自衛隊インビテ−ション
(1月放送内容)



テ−マ:自衛隊の災害救援活動



パ−ソナリティ−:

 早速ですが、今日はどんなお話をお伺いできるのでしょうか


中村局長:

 これまで、自衛隊に関しまして組織から、「ヒト・モノ・おカネ」このうち、「ヒト・モノ」についてお話しをしてきましたけれども、最近、伊豆大島への災害派遣ですとかフィリピンへの緊急援助隊派遣と、国内外の災害で東北地方の部隊が活躍する場面が続いていますので、今日は、こうした自衛隊の災害に対する活動についてお話ししたいと思います。自衛隊の活動といえば、当然のことながら、日本の防衛が主任務になるわけで、こちらを忘れてはいけないのですけれども、今日はせっかくの機会ですので災害時の活動についてお話ししたいと思います。


パ−ソナリティ−:

 そうですね。国内外を問わず、自衛隊の災害での活動はもうごく普通のことになっていますが、いろいろと大変な面もあるのかと思います。今日はその辺りも含め、お話し頂ければと思います。

中村局長:
 まず、国内での災害救援活動のほうですけれども、以前にも申し上げたとおり、自衛隊の部隊には基本的に担当エリアがありまして、伊豆大島を例に取れば、担当しているのは東京都練馬区に所在をする東部方面隊の第1師団になります。今回の活動では、第1師団の部隊に加え、福島市に所在する部隊も派遣されました。実は、災害に際しまして、救援活動の主力になるのはもちろんその地域を担当する部隊なんですけれども、様々な事情で他の地域から応援を求めることはよくあります。その最も大規模な例が、東日本大震災に際しての災害派遣ということですね。

パ−ソナリティ−:
 そうですか、その災害派遣の応援の部隊というのは、どのようにして決められているのでしょうか?さらに考えると、派遣する部隊を決めるためには、活動の内容が決まっていなければならないと思うのですが、どなたが決めていらっしゃるのでしょうか。

中村局長:
 それでは、災害派遣の仕組みのほうからご説明したいと思います。そもそも自衛隊の災害派遣は、急を要する場合には防衛大臣の判断で自主的に開始することもできるのですけど、これは例外であって、基本的に都道府県知事からの要請に基づくことになっています。ご参考までに、市町村長に派遣要請する権限というのは法律上はないんですね。市町村長にも災害派遣ができるとしますと、複数の市町村にまたがる災害では、混乱してしまう可能性があるというわけなんです。ただ、市町村長は、被災した地域の状況を最もよく把握出来る立場にありますので、被害状況を都道府県知事に伝えて、自衛隊の派遣を要請して下さいとお願いすることができます。
 さて、都道府県知事による要請のほうですけども、原則として文書で、災害の状況、派遣を要請する理由、派遣を希望する期間、区域、活動内容といったものを明らかにすることになっています。今、原則として文書、というように申し上げましたけれども、災害の場合は急を要することも多いので、文書は後回しにして、電話で要請することもできます。
 ご質問に戻りまして、自衛隊の活動内容は、今ご説明しましたとおり、この都道府県知事からの要請で基本的に決まってきます。派遣される部隊は、要請された活動の内容ですとか災害の規模、派遣の期間といったものを踏まえて、部隊の事情だけではなくて、国全体の防衛という観点も勘案して、かつ現場で効率的効果的な活動ができるような形で検討されます。

パ−ソナリティ−:
 なるほど、そうなんですね。基本的には知事からの要請という手続で初めて出動できるということですが、それにしても、ずいぶんと早く部隊が活動を始めているように思います。どうして、こんなに早い活動の開始ができるのでしょうか。


中村局長:

 自治体の方でも、色々と準備をしていることもあるんですけれども、自衛隊の側について申し上げれば、私の考え方では3点に集約されると思います。
 まず申し上げたいのは、隊員の一人一人が、日本の国土国民を守るんだという強い気持ちを常に持ち続けていることだと思います。次に申し上げる訓練ですとか待機を実施していても、それを支える隊員の意識が低くては、効果的な活動はできないと思います。
 その訓練なんですけれども、自衛隊は、本当に多くの種類の訓練を、様々な事態を想定をして実施しています。自治体と共同での訓練ですとか、最近では複数の県との共同訓練も行われています。こうした訓練の都度、教訓反省事項をまとめ、改善することでノウハウを蓄積しているのです。東北地方は、東日本大震災の以前からこういった訓練が活発に行われていて、大震災で自衛隊が活動できたのも、こうした基盤があったからだというように言われています。
 次に、自衛隊全体として365日、24時間、災害の発生に備えた待機をしていることです。まず、震度5弱以上の地震が発生した場合には、すぐに近くの部隊が航空機を飛ばして情報収集を開始します。また、陸上自衛隊では、全国158カ所の駐屯地などで初動待機態勢を維持していて、待機部隊は、命令から1時間後に出動できるようにしています。海空自衛隊のほうも、船や航空機が待機をしています。「待機」と簡単に言ってしまいますけれども、土日ですとか夜も気が抜けないわけで、私もやったことがありますけど、本当に大変なことなんですね。


パ−ソナリティ−:

 そうでしょうね、本当に大変そうなんですが。素晴らしい命令指示系統が。本当に感動しますね。

中村局長:
 次に、海外での災害救援活動なんですけれども。これは別の法律がありまして国際緊急援助活動と呼ばれています。こちらも基本的に災害のあった国からの要請に基づいて実施されて、自衛隊だけではなくて、警察ですとか消防、海上保安庁なども派遣されることもあります。自衛隊が実施する活動は、一般的な救助活動の他に、輸送、後は医療ですとか、衛生事情が悪化した場合の防疫が主なものになります。
 基本的には、国内での活動の応用編というものなんですけれども、海外の活動であるが故に、言葉や文化といった問題は元より、他にも幾つか難しい点があります。

 まずは派遣される部隊ですけれども、日本全国の部隊が緊急援助活動に常に備えているわけではありません。陸上自衛隊ですと、5つある方面隊が持ち回りで待機していて、フィリピンの時には、東北方面隊の順番だったために、ここから部隊が派遣されたんですね。その待機ですけれども、外国、それも風土病ですとか衛生状況のよくない地域もあり得るため、派遣隊員は必要な予防接種を事前に受けているんです。何種類も、それも中には複数回注射しないと効果の無いものもありますし、副作用の可能性もあって、けっこう身体に負担がかかります。
 次に、被害の状況が現場に行かないと分からないことも多くて、最初は活動内容の確認と基盤の確保のための要員を派遣して、その上で本格的な派遣を行うことが通常のようです。この点、派遣可能で必要な部隊を直ちに動かすことが求められる国内での災害派遣とはちょっと違うということかと思います。
 もう一つが、多くの国が部隊などを派遣してくるために、活動内容の調整を継続的かつ綿密に行わなければならないという点です。国内でも各組織間での調整というのは必要なんですけれども、先程申し上げた共同訓練ですとか事前の調整などで顔見知りになっているケースも多い一方、海外での活動では、初めて見る組織、文化も違いますし、何ができて、どういう動きをするのかも分からないため、日々かなりきっちりした調整しないと効果的な活動ができないんですね。
 こう言ったように、さまざまな苦労やら工夫、ノウハウを積み重ねて、自衛隊は国際緊急援助活動を実施しているということなんです。


パ−ソナリティ−:

 はい。そういった様々なご苦労があってこそ、国内での災害救援活動はもとより、海外での活動でも成果を上げることができているのですね。今日は有り難うございました。

中村局長:
 こちらこそ、有り難うございました。


 

 


 
 

 
 

 
 
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