自 衛 隊 百 科
(7月放送内容)



テ−マ:自衛隊とはB 自衛隊のカネ



パ−ソナリティ−:

自衛隊百科のコーナーです。このコーナーでは、毎月1回、東北防衛局の中村吉利局長にお越しいただいて、さまざまなお話をいただいています。局長、本日も、よろしくお願いいたします。


中村局長:

 はい。よろしくお願いします。


パ−ソナリティ−:

今日は、自衛隊のヒト・モノ・カネシリーズの最後になります、自衛隊のカネについてうかがいたいと思います。よろしくお願いします。


中村局長:

はい。カネ、防衛関係の予算のことなんですけれども、今年の予算は約4兆6800億円になります。これを、前の年度と比べますと、約350億円の増額になってまして、平成14年度以来、久しぶりの増額になっているというわけなんです。


パ−ソナリティ−:

はい。私のお給料も、なかなかこう増えないんですけれども、4兆6800億円って、私のお給料300万年分に相当するんですけれども、でも、最近は北朝鮮の問題などから、防衛関係にはもっと力を入れていかなければならないという意見はあると思うんですが、それにしても、この10年以上ずっと防衛関係の予算は減らされてきていたんですか?


中村局長:
 はい。そうなんですね。その結果として、平成14年度と24年度を比較してみますと、3000億円近くの減額になっています。他の国もこの間に国防費を減らしているかというと、そうではないんです。平成14年度と23年度とで比較しますと、中国は3倍以上、アメリカも約2倍、ロシアに至っては5倍以上になっていますし、お隣の韓国も増額してきているんです。


パ−ソナリティ−:

 日本が減らしているなかで、まわりの国には国防費を3倍にも4倍にもしているところがあるんですが、それって、日本の防衛は大丈夫なんでしょうか。


中村局長:

 国防費を3倍5倍にしたからといって、すぐに軍事力は3倍5倍になるっていうものではありませんし、直ちに防衛に問題が生じるっていうものでもありませんけれども、やっぱり、防衛っていうのは相対的な問題なので、周辺の国がこういうふうに予算を増額してきているっていうのは無視できないことなんですね。そういう意味で、久しぶりの増額となった今年の予算は、すごく意味があるんだろうと思います。ちなみに、ヒトを増やすにも予算の裏付けが必要なんですけれども、日本の南西地域における情報収集ですとか、安全確保のためとして、今年の予算では自衛官の増員287名が盛り込まれているんです。自衛官の増員というのも、また、久しぶりのことなんですね。


パ−ソナリティ−:

 そうなんですね。防衛費に関しては、GNP1パーセント枠というのを聞いたことがあるんですが、そのせいなんでしょうか?


中村局長:

 はい。いわゆるGNP1パーセント枠っていうのは、今から40年近く前の昭和51年、西暦でいうと1976年ですけれども、当時の三木内閣で閣議決定されたものなんです。その10年後、中曽根内閣のときなんですけれども、昭和61年、1986年年末に、次の予算の閣議決定をした際に、GNP1パーセント枠は適用しないということを決めているんです。といいましても、1パーセントを超えていたのは昭和62年、63年と平成元年の予算、この3年間だけでしたので、その後はずっと1パーセント以下になっているというわけなんです。やっぱり、国の財政状況というのは厳しいところがあります。ちなみに、他の国はどうなっているかっていいますと、正確な比較は難しいんですけれども、2010年度で、国防費の対GNP比は、中国は2.2パーセント、アメリカは4.6パーセント、ロシアは5.3パーセントで、ヨーロッパの主要国、イギリス、フランス、ドイツといった国もすべて1パーセントを超えているんです。それでは、次に、日本の防衛費の内訳をみていきたいと思います。今年度の総額は、先ほど申し上げた通り、約4兆6800億円なんですけれども、防衛費はよく3つのカテゴリーに分類されるんです。すごく簡単に言ってしまいますと、まず人件費、次が装備品のつけ払い、それと、その年度の活動のための経費という、3つの分類なんです。このうち、人件費がもっとも多くて、国が負担している部隊のヒトの食費とあわせて、人件糧食費っていうんですけれども、これが全体の40パーセント以上を占めているんです。


パ−ソナリティ−:

 やはり、20何万人の組織だと、人件費というのも大変なんですね。それよりもびっくりしたのが、自衛隊にはつけ払いがあるんですか?


中村局長:

 そうなんですね。自衛隊の装備品ですとか、施設、建物ですね。といったものの整備では、契約やら完成に複数年、長いもので5年かかるんです。そこで、国会の議決を経まして、最初の契約のときにこの年の支払いはいくら、次の年はいくらといったように、先払いで約束をするんです。この点、後払いになっている、例えば、家のローンですとか、家電の分割払いといったものとは、お金の支払いとモノを手にするという順序が逆になっているんですね。このつけ払い、難しい言葉では歳出化経費というんですけれども、防衛費全体の35パーセント程度を占めているんです。人件糧食費は40パーセント以上と申し上げましたけれども、これと合わせると、全体の80パーセント近くになるんですね。この2つの経費っていうのは、前もって支払いが義務づけられている経費なんです。このため、その年度の活動経費とされるものは、差し引き、残りの20パーセント程度になってしまうというわけなんですね。実は、この20パーセントのなかにも、アメリカ軍のための経費ですとか、基地周辺対策の経費、例えば、飛行場近くの住宅の防音の経費といったような、支出が義務的なものも含まれているので、本当の意味の活動経費というのは、もっともっと限定されてしまうんです。


パ−ソナリティ−:

 なるほど。お給料をこうもらって、新しいお洋服や、アクセサリー、車を買いたいとか、海外旅行に行きたいとか、美味しいものをおなかいっぱい食べたいと思っていても、クレジットカードの支払いやローンでお金がないっていうのはつらいですよね。


中村局長:

はい。よく分かるんですけれども、防衛関係費と北本さんのお財布を一緒にしないでくださいね。


パ−ソナリティ−:
 はい。

中村局長:

防衛費は、やっぱり、義務的な経費に限らず、国会の議決を経て、使い道が決まっていますから、防衛省自衛隊が自由に使えるというものではないんです。では、話題を変えて、陸海空自衛隊ごとの予算をみていきたいと思います。まず、全体に占める割合をみてみますと、陸が4割弱、海空がそれぞれ2割強というふうになっています。残りの15パーセント程度なんですけれども、その他の機関の予算となっていて、この中に、私たち東北防衛局の予算も含まれているということなんです。次に、各自衛隊それぞれの内訳をみてみますと、陸上自衛隊の予算では、なんと、7割近くが人件糧食費になっているんですね。一方、海空の自衛隊は、人件糧食費は35パーセント程度なんですけれども、歳出化経費、つけ払いですけれども、これが半分程度を占めているんです。このあたりにも、陸はヒト、海空は装備品という、それぞれの自衛隊の特徴が表れていておもしろいですよね。


パ−ソナリティ−:

そうですね。今日は、全然知らなかった、防衛費のことが少し分かってきたように思います。


中村局長:

はい。やっぱり、予算の関係については、今日はほんの入り口なんですけれども、詳しい中身などについては、機会を改めて、お話をしたいと思います。何といいましても、防衛費の元は、国民の皆さんの税金ですから、どんなふうに使われているかというのを、理解していただくのはすごく重要だと思ってます。


パ−ソナリティ−:

はい。私のお財布の中身にも、是非、ご理解いただきたいんですけれども。


中村局長:
 はい。それは、社長にどうぞ。今日は、ありがとうございました。

パーソナリティ−:
 はい。ありがとうございました。さて、本日の自衛隊百科のコーナーも、東北防衛局の中村吉利局長にお話いただきました。局長、どうもありがとうございました。

中村局長:
 はい。ありがとうございました。

パーソナリティ−:
 自衛隊百科のコーナーでした。インタビュアーは北本紗希がお送りしました。


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