防衛省・東北防衛局がおくる日本の防衛Q&A
(5月放送内容)



 

テ−マ:グローバル・ホークの一時展開

 

 

パ−ソナリティ−:

 
  防衛省東北防衛局が送る、日本の防衛Q&A。このコーナーでは、防衛省・自衛隊や日本の防衛について、詳しく分かりやすくお話しをいただきます。本日も東北防衛局の中村吉利局長にお話をお伺いします。局長、本日もよろしくお願い致します。   

 では早速ですが、本日のお話はどういったものでしょうか。

 


中村局長:

 
  はい、今日は、米空軍グローバル・ホークの三沢飛行場への一時展開についてお話したいと思います。
 グローバル・ホークとは、非常に高い高度を長時間飛んで、画像ですとか様々な情報を収集する無人機のことです。普通の飛行機は、だいたい1万メートルくらいを飛行するのですが、グローバル・ホークは、その遙か上、1万5千メートル以上を飛んで、一度飛び立つと、28時間以上飛行できるそうなんです。情報収集などを任務として、攻撃能力は持っていないものなんです。
 グローバル・ホークというと、ご承知の方もいらっしゃると思いますけれども、東日本大震災の時、福島第1原発を遙か上空から撮影して、被害状況の把握にも一役買っていました。この他、イラクやアフガニスタンの作戦などにも使われてきました。
 日本の周辺では、グアム島のアンダーセンという基地を拠点に運用されていますけれども、ここの2機が、通常であれば毎年5月頃から10月頃まで、青森県の三沢飛行場にやってくることになりました。
 その理由ですけども、グアム島を拠点にしているグローバル・ホークの夏の間の活動は、台風などの影響で大きな制約を受けているため、この時期にも安定して運用できる三沢に一時展開させようというものなんです。
 今の日本周辺の安全保障環境を考えますと、タイムリーに必要な情報を入手することは大変重要ですが、グローバル・ホークがこの地域で十分に情報収集できないことは、日本にとっても深刻な問題になり得ると思います。このように、グローバル・ホークの三沢への一時展開は、日本の防衛にとっても重要な措置なんです。
 


パーソナリティー:

 
 アメリカが地域の情報の収集を途切れることなくできるようにして、それによって日本の安全のためにもなる一時展開ということなんですね。
ところで、無人の飛行機なので、当然パイロットは乗らずに、ラジコンのように無線で操縦するのだと思いますが、故障したり、電波の届かないところに行ってしまったりして、操縦できなくなることはないでしょうか。


中村局長:

 
  無人ですから、パイロットは乗り込まず、離着陸の時は三沢から、十分な高度になったらアメリカ本土の基地から、特別な訓練を受けて、無人機操縦の資格を得たパイロットがそれぞれ操縦します。
 アメリカからというとびっくりするかもしれませんが、操縦の方法には、無線通信と衛星通信とがあって、私が調べたところでは、こうした遠隔操縦の技術については、アメリカは宇宙開発も含め、様々なところに活用してきましたので、かなり高度で信頼性の高いものがあるようなんです。
 さらに、グローバル・ホークについて言えば、操縦不能にならないよう複数の手段が組み込まれていて、万が一、通信ができなくなった場合にも、計画通り飛行するか、出発した飛行場に戻るようなプログラムが入力されているとのことです。
 無人の飛行機というと、安全性を心配するのも理解できますけれども、様々なセーフティネットが用意されていて、ラジコンとは次元が違いますね。
 

パーソナリティー:
 
 事故は起きていないのですか?  


中村局長:

 

三沢飛行場にやってくる予定の形式では、重大な事故は起きていません。その前の旧式のものでは、大きな事故が6件起きていて、実際の運用が始まってからの事故はそのうちの1件だそうです。
 どんな飛行機でも、運用を開始する前の開発ですとか試験段階では事故が多く、問題をその都度改善をして実際の運用につなげていくものです。
 グローバル・ホークが実際に使われるようになってからの1件の事故は、部品がうまく取り付けられていなかったことによるものなので、当然、再発防止が図られているそうです。

 


パーソナリティー:

 

 無人で大丈夫かなぁと思いましたが、事故は起きても改良が加えられて、色々な安全策も設けられているのですね。

 

中村局長:
 

安全性の面で付け加えておくと、グローバル・ホークは、無人とは言いましても、航空管制の指示を受けるなど、普通の飛行機と同様に取り扱われて、民間航空機との間で問題が生じないよう、関係者と事前の調整も行われています。
 また、戦闘機だとパイロットの技量の維持向上のため、様々な訓練が必要なんですが、三沢に来るグローバル・ホークについては、現在のところ、飛行場周辺で訓練を行う計画はないということのようです。
 さらに、離陸後には、速やかに太平洋上の自衛隊訓練空域に向かい、そこで高度を上げますし、着陸時には同じ訓練空域内で高度を下げることになるため、飛行場周辺の上空を飛ぶ時間は、短くなると思われます。

 

パーソナリティー:
 

ところで、飛行機の場合、安全性の他に騒音の問題があると思うのですが、こちらはいかがなのですか

 

中村局長:
 

まず、グローバル・ホークの出す音っていうのは、今三沢飛行場で運用されているF-16戦闘機よりも、そもそもかなり小さいようです。アメリカのデータによると、例えば、機体から300メートル離れた場所での離陸時の騒音はF-16の107デシベルに対して、グローバル・ホークは76デシベル、走行中の地下鉄の電車内やバスの車内よりも小さい音なんだそうです。
 次は、運用に関してですが、先ほど申し上げたとおり、グローバル・ホークは、離陸後、太平洋上の自衛隊訓練空域にすぐに向かいますので、この点でも、騒音の影響は相対的に小さいと思います。
 さらに、運用は通常、週2回程度を予定していますし、訓練も実施しないので、離発着はそれほど頻繁ではないことも挙げておきたいと思います。
 このように、音の問題は相対的にそれほど大きくはないと思うのですが、それでも、航空機が増えるわけですから、すでに騒音に悩まされている三沢飛行場周辺の方々にとって、新たな負担になるわけなんです。
 また、必要な安全性は確保されているとはいっても、なじみのない航空機でもありますし、心配の種は尽きないわけで、いずれにしても、地域の方々の安心ですとか安全などのため、できるだけのことを行っていく必要があると考えています。
 その一環として、東北防衛局では、ホームページにグローバル・ホーク関連の情報を新たに掲示しました。内容を随時追加して充実していきたいと思っていますので、ご覧いただければと思います。

 

パーソナリティー:
 
  基地が近くにないところに住んでいると、ついつい騒音や安全性の問題を忘れてしまいがちなんですが、基地周辺にお住まいの方にとってはやはり深刻な問題ですよね。
 この点は、私たち、よく認識しないといけないですね。
 
 
中村局長:
 
  おっしゃるとおりだと思います。国の安全を守っていくために発生する様々なコストっていうのは、本来国民全体で負担すべきものですけども、日常的に発生する騒音ですとか振動などは、防衛施設の周辺に集中してしまいます。
 こうした問題について、周辺の自治体や住民の方々の、いわゆる基地負担を少しでも軽くするため、防衛省は、地域のご要望も聞きながら、例えば、防災施設の設置ですとか住宅の防音工事への助成など、様々な施策を行ってきたところですけども、必ずしもすべてのご要望に応えられているわけではありません。
 その意味で、地域の実情に応じて、様々な努力を引き続き行っていかなければならないと思っています。

 また、基地負担といいますと、どうしても沖縄のことを思い浮かべてしまいますけれども、今申し上げたように、東北地方においても、問題の大小はあるものの、同様の負担をお願いしている地域があることを明記すべきだろうと思います。さらに、沖縄の基地負担を軽
くするために、もともと沖縄で行われていた米軍の各種訓練の移転を受け入れてくれている自治体もありますので、このことについては来月またお話をしたいと思います。
 
 
パーソナリティー:
 
  はい分かりました。本日も中村吉利局長からお話をいただきました。本日は有り難うございました。  
 
中村局長:
 
 こちらこそ、有り難うございました。  

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