自 衛 隊 百 科
(4月放送内容)



テ−マ:中期防衛力整備計画



パ−ソナリティ−:

自衛隊百科のコーナーです。このコーナーでは、毎月1回、東北防衛局の中村吉利局長にお越しいただいて様々なお話をいただいております。局長、本日もよろしくお願い致します。


中村局長:

 はい、よろしくお願いします。


パ−ソナリティ−:

では早速ですが、本日の話題は?


中村局長:

  2月の放送で、新しく作られました「防衛計画の大綱」について、第6師団との関係を中心にお話しをさせていただきましたけれども、今日は、その「大綱」に示された防衛力を実現するための「中期防衛力整備計画」、これについて、おさらいをしながら説明をしたいと思います。
 まず、この計画の位置づけです。この計画、中期防には上位の文書が二つあって、一番上が「国家安全保障戦略」、次が「防衛計画の大綱」ということになります。今後10年間の安全保障環境を見通して作られた「国家安全保障戦略」には、外交と防衛を中心として、日本の平和と安全を守るためのいろいろな政策が示されているのですけれども、その中の防衛力の在り方を具体的に示すのが「防衛計画の大綱」ということなんです。こちらの「防衛計画の大綱」も今後10年間を前提としていて、その防衛力を整備するための5カ年の計画が、中期防というわけになります。さらに、各年度の予算は、この中期防に基づいて作成されていて、先頃成立をしました26年度の防衛関係費は、新しい中期防の初年度に当たるものなんです。このように、10年、10年、5年ときて、最後に単年度の予算ができてくるという流れになっているわけなんです。したがって、こうした文書の内容を把握してもらえれば、日本が如何に整合性のある、首尾一貫した、透明性の高い防衛政策を展開しているのかがご理解頂けると思います。
 その中での5カ年計画の中期防ですけれども、よく「買い物計画」と言われていることがあるんですけれども、しかし、こうした流れを把握してもらえれば、きちんとした考え方に裏打ちされた計画であることはおわかりいただけると思います。


パ−ソナリティ−:

今年も国防費を12.2%も増やした中国が、その内容を明らかにしていないために、周辺各国の懸念を増幅させていることとは全く対照的だなと感じました。軍事力に関する事項は、秘匿が伝統的に基本姿勢だったと思いますけれども、情報公開の世の中では、旧態依然たる考え方は、逆効果になっていると思います。その意味で、我が国の安全保障政策が、このように透明性を持って体系的に考えられていることというのは、とても正しいことなのではないかと思います。


中村局長:
  そうですね。公開されれば我が国の防衛に問題があるような、秘匿が必要なものはきっちり保全をして、その一方で、できるだけの情報公開を行っていくということが基本だと思います。
 では、中期防の内容に入っていきたいと思います。この文書の中で中心になりますのは、第V部の「自衛隊の能力等に関する主要事業」、中でも「各種事態における実効的な抑止及び対処」という項目なんです。ここで、どのような事態や場面を想定をしているかと言いますと、「周辺海域における安全確保」、「島嶼部に対する攻撃」、「弾道ミサイル攻撃」、「宇宙空間及びサイバー空間」、「大規模災害」、「情報機能」というふうになっているんです。
 なんとなく、いろいろと議論になっている項目が並んでいることはおわかりになっていただけるかと思うんですけれども、この中で、最もスペースを割いて記述しているのが、島嶼部、島への攻撃ということなんですね。ここでは、監視体制を強化するための新たな部隊の配備から、航空優勢と海上優勢を維持するための装備の導入、迅速な展開能力を向上させるための輸送能力の確保、さらには指揮統制・情報通信体制の強化など、幅広い施策が示されています。部隊の配備の面で目玉になりそうなのが、沖縄県与那国島の沿岸監視部隊の配置、さらには那覇基地の警戒航空部隊と戦闘機部隊の追加、そして水陸両用作戦専門の水陸機動団の新設ということだろうと思います。新たな装備の面では、新型の空中給油・輸送機、さらにはコンパクトかつ多機能な新型の護衛艦、固定翼と回転翼のいいとこ取りをしたようなティルト・ローター機の導入をあげておきたいと思います。また、ソフト面では、アメリカの海兵隊との連携の強化ですとか、各自衛隊間のデータリンクの機能を充実させるといったことなども計画をされています。
 さらに、周辺海域において安全を確保するということは、今申し上げた島嶼部への攻撃を抑止をするためにも必要なことなんですけれども、ここでも新たな早期警戒管制機と対空型の無人機、この対空型の無人機というのは非常に高い高度を飛んで長時間幅広い地域の情報収集が可能な無人機というものなんですけれども、これは陸海空共同で運用するということになっているんですけれども、こういった新規の装備品の導入も計画をされています。


パ−ソナリティ−:

 「防衛計画の大綱」の中では、「統合機動防衛力」というのがキーワードになっていると伺い、第6師団が機動化されるとお伺いしましたが、海空でもまさにこれを実現するための計画が作られているんですね。


中村局長:

 はい、そういうことなんですね。とは言っても、今回の中期防によって、「防衛計画の大綱」に示された防衛力が100%達成できるというわけではありませんけれども、ご指摘の「統合機動防衛力」実現に向けた重要な計画であるということは間違いありません。
 また、第6師団については、ご指摘のとおり、将来的に機動師団化されて、戦車に替わって機動戦闘車が導入をされるというように申し上げました。この機動戦闘車については、この5カ年の計画の中で、99両を購入をするということになっています。
 こうした装備の整備の規模というのは、中期防の最後に別表という形で示されています。主な装備についてご紹介をしておきますと、陸上自衛隊では水陸両用車52両、ティルト・ローター機17機、海上自衛隊ではイージス艦2席を含む護衛艦5隻、潜水艦も5隻、航空自衛隊ではF−35戦闘機28機、新型の早期警戒管制機4機、新型の空中給油・輸送機も3機、そして陸海空共同の対空型の無人機3機などとなっています。こうした装備を5年間かけて整備していくわけですけれども、そのための予算として、246,700億円が明示されています。ただし、防衛省は、調達の方法を工夫するなどして、この246,700億円のうち、7,000億円程度を節約しろというふうなことも決まっています。
 装備面を強調しすぎてしまいましたけれども、今回の中期防の中には、日米同盟強化のための施策や関係国との協力や交流の推進、さらには人事施策や知的基盤の強化といったことまで書かれていることを申し上げておきたいと思います。


パ−ソナリティ−:

 なるほど、包括的な計画になっているんですね。


中村局長:

 はい。それともう一つ、私が注目しているのは、「地域コミュニティーとの連携」について、かなりスペースを割いて記述をされていることなんです。以前の中期防でも、基地周辺対策を引き続き推進するなどといったことは記述をされていたんですけれども、非常に簡潔なものだったんですね。今回の中期防では、地域コミュニティーの連携について、積極的な広報に努めて地域の理解と協力に努めることとか、部隊の改編などに当たっては地域の特性に配慮すること、それには地元中小企業の受注機会の確保などにより地域経済に寄与するといったことなどが記述されています。実は、こういったような施策は、我々防衛局がよく地元から要望されてきたものでして、安全保障会議と閣議でこうして決定された文書の中に盛り込まれたということは、とりもなおさず、政府として防衛施設周辺の地域との連携を重視していこうということの現れと感じます。また、今申し上げた各種の施策は、我々防衛局が責任を持っているものなので、この計画が空手形にならないように、一層取り組んでいかなければいけないというように感じています。


パ−ソナリティ−:

 確かに、小さな町では自衛隊の存在が経済面で大きな要素になっていると聞いておりますから、部隊が減ることで地域経済に問題が生じるということは避けなければいけないなと思います。一方で、新たな部隊を配置する場合には、場合によっては反対論が示されるなど、いろんな意見もあるでしょうから、やはり地域との連携というのはすごく重要なんだなと思います。その意味で、防衛局の出番と重要性が増えてきそうな、そんな感じですね。
 今日はどうも有り難うございました。


中村局長:

 こちらこそ、有り難うございました。


パ−ソナリティ−:

 自衛隊百科のコーナーでした。インタビューアーは北本沙希がお送りしました。


TOPページへ