防衛省・東北防衛局がおくる日本の防衛Q&A
(4月放送内容)



テ−マ:自衛隊の国際的な活動


パ−ソナリティ−:

  防衛省東北防衛局が送る、日本の防衛Q&A。このコーナーでは、防衛省・自衛隊や日本の防衛について、詳しく分かりやすくお話いただきます。本日も東北防衛局の中村吉利局長からお話をお伺いしていきます。局長、本日もよろしくお願いします。 


中村局長:

  はい、よろしくお願いします。


パ−ソナリティ−:

  先月は、自衛隊の災害救援活動、特に、東日本大震災での活動の教訓や反省から、どのような改善を行っているのかをお伺い致しました。自衛隊は、昨年、フィリピンの台風被害にも派遣されていましたが、海外での活動にも、こうした経験が活かされているんでしょうね。


中村局長:

 台風ですけれども、フィリピンの被害っていうのは、本当に台風であのような状態になるんだろうか、というくらいの感じがしたものです。被災された方に対して、改めてお見舞い申し上げたいと思います。
  フィリピンのような海外での災害救援活動というのは、災害のあった国からの要請に基づいて実施をされるものでして、国際緊急援助活動と呼ばれています。必要であれば、自衛隊だけではなく、警察ですとか消防、海上保安庁なども派遣されることになります。自衛隊が実施する活動ですけれども、一般的な救助活動の他に、輸送、あとは医療ですとか、衛生事情が悪化した場合の防疫というのが主なものになります。こうした活動に際しても、国内での活動の経験を活かしていることは言うまでもありません。


パ−ソナリティ−:

  そのようにお伺いしますと、災害救援活動の海外バージョンみたいなものなんですね。

中村局長:

そうですね。基本的には国内での活動の応用編ということですけれども、海外での活動であるが故に、幾つかの特徴があります。たとえば、国内の災害救援活動のように日本全国の部隊が常に待機をしているというわけではなくて、たとえば陸上自衛隊ですと、5つある方面隊が持ち回りで待機をしているんですね。フィリピンのときには、東北方面隊の順番だったために、山形の部隊などが派遣をされたというわけなんです。その待機なんですけれども、衛生状況のよくない地域での活動もあり得るために、派遣要員は必要な予防接種を数多く事前に受けていることになっています。また、被害の状況が現場に行かないとよく分からない、何をやっていいのかということもよく分からないということも多いので、最初は状況を確認をしたり、活動基盤を確保するための要員を派遣して、その上で本格的な派遣を行うということが通常になっていますし、多くの国ですとか国際機関、さらにはNGOが様々な組織を派遣してきますので、活動内容の調整は現場で継続的に綿密に行わなければならないという特徴があります。しかし、文化ですとか物事の考え方、仕事の手順や優先順位の付け方といったことも各国、組織で違うので、単純に語学ができればいいというわけではありません。自衛隊も、国際的な活動に参加するようになって20年以上が経過していますので、当初に比べるとかなり慣れてきたと思いますけれども、やはり国際的な活動には、国内での同様の活動とは比べものにならないような苦労があるようです。


パ−ソナリティ−:

そのほか、自衛隊の国際的な活動というと、PKOが有名ですよね。


中村局長:

 PKO、国連の平和維持活動ですね。このPKOと国際緊急援助活動については、もともとの原因となっているのが、基本的にPKOは紛争によるもの、国際緊急援助活動は自然災害によるものという違いがあって、活動の根拠は別の法律になっているんです。この2つの法律は、今から22年前に一緒に施行されたんですけれども、当時は、国会で大変大きな議論になっていました。その後、自衛隊の部隊がPKOに本格的に参加をしたのは、1993年からのカンボディアでの活動でしたけれども、実は、私、第一次の派遣部隊と一緒に、現地に半年いたんですけれども、当時は、日本のマスコミが、300人と言われていますけれども、大挙して現地にやってきて、ちょっとした事件が連日日本のニュースのトップを飾るという状況だったんです。


パ−ソナリティ−:

それに較べると、最近の活動というのは、マスコミの話題に上ることが少ないように感じますね。


中村局長:

それだけ、PKOなども自衛隊にとって通常の業務であるという認識が深まってきたのだろうと思います。とは言いましても、遠く離れた異国の地で、重要な任務を行っているわけですから、国民の皆さんの理解がより深まっていってほしいと思います。
  国際緊急援助活動とPKOの他に、忘れてはならない国際的な活動は海賊対処の活動なんですね。
  この活動は、アフリカ大陸の東側でサイの角のようにつきだした地域とアラビア半島の南側とに囲まれたアデン湾とその周辺での海賊行為に対処するために、2008年以降、国連の決議に基づいて各国が部隊を派遣して、自衛隊はその翌年、2009年から護衛艦とP−3C対潜哨戒機を派遣しているんですね。
  このアデン湾周辺というのは、スエズ運河を経由してアジアとヨーロッパを結ぶ大変重要な海域なんですけれども、沿岸国のソマリアという国、ここで内戦が長く続いているために取り締まりができなくなって、海賊が横行して、日本を含む各国の商戦や客船が数多く被害に遭っているというものなんです。2009年から3年間は、年間200件以上の海賊事案が発生をしていたんですけれども、日本を含む各国の努力もあって、一昨年、2012年には、その3分の1くらいに減ってきているという状況になっています。


パ−ソナリティ−:
  PKOや国際緊急援助活動ももちろん重要なんですが、日本の船が海賊被害に遭うと国民生活に直結することになりますね。

中村局長:
 
 そうですね。資源や食料の多くを海上輸送に頼っているという我が国にとって、これは本当に重要な問題だと思います。その意味で、減ったとは言っても、海賊はまだ予断を許さない状況ですし、各国も活動を継続して、日本の船主協会からも活動の継続を求められていますので、まだまだ自衛隊の海空での活動は続きそうです。このうち、海上での活動というのは、船自体が活動の拠点になりますけれども、航空部隊はそういうわけにはいかないんです。そこで、海賊対処の航空部隊については、アデン湾の西側にジブチという国があるんですけれども、そこの国際空港に隣接して、自衛隊初の海外基地とも言われる活動拠点を設けているんです。
 この航空部隊の活動に関して、東北地方との関係で申し上げますと、重要な役割を果たしているのが、海上自衛隊八戸基地のP−3C部隊なんです。海上自衛隊にはP−3Cを運用する部隊が4つあって、それぞれ4ヶ月持ち回りで、航空機とその運用に必要な要員を現地に派遣をしています。八戸基地から、これまで4回にわたって派遣が行われているんですけれども、通常の業務についても従来と同様にこなさなければならないわけで、このように派遣が重なってくると、隊員の負担はかなり大きくなってきます。さらに、八戸の特殊事情として、通常の監視任務ですとか災害派遣に加えて、冬場のオホーツク海の周辺で船や漁業の安全を守るため、流氷の観測も行っているんです。したがって、この冬場に海賊対処活動への派遣が重なると、特に大変なことになるのですが、今派遣されている第15次隊は、八戸を今年の2月に出発しており、残された部隊で流氷観測を含むさまざまな業務をこなさなければならなくなっています。一方で、派遣された部隊も、冬の八戸から気温40度以上にもなる地域に行くわけですから、こちらの苦労も並大抵ではないわけですね。それでも、先ほど申し上げたとおり、海賊対処活動は日本にとって極めて重要なものですし、派遣された部隊も残された部隊も、士気旺盛に業務をこなしているということです。

パ−ソナリティ−:

活動が開始されてから5年も経つとマスコミに取り上げられる機会も減ってくる一方で、現場の人たちはとても大切な仕事を、以前と変わらずに黙々とこなさなければならないわけなんですね。私たちは、こうしたこともよく認識しなければいけないなと思いました。本日はどうも有り難うございました。 


中村局長:
 こちらこそ、どうも有り難うございました。

 
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