自衛隊インビテ−ション
(12月放送内容)



テ−マ:自衛隊とはB 自衛隊のモノ



パ−ソナリティ−:

 局長にはこれまで、自衛隊の組織とヒトについてお話ししていただきました。今日は、「ヒト・モノ・おカネ」シリーズのうちのモノについてお話を伺いたいと思います。


中村局長:

 はい。自衛隊のモノというと、装備品ですね。と、本題に入る前に1つ質問したいと思います。他の国の軍隊は持てても、自衛隊は、持つことが許されていない装備品があることをご存じですか。


パ−ソナリティ−:

 詳しくは存じ上げないですが、非人道的兵器とか、地雷とかでしょうか。

中村局長:
 昔から言われているような非人道的兵器というのは、一般的に国際法で禁止をされているんですね、地雷について申し上げますと、地雷を禁止するという条約ができてますので、それに加盟する国は、持てないと言うことになっています。日本も加盟国になっているので、今や自衛隊は地雷を持つことはできないということなんですね。元の質問に戻りますと、これまでの国会での議論などから、もっぱらほかの国の壊滅的な破壊のために用いられる兵器、たとえば、大陸間弾道ミサイル、ICBMのことですね、それと長距離戦略爆撃機ですとか攻撃型空母の保有というのは、憲法上許されないと考えられてきています。これは、日本が保有できる実力と言うのは、自衛のための必要最小限度のものでなければならないとされていて、今挙げた兵器は、こうした限度を超えていると考えられているためです。
 では、本題に戻りたいと思います。装備品と簡単に言いましても、それこそ無数にありますので、今日は、陸海空自衛隊で、最近話題になった装備品、それぞれ1つについてお話ししていきたいと思います。キーワードは、「メイド・イン・ジャパン」、国産です。国産にはいくつかのメリットがあるんですけれども、やはりいざという時の修理ですとか部品の提供、さらには追加的な生産がやりやすいことが大きいと思います。それと、日本人の体型に合ったものを開発できること、また、装備品用に開発した技術を、いわゆる民生品にも転用できることも上げておかなければなりません。
 それでは、まず、陸上自衛隊です。陸といえば、やっぱり戦車です。陸上自衛隊は、現在、74式、90式、10式の3種類の戦車を保有しているのですが、この○○式の意味て、分かります?

パ−ソナリティ−:
 そうですね。普通に考えますと電化製品などは、年式が型番となっていることが多いと思います。

中村局長:
 いい線ですね。実は、ほとんど正解です。これは、他の装備品も同じなんですけども、その装備品が制式化された年、「制式化」の「制」は制度の制なんですけれども、簡単に言いますと、開発から試作品を経て、そのものが自衛隊の装備品リストに載った年を示しているんです。したがって、今の戦車は、それぞれ1974年、1990年、10式は200912月にそれぞれ制式化されています。74式戦車の前は、61式だったので、この4代、61749010を並べてみると、間が13年、16年、20年とだんだん長くなってきております。これは、ある型式の戦車がより長く使われるようになってきている、ということですね。
 こうした戦車なんですけれども、これまでの防衛計画の大綱では
400両を保有することになっていますけれども、昭和51年、1976年に作られた最初の大綱の時には1200両を保有していたので、比較すると数は3分の1になっているということなんです。

 
さて、今後を担う最新鋭の10式戦車なんですけれども、それだけに優れものになっているというわけです。特筆すべきは、最新のC4I、これは指揮・統制・通信・コンピューター・情報システムこの頭文字を取ったものなんですけれども、ここに非常に優れた能力を備えています。どんなことができるかと言いますと、車内のモニターで、味方戦車の故障の状況ですとか残っている燃料までもリアルタイムで把握できます。また、複数の目標を自動的に追尾したり、敵の最も弱い部分に照準を合わせたりすることもできるようです。さらに、富士総合火力演習でも披露されたスラローム、蛇行走行をしながら射撃を安定してできる機能なんですけれども、これは世界中で10式だけができることと言われています。

パ−ソナリティ−:
 凄いですね。先日、1027日の朝霞の観閲式では、すばらしい戦車を拝見して参りました。海外からの部品、そして日本で組み立てると言うことだと思うんですが。


中村局長:

 実は、この10式というのは、ほぼ「純国産」になっているんです。例えば、最も重要な部品の一つである主砲、これは90式の場合はドイツ製だったんですけれども、10式は国産になってます。また、10式で開発された技術というのは、ハイブリッド車のエンジンですとか月面周回衛星「かぐや」に転用されているということなんです。
 次、海上自衛隊にいきたいと思います。海上自衛隊というと、どうしても船になってしまうんですが、今年、初の国産哨戒機P−1が配備されたので、そちらをご紹介したいと思います。
 海上自衛隊は、アメリカ生まれのP−3C哨戒機を長らく使用してきているんですけど、P−1はその後継となる飛行機なんです。2001年以降、防衛省の技術研究本部とメーカーが開発を進めてきていて、この3月に神奈川県の厚木基地に配備されています。
 P−1の開発は、航空自衛隊の実は新しい輸送機と同時に行われていて、この2つの飛行機に共用部分を持たせるようになっています。当然のことながら、全く別個に開発するよりも、開発費用がかなり削減されていますね。P−1は今後、乗員の訓練と運用試験を行って、2年後には日本周辺の海の警戒・監視任務に就く予定なんです。


パ−ソナリティ−:

 日本の周辺海域では、特に南西諸島を中心にいろいろな事件が起きていますし、海の監視活動はますます重要になってきますよね。

中村局長:
 はい。おっしゃるとおりですね。現有のP−3Cも未だ優れた哨戒機であるのは間違いないんですけれども、それと比較しても、P−1は、敵の潜水艦などの探知識別能力が格段に向上していますし、飛行性能ですとか通信能力もアップしています。また、省エネ、低騒音という面でも時代に合った飛行機といえるかと思います。


パ−ソナリティ−:

 素晴らしいですね。この優れた飛行機、国産なんですね

中村局長:
 はい。そうなんです。最後、航空自衛隊にいきたいと思います。また飛行機になってしまうんですけれども、今年の予算ではF35戦闘機2機分の予算が認められています。昨年度予算にも4機分が盛り込まれていたんですけれども、こちらは完成した機体を輸入するということを前提にしています。これに対し、25年度予算の2機については、国内企業も製造に参加した機体を取得をする予定になっています。F35は、全体で42機を取得する予定なんですけれども、残りの分も、国内企業が参画した機体になる予定です
 ご承知のとおり、F35というのは、第5世代と言われている、レーダーに映りにくいステルス性能を持っていることと様々な情報収集能力を有する飛行機なんですけれども、これまでは、アメリカを中心とする9カ国による共同開発でした。このような国際共同開発は最近のはやりなんですけれども、背景には、資金面や技術面で、一国だけでハイテクの固まりのような戦闘機を一から開発することはなかなか難しいという事情があるようです。
 ここに日本の企業が参加すると、国内で機体の最終組み立てですとか検査を行うほか、一部の部品製造なども行います。といっても、やはり国産のものと比べると、いざという時に部品は提供されるのだろうかですとか、修理はしてもらえるのだろうか、という不安はありますよね。でも、F35については、アメリカが一元的に管理をして、全てのユーザーの間で部品を融通しあうという仕組みがあるんです。これによって、部品などがプールされていて、必要な時には速やかにここから補給・修理を受けることができるようになっていて、同時に、コストの削減にもなっているところです。

パ−ソナリティ−:
 いろいろな工夫が行われているんですね。今日は、たくさんある自衛隊の装備品、そのうち3つをお話ししていただきました。それぞれ、さまざまな背景があることが分かりました。本当にありがとうございました。

中村局長: 

ありがとうございました。


 
 

 
 

 
 
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