防衛省・東北防衛局がおくる日本の防衛Q&A
(2月放送内容)



テ−マ:国家安全保障戦略と大綱、中期


パ−ソナリティ−:

 早速ですが、今日はどういったお話をいただけますでしょうか?


中村局長:

昨年の12月に国家安全保障戦略、防衛計画の大綱、平成26年度からの中期防衛力整備計画という非常に国の防衛に係る重要な3つの文書が決定されましたので、この3つの文書について、お話しをしたいと思います。
 まず、国家安全保障戦略、長いので「戦略」と略しますけれども、国の安全保障に関する基本方針を示すものとして、初めて作られたんですね。内容的には、何故このような文書を作ったのかということを明らかにした上で、わが国の平和と安全の維持など
3つを安全保障上の目標とし、続いて、日本を取り巻く安全保障環境はどうなっているか、そこでの課題は何か、こうした課題に対処するためにどのようなアプローチで臨むべきかといったことについて述べています。このアプローチとしては、防衛ですとか外交面での努力はもとより、経済ですとか環境、各国との人的交流等も挙げられています。このように、「戦略」は、日本の安全保障政策に関して、非常に包括的な文書になっているので、一度通読されることをお奨めします。


パ−ソナリティ−:

 はい。わかりました。


中村局長:

また、安倍総理は、最近よく「国際協調主義に基づく積極的平和主義」という言葉を口にされていますけれども、これも、この「戦略」の中で、日本の安全保障上の基本理念として挙げられてるものなんですね。
 ところで、この「戦略」は、だいたい10年を念頭に置いたものなんですけれども、「戦略」に基づいて、同じく10年程度の期間における防衛力の在り方を示したものが防衛計画の大綱なんです。
 「大綱」というのは、昭和51年、1976年になりますけれども最初のものが作られて、その後、平成7年、16年、平成22年の4回にわたり作られているんですね、今回は5つ目ということになります。この策定の期間なんですけれども、お気づきだと思いますけれども、インターバルがだんだん短くなってきているんです。こんなところにも、日本を取り巻く安全保障環境が目まぐるしく変わってきていることが見て取れると思います。
 さて、3年振りに改訂された今回の「大綱」なんですけれども、自衛隊の体制について、「統合機動防衛力」という言葉をキーワードとして、大きな変更が加えられています。陸海空自衛隊の統合運用の重要性については何度かお話しをしてきと思いますが、これに迅速な展開を意味する「機動」という言葉が組み合わされています。ココロとしては、色々な活動を統合的かつ機動的に開始することによって、様々な事態に素早く対処することはもとより、必要な活動を継続的に、かつ状況が変化しても継ぎ目なく実施出来るようというふうにしていこうとするものなんです。


パ−ソナリティ−:

 東日本大震災の際には、全国から集まった統合部隊が活動していましたよね。

中村局長:

そのとおりです。実は、3年前の「大綱」これは震災の前に作られたものですけれども、「動的防衛力」という考え方があったのですけれども、「統合機動防衛力」は、統合運用の考え方をより徹底をして、装備ですとか人の面での質と量の確保も重視をするということにしています。このために、新しい装備品の導入ですとか情報通信機能、さらには人事施策といったような後方支援基盤の確保までも視野に入れたものになっています。
 では次に、この「統合機動防衛力」の考え方に基づいて、また、中国ですとか北朝鮮の動向など、日本周辺の安全保障環境を踏まえて、自衛隊をどのような体制にしようとしているのか、ご説明をしたいと思います。
 まず、陸上自衛隊ですけれども、全体的には、
3つの大きな改編があります。1つ目は、陸上自衛隊全体を束ねる陸上総隊を新設して、指揮命令系統をシンプルかつスムーズにすること、2つ目は14ある師団と旅団のうち半分に当たる7つを機動部隊にして、事態が発生した場合には全国各地に素早く展開できるようにすること、3つ目は戦車と火砲を集約、削減をするということなんです。


パ−ソナリティ−:

東北地方には陸上自衛隊の部隊がたくさんありますが、どうなっていくんでしょうか。


中村局長:

東北方面総監部の下に、第6と第9の2つの師団の体制というものが基本的に維持をされます。ただし、第6師団については、機動部隊に改編される予定ですので、役割が若干変わってくるということになります。また、個別の部隊について見た場合には、戦車については現在の700両を全体300両に削減した上で、北海道と九州に集約をしますので、基本的に東北地方から戦車部隊はなくなってしまうと言うことになります。また、火砲が削減されるという影響もあると思います。


パ−ソナリティ−:

戦車がなくなってしまうのは、なんだか寂しい感じがしますね。


中村局長:

そうかもしれませんね。その代わりと言っては何なんですが、イメージとしては戦車のキャタピラの部分を大きな8つの車輪になった機動戦闘車が全体で300両導入されますので、近い将来、東北地方でも、この機動戦闘車を見ることができると思います。
 以上陸上自衛隊ですが、次に海上自衛隊です。海上自衛隊については、機雷の掃海などもできる新たな多機能型の護衛艦を導入して、トータルの護衛艦の隻数を現在の47隻から54隻に増やすことにしています。このうち、現在はイージス艦6隻を持っていますが、これを8隻に増やして、弾道ミサイル防衛能力を高めるという計画もあります。また、潜水艦も、現在の16隻から22隻に増やして、周辺の海域の防衛ですとか海上交通の安全確保を図っていくということにしています。
 航空自衛隊ですけれども、戦闘機を現在の約260機、これから約280機にして沖縄の那覇基地に戦闘機部隊を1個増やすほか、周辺空域の情報収集ですとか警戒監視を行う警戒飛行隊を1個新たに作って、これも那覇基地に置くことにしています。さらに、空中給油・輸送部隊も1個飛行隊増やして、戦闘機と支援機能が一体となって、持続的に作戦を行える体制を構築しようとしています。また、弾道ミサイル防衛用の地対空誘導弾PAC-3といわれているものですけれども、これの能力向上といったことも考えています。


パ−ソナリティ−:

はい。日本の南西方面では特に最近色々な問題が起こっておりますし、自衛隊の皆さんには、必要な組織、そして装備で、きっちりと領土領海領空、私の生活を守っていただきたいと思います。


中村局長:

はい。そういう防衛力を作っていくための5年間の計画が、中期防衛力整備計画になります。中期計画というのはこれまで何度か作られてきたのですけれども、最近は、予算規模の削減が続いていました。ところが、今回の計画は、5年間の経費総額246700億円、前の計画に比較して毎年平均1.8%の予算の伸びが認められています。26年度予算はこの5カ年計画に基づいて既に政府の案が出来上がっていますけれども、今後も、この計画に基づいて、各年度の予算が作られていくということになります。
 以上、ご説明してきたように、基本的な国家安全保障戦略、その中での防衛力の在り方を示した防衛計画の大綱、その防衛力を整備するための5カ年計画、そして計画を実現するための各年度予算、と基本的な流れができたわけでして、これらの内容を把握してもらえれば、日本が如何に整合性のある、首尾一貫した、透明性の高い防衛政策を展開しているのかということがご理解頂けると思います。


 パ−ソナリティ−:
 はい。わかりました。これから私も勉強していきたいと思います。本日は、どうも有り難うございました。 
 
 中村局長:
 こちらこそ、どうも有り難うございました。 
 
  

  
  
 
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