自 衛 隊 百 科
(12月放送内容)



テ−マ:自衛隊の災害派遣



パ−ソナリティ−:

以前この番組でお送りしました、小川第6師団長と中村局長との対談の中で、第6師団の部隊が伊豆大島の災害に派遣されているというお話がありました。その時、ふと疑問に思ったんですが、伊豆大島からずいぶん離れている山形県の部隊が、どうしてわざわざ派遣されたのだろうと言ったところだったんですが、今日はこの点についてからお伺いしてよろしいでしょうか。


中村局長:

 はい。なかなかいい疑問だと思いますが、実は以前、自衛隊の組織についてお話をしたとき、自衛隊の部隊には、それぞれ担当エリアがあるというように申し上げました。ちょっとお答えを申し上げる前に、この第6師団の担当エリアって、覚えていますか?


パ−ソナリティ−:

えー、南東北の3県という記憶があるんですが。


中村局長:

素晴らしいですね。


パ−ソナリティ−:

あってますか?


中村局長:
 はい。あってます。それでは、伊豆大島、これは東京都の一部になりますよね、ここを担当しているのは陸上自衛隊では東部方面隊の第1師団、東京都の練馬区に所在しているんですが、何故、今回は南東北を担当する第6師団、その中でも福島市所在する部隊がここに派遣されたのかという点です。実は、災害派遣に際して、もちろん主力になるのはその地域を担当する部隊ですけれども、様々な事情で他の地域から応援を求めるというのはよくあることなんです。最も大規模な例は、東日本大震災に際しての災害派遣ですね。今回、福島市から派遣された部隊も増援部隊という形で、救援活動が一段落した際に、現場を離れています。


パ−ソナリティ−:

 はい。そういった部隊って、どのようにして決められているんでしょうか?さらに考えると、派遣する部隊を決めるに当たっては、どこで何をするという活動の内容が決まっていなければならないと思うのですが、これも誰が決めているのでしょうか


中村局長:

 はい。そのご質問に答える前提として、ちょっと災害派遣の仕組みについてご説明したいと思います。そもそも自衛隊の災害派遣というのは、急を要する場合には防衛大臣などの判断で例外的に開始するということもできるんですけれども、基本的には自治体からの要請に基づくことになっています。それでは、ちょっとここで一つ質問したいんですけれども、地方自治体で派遣を要請できるのは次のうち誰でしょうか。1都道府県知事、2市町村長、3その両方、4被災した人であれば誰でも、この四択です。


パ−ソナリティ−:

 えーと、じゃ1番の都道府県知事だと思います。


中村局長:

 はい。北本さん今日は冴えてますね。


パ−ソナリティ−:

 はい。当たりましたね。


中村局長:

 そうです。それはですね、知事っていうのは区域内の状況を全般的に把握することができて、消防ですとか警察といった自治体の能力も考慮した上で派遣の要請ができるためなんです。一方、被災した個人はもとより、市町村長にも災害派遣要請ができることにしますと、複数の市町村にまたがる災害では、混乱してしまうという可能性があるため、派遣要請するという権限はないんですね。ただ、市町村長というのは、被災した地域の状況を最もよく把握出来る立場にあるので、被害状況を迅速に都道府県知事に伝えて、「自衛隊の派遣を要請して下さい」と知事に求めることができるようになっているんです。さらに、これもできない時には、直接防衛大臣などに状況を通知するということもできるんです。 さて、都道府県知事による要請なんですけれども、原則として文書で、災害の状況ですとか派遣を要請する理由、派遣を希望する期間、区域、活動内容などを明らかにすることになっています。今、原則として文書で、と申し上げましたけれども、災害は急を要することも多いので、文書は後回しにして、電話で派遣を要請することもできます。
 ここで、ご質問に戻って、自衛隊の活動内容というのは、今ご説明したとおり、この都道府県知事からの要請で基本的に決まってきます。派遣される部隊というのは、要請された活動の内容ですとか災害の規模、派遣の期間といったものを踏まえて、部隊の事情だけではなくて、国全体の防衛という観点も勘案して、かつ現場において効率的で効果的な活動ができるような形で検討されるんです。その際、地域を担当する部隊が主力になることは先程申し上げたとおりです。
 なお、活動内容について簡単にメニュー的なところをご紹介しておきますと、地震、津波、豪雨による水害、それと山形の人は豪雪に対する活動もよくご存じだと思います。その他にも、登山や山菜採りで遭難した方の捜索ですとか、離島における急病患者の空輸、山林火災の消火といったもののほか、昔は口蹄疫や鳥インフルエンザに対する活動も行ったこともあります。


パ−ソナリティ−:

 地震、津波、水害とか、そういった災害のイメージが強かったんですが、本当に幅広く活動をされるんですね。基本的には知事からの要請という手続で初めて出動できるということですが、それにしては、ずいぶんと早く部隊が活動を始めているように感じます。この前の山形の水害でも、自衛隊の方、災害派遣と言うことで助けに来て下さいましたが、どうして、こんなに早い活動の開始ができるのでしょうか。


中村局長:

はい。それは、私の考えでは3点に集約されるんだろうと思います。
 まず一点目は、様々な事態を想定をして、あらかじめ数多くの訓練を実施していることが挙げられると思います。自治体と共同での訓練も頻繁に行われていますけれども、最近では、広域の災害に対処するために、複数の県との共同訓練も行われています。こうした訓練を通じて、その都度教訓反省事項をまとめて、色々と改善することでノウハウを蓄積しているんですね。東北地方は、特に東日本大震災の以前からそういった訓練が活発に行われていまして、大震災で自衛隊が活動できたのも、こうした基盤があったからだと言われています。

 次に、自衛隊全体として
24時間365日、待機態勢を敷いていることです。まず、3自衛隊共通で、震度5弱以上の地震、これが発生した場合には、すぐに近くの部隊が航空機を飛ばして情報収集を開始することになっています。また、陸上自衛隊では、全国158カ所の駐屯地などで初動待機態勢を維持していて、待機部隊は、命令が発せられてから1時間後に出動できるようにしているんですね。海空自衛隊においても、船ですとか、救難機、輸送機といったものが待機しています。「待機」「待機」と簡単に言ってしまいますけれども、土日も夜間も気が抜けないんで、これなかなか本当に大変なんですね。
 三点目は、やはりそう言った隊員一人一人が、日本の国土国民を守るんだという強い気持ちを常に持ち続けていることだと思います。いくら制度を作って訓練を実施しても、日常的な待機態勢を敷いていても、それを支える隊員の意識が低くては、仏作って魂入れずではないですけども、効果的な活動はできないということだと思います。


パ−ソナリティ−:
 はい。この自衛隊百科にも様々な部隊の方、ご出演いただきますが、まさに本当に皆さん意識高く、「守るために頑張っています」というお話を伺いすることも多いので、やっぱりこういったことに尽きるんだなと思いました。今日は有り難うございました。

中村局長:

はい。有り難うございました。


 


TOPページへ