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自 衛 隊 百 科
(7月放送内容)



テ−マ:ホルムズ海峡情勢とイスラエル



パ−ソナリティ−:

 自衛隊百科のコーナーです。このコーナーでは毎月1回東北防衛局の増田義一局長にお越しいただいて、さまざまなお話をいただいております。
 局長、本日もどうぞよろしくお願いいたします。


増田局長:

 よろしくお願いいたします。


パ−ソナリティ−:

 では早速ですが、本日はどういったお話をいただけますか。


増田局長:

 はい、ペルシャ湾のホルムズ海峡には、我が国へ石油を運ぶタンカーがですね、行き交うところなんですが、ここが封鎖されるというようなことになれば、我が国経済に計り知れないメガトン級のインパクトを与えることになると思います。それはリーマンショックの比ではないというふうに思いますけれども、そんな悪夢がですね、はたして起こるのか起こらないのか一つのカギを握っているのはイスラエルの動きですね。ということで今日はそのへんのイスラエルの話をしたいと思います。


パ−ソナリティ−:

 はい、よろしくお願いいたします。

増田局長:
 イランのですね、核開発を阻止するため、イスラエルが直接攻撃に出るかどうかということになるんですが、仮にそういった直接攻撃に出た場合にはですね、報復として「ホルムズ海峡を封鎖する!」とイランが言っているわけですね。そういうことになってしまうと我が国にとっては目も当てられないような状況になるわけですが、その割には日本人はいま意外と平然としてますよね。多くの人が、こういった事態が生起する蓋然性は低いというふうにみているからだと思います。


パ−ソナリティ−:

 それはなぜでしょうか。


増田局長:

 そうですね、その理由として、まず、イスラエルについてみるとですね、仮にイランへの軍事行動に出れば、アラブ諸国を敵に回すことになりますので、報復を受ける可能性も出てきますし、あとまた仮にですね、ホルムズ海峡封鎖までエスカレートしてしまうと石油の輸送がストップしてですね、世界中が迷惑するわけですが、その引き金を引いたイスラエル自身にもですね、アラブ諸国だけでなく世界中の非難が集中するだろうと、またですね、あとはそのイランは1600キロも離れているんですね、ですから非常に遠いということと、あと第3国の領空を通過しなければならないということで、軍事作戦としては非常に困難を伴うものになるわけですね。というような理由で、イスラエルは軍事行動に出ないだろうという見方があるわけですね。


パ−ソナリティ−:

  それではイラン側の状況は、反対にいかがなんでしょうか。


増田局長:

 イランについてもですね、ホルムズ海峡を封鎖するというようなことをするとですね、今現在、国連制裁の後で原油の取引というのが中国とかインドとか限定されているんですが、これさえも止まってしまって、自国の経済が大きなダメージを受けてしまうわけですね。そんなことは自分の首を絞めるようなことですので、しないだろうという見方であります。いずれにせよ、こういった状況はですね、ゲームの理論で言うとチキンゲームという状況ですね。チキンゲームというのは両者またはどちらか一方が臆病者であればですね、大事に至らないんですが、両者ともに突っ張ってですね、どちらも引かないという状況になると、大変なことに至ってしまうケースになるわけですね。


パ−ソナリティ−:

 なるほど、それではイスラエルという国はどんな国なんでしょうか。


増田局長:

 はい、イスラエルというのは、面積でいうと東北地方の3分の1以下ですし、人口も東北地方の約7割ということで、小さな国ですよね。それにしてはずいぶんと存在感のある国だと思います。周りをアラブ諸国に囲まれているわけですが、これまで1次から4次までの中東戦争やりましたけれども、自分よりはるかに大きい相手を敵に回してもですね、いずれも勝利してきたわけですね。イスラエルは、やる時はやるぞ!という国だと思います。ということでチキンゲームというような状況になるとですね、臆病者の私はちょっと心配ですね。


パ−ソナリティ−:

 イスラエル、実際にこうやる時はやるぞ、という国のようですが、やったという出来事を教えていただけますでしょうか。


増田局長:

 はい、イスラエルはこれまでもですね、周辺国の核開発を阻止するために、2回ほどですね、直接攻撃をやっています。1回目は、1981年にですね、イラクのサダム・フセインが進めようとしていました核開発をですね、オペラ作戦あるいはバビロン作戦という軍事作戦で阻止しました。イラクのオシラクというところにある施設をですね、航空攻撃により破壊したんですね。2回目は、割と最近なんですが、シリアが進めようとしていました核開発を阻止するためにですね、オーチャード作戦という軍事作戦がありまして、アル・キバールというところにある施設を破壊しました。これは2007年のことですね。こういうふうに、イスラエルは、やる時にはやる国なんじゃないかと思いますね。

パ−ソナリティ−:
 なるほど、それでは反対にイランはどういった国なんでしょうか。

増田局長:
 はい、イランはですね、IAEAの報告書によりますと、濃度20%のウランをすでに109キロ製造済ということなんですね。そしてこの1年以内に濃度90%のですね、これは兵器級のウランですね、これを製造可能というふうにみられています。まあこういった状況の下でですね、イスラエルのネタニヤフ首相がどう出るか、注目したいところなんですが、イスラエルのネタニヤフ首相というのは、アメリカ育ちで大学もアメリカのMITを出てですね、オバマ大統領をはじめアメリカ政界とのパイプが太くてですね、アメリカとの関係をうまく保ちながら対外政策を進めるんだと思います。他方で、この人のお兄さんはエンテベ作戦の司令官で戦死したイスラエルの英雄なんですね。またネタニヤフ首相自身も若かりしころこのエンテベ作戦に参加しているんです。


パ−ソナリティ−:
 エンテベ作戦とはどういったものなんでしょうか。

増田局長:
 エンテベ作戦というのは、1976年にですね、パレスチナ・ゲリラが民航機を乗っ取ってですね、イスラエル人・ユダヤ人を人質にとったんですね、それを救出した救出作戦なんですけれども、乗っ取られた航空機は、ウガンダのエンテベ空港というところにですね、行きまして、そこで人質を抱えていたわけですが、イスラエル軍の特殊部隊がそこを急襲してですね、救出作戦を行ったんですね、その時、主権を侵害される形となりましたウガンダ軍とですね、銃撃戦になりましたけれども、結局約100人の人質救出には成功したんですね。救出して帰ってくるときに、ウガンダ空軍の戦闘機が追撃してくると困るので、エンテベ空港に11機ほどMig-17戦闘機が駐機していたんですが、それも全部破壊して、それで救出して帰ってきたんですが、こういった決死の作戦にもですね、ネタニヤフ首相自身が参加した経験も有しているんで、やる時にはやる人かもしれないですね。いずれにせよ、今後の動向を注視していくことが必要なんじゃないかなあと思います。

パ−ソナリティ−:
 そうですね、イランとイスラエルという名前が出たら、ちょっと反応していかないといけないですね。
さて、本日の自衛隊百科のコーナーは、東北防衛局の増田義一局長から「ホルムズ海峡情勢とイスラエル」についてお話をお伺いしました。局長、本日もどうもありがとうございました。

増田局長:
 どうもありがとうございました。

 
 
 
 
 
 
 
 


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