別の案件に応じて、移転後の管理も含めた様々な観点から厳格な審査を行いますし、さらに、判断のプロセスについても明確化をして、情報公開も行うということにしています。こうした内容は、新しい原則と同時に決定をされた、「防衛装備移転三原則の運用指針」という文書に詳しく書かれています。

  また、新しい原則は、先ほど申し上げたとおり、我が国としての国際社会への貢献と、日本の安全保障の強化を狙ったというものなんですけれども、どんなものが輸出の対象になるのかが判断できることなどから、日本の装備品の輸入を考えている国ですとか、日本の防衛産業にとってもメリットがあり得るんだろうと思います。


パーソナリティー:
  はい。今日はありがとうございました。是非、きちんとした運用が行われ、国際社会から信用され、さらに、日本の防衛の強化にもつながっていけばいいと思います。今日は本当に有り難うございました。

中村局長:

 こちらこそ、有り難うございました。

TOPページへ