防衛省・東北防衛局がおくる日本の防衛Q&A
(8月放送内容)



テ−マ:NSC(National Security Council:国家安全保障会議)

パ−ソナリティ−:

 防衛省・東北防衛局がおくる日本の防衛Q&A、このコーナーでは防衛省・自衛隊や日本の防衛について、詳しく分かりやすくお話をいただいております。本日も東北防衛局の増田義一局長にお話をいただきます。局長、本日もよろしくお願いいたします。


増田局長:

 よろしくお願いいたします。


パ−ソナリティ−:

 それでは早速ですが、今日はどういったお話をいただけますでしょうか。


増田局長:

 今日はですね、NSC(National Security Council: 国家安全保障会議)ですね、国家安全保障会議これについて話したいと思います。
 近年ですね、日本版NSCの創設について、熱心に議論がなされてきましたけども。2007年には、自民党の安倍政権下でですね「国家安全保障に関する官邸機能強化会議」というのがありまして、そこでですね日本版NSC創設が提言されました、これを受けてですね、結局廃案にはなってしまたんですが、安全保障会議設置法の改正案がですね国会で議論されたんですね。その後民主党政権になってからも日本版NSC創設の議論が行われまして、民主党のインテリジェンスNSC作業チームというののですね具体的検討が行われていると承知しています。
 そもそも各国にですね国家安全保障会議というものの類はですねあるんですが、日本がお手本にしたいと考えていますのは、アメリカのNSCですので、今日は特にアメリカのNSCについてですね話をしたいと思います。


パ−ソナリティ−:

 はい、お願いいたします。

増田局長:
  はい。アメリカのNSCが創設されたのは、トルーマン大統領のときの1948年ですから、結構昔の話なんですが、概ね今のような形にですねNSCなりましたのは、その後のケネディー大統領のときです。ケネディー大統領の当時ですねNSCに関して、私のイメージに一番浮かぶのはですね、キューバ危機のときなんですね。キューバ危機っていうのは、1962年のたった13日間の出来事だった訳ですが、米ソがあわや核戦争かという瀬戸際まで行った出来事であったわけですね。私はまだ当時5歳の子供でしたんで、何も知りませんでしたけども、私もその時の話を今聞くとですねゾッとするような話です。以前、この番組でですね安全保障関係推薦図書として「決定の本質」という本をですね紹介しましたけども、これはキューバ危機における意思決定過程を扱ったもので、この中にもですねNSCの話がよく出てきます。それとあと、大統領の弟のですねロバート・ケネディーが書いた「Thirteen Days(13日間)」という13日間というキューバ危機の回想録にもNSCの話が出てくるんですね。この回想録と同名の「Thirteen Days」というケビン・コスナー主演の映画もありましたんで、ご覧になった方もいらっしゃるかと思います。


パ−ソナリティ−:

 この映画ではたしか大統領特別補佐官役を演じていらっしゃいましたね。


増田局長:

 そうですね。はい。


パ−ソナリティ−:

 それではケネディー大統領はどんなことを行ったんでしょうか。


増田局長:

 大統領はですね、それまで肥大化・形骸化していたNSCをですねスリムにしまして現在のような機能的な姿にしたんですね。また、国家安全保障問題担当大統領補佐官の役割が現在のようになったのもケネディー大統領のときです。当時の補佐官はバンディー・ハーバード大教授でですね、辣腕をふるったわけですけれども。NSCが開かれる場所はですね、ホワイトハウスのウェストウィングの地下になりますシチュエーション・ルームになったのもケネディー大統領のときなんですね。このシチュエーション・ルームというのは略してSit Roomと呼ばれるんですけど、決してShit Room とは言わないでくださいね。これは大変お下品な意味になってしまいますので。


パ−ソナリティ−:

  分かりました。


増田局長:

 この補佐官の執務室は、Sit Roomの隣に位置しています。


パ−ソナリティ−:

 アメリカではこのように機能をしているのに、日本ではこのNSCを創設できないというのはなぜなんでしょうか?


増田局長:

 そうですね。NSCをアメリカと同じようなものにしたところで、仏作って魂入れずであればですね、うまく機能しないわけで。その中身がやっぱりですね大事なんだと思います。日本版NSCのメンバーとかスタッフの質とかですね、議論の内容とか、会議の転がし方次第で、良くも悪くもなるのかなと思います。
安倍政権の次が福田政権でしたけれども、その時にはですね既存の安全保障会議で十分機能できるはずだということで日本版NSCを追求していくことはやめたんですね、形じゃなくて中身で勝負すべきだと考えたのだと思います。確かに、現在、安全保障会議というのがありますがそれに加えまして、危機管理監とかですね安保・危機管理担当の官房副長官補などのですね組織も一応は整備されていますし、官邸の地下に危機管理センターというのがあるんですが、これはホワイトハウスのSit Roomに比べてもかなりですねいいもの素晴らしいものだと思います。

パ−ソナリティ−:
 NSCというものを創設しなくても十分なその機能というものは日本も持っているということですね。

増田局長:
 そうですね。補佐官にですねどのような人材が就任するかっていうのもNSCの成否に大きな影響を与えるものと思いますね。アメリカの国家安全保障問題担当の大統領補佐官で有名なのは、先ほどのバンディーの他に、ニクソン政権のキッシンジャーとかですね、カーター政権のブレジンスキー、そしてブッシュ政権ではコンドリーサ・ライスなどですね。日本版NSCでこれほど優秀な人材をですね補佐官として任命できるかどうかというのは、興味の沸くところですね。今名前をあげました補佐官はいずれもですね大学教授で、それぞれハーバード、ハーバード、コロンビア、スタンフォードの大学教授だったんですね。ですからといって、日本版NSCでも学者を補佐官に任命すればよいかと言えば、そうでもないと思いますね。アメリカの学者っていうのは、いわゆるリボルビング・ドアーを通ってですね学界と官界を行ったり来たりしてましてですね、日本の学者と比べて、行政経験を多く積んでいる人が沢山いますので。また、アメリカの補佐官自体もですね学者出身者ばかりというわけでもないんですね。

パ−ソナリティ−:
 なるほど。局長は以前留学されていたお話をこのコーナーの中でも何度かお話しをいただいていますが、このNSCについても学ばれたことあるんでしょうか。

増田局長:
 そうですね、私、昔留学しましたハーバード大学の公共政策大学院、ケネディー・スクールと言うんですが、そこで取った「アメリカの外交政策」というものはですね、ジョセフ・ナイとグレアム・アリソンが共同で教える授業だったんですが、そこでNSCでの模擬体験という形で授業が進められたんですね。事前に、ある世界情勢に関する状況が付与されるんですが分厚いペーパが渡されまして。内容的には、近い将来起きそうなことが詳しく書いてあるんですね、具体的には、例えばインド・パキスタンの核開発競争であったり、アメリカの最新鋭兵器の開発であったり、色々ありました、毎週まったく違ったものが出されるんですが。いずれにせよ、学生はこれを良く読み込んで、アメリカ政府としてどのような対外政策を取るべきかペーパーにまとめて毎週、毎週提出することが求められたんですね。
授業では、当番のグループがまず自分たちが作成した政策ペーパをプレゼンテーションして、これをたたき台に、学生と教授がNSCのメンバーやスタッフになったつもりで、議論を進めていくものでありました。ビジネス・スクールでよく行われているケース・メソッドというのがありますが、それの外交防衛版だと考えていただければよいかと思いますけれども。教授自身が、実際のNSCにスタッフとして参加してきた経験を豊富に持っていますので、教室の議論を実際のNSC風にうまくリードし、とても臨場感のある良い授業でした。
 日本でも最近は公共政策大学院が増えてきましたが、日本版NSCを本当に機能させるためには、こういった地道な人材養成の努力も、他方で必要なのではないかと私は思っております。

パ−ソナリティ−:
 本日も「日本の防衛Q&A」のコーナー東北防衛局の増田義一局長にお話をいただきました。局長本日もどうも有難うございました。

増田局長:
 どうも有難うございました。
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