防衛省・東北防衛局がおくる日本の防衛Q&A
(12月放送内容)



テ−マ:復興に当たって思うこと

パ−ソナリティ−:

 防衛省・東北防衛局がおくる日本の防衛Q&A、このコーナーでは防衛省・自衛隊や日本の防衛について、詳しく分かりやすくお話いただきます。本日も東北防衛局の増田義一局長にお話をいただきます。よろしくお願いいたします。


増田局長:

 よろしくお願いいたします。


パ−ソナリティ−:

 それでは本日はどんなお話をいただけますでしょうか。


増田局長:

 東日本大震災から約9か月が経過しまして、復興に向けての努力が多方面で続けておられますけれども、この復興に当たってですね、思うことをちょっと今日は話したいなと思います。


パ−ソナリティ−:

 はい、よろしくお願いいたします。

増田局長:
  先の震災でですね、私は3つの分野の重要性を改めて感じました。一つは、山形空港や花巻空港といった地方空港の重要性ですね。
先般の地震と津波でですね、被災地における陸上輸送、海上輸送が遮断されて、救援活動にとって航空輸送がやっぱり重要となったわけですね。しかしながら仙台空港と松島基地の飛行場というのが津波でやられてしまいましたので、これを補うこととなって大活躍したのが山形空港と花巻空港でありまして、これらの重要性が再認識されたんではないかなあと思います。それで津波でやられてしまいました松島飛行場は自衛隊が、仙台空港は主に米軍がですね、それぞれ分担して懸命の応急復旧を行いまして、発災数日後には、次々と救援機が降りてくるようになりました。しかし、所詮は応急復旧ですので、降りて来れるのは主として軍用機だったですね。やはり管制や誘導施設、ターミナル等が無事で、民航機でも降りてこられるというのはやはりこれらの地方空港であって、その存在は極めて重要だったと思います。そういうことを踏まえますと、山形空港をはじめとした地方空港はですね、災害時のバックアップ空港としていつでも機能できるように、施設・設備や運用に関わる要員等ですね、こういったものについて十分なキャパシティーの余裕をもった態勢が構築されていくことが重要なんじゃないかなと思っております。


パ−ソナリティ−:

 はい、今回は東北地方でも被害が大変大きかったですが、やはりこれからのことを考えていくと全国的に災害に強い空港というので、地方空港が強くなっていくといいなあと思いますね。はい、そして2つ目は。


増田局長:

 はい、二つ目はですね、建設、土木業界の重要性ですね。この業界は、道路の復旧とかあるいは瓦礫の処理に活躍しました。こういったものは国交省の所掌になるんですけれども、建設、土木業界との防災協定というのがありましたんで、今回の震災の際には主要道路の復旧は非常に早かったんじゃないかなあと思います。自衛隊による道路の啓開もですね、300キロ以上やりましたけれども、ここでもやはり建設・土木業界の協力に助けられたと思います。建設・土木業界というのは、人とか機材の動員能力がありますし、即応性もあると思うんですね。あと自己完結性もあると思います。ですから災害の際には、非常に重要な業界なんじゃないかなというふうに思いました。


パ−ソナリティ−:

 そうですね。外から入ってくる情報で、今回の震災では道路の復旧の早さというのが大変驚くほどの早さで、日本の技術力に大変感動しました。はい、そして3つ目は。


増田局長:

 三つ目はですね、コミュニティー放送の重要性ですね。携帯電話は、基地局が津波で破壊されたり、そうでなくても輻輳して使えなかったりしましたですね。テレビは停電のため見ることができないという状況にありましたけれども、こういった中で、小さなラジオ1個あれば大事な情報が得られるということから、ラジオの重要性が再認識されたと思います。災害の後、あわててラジオを配ったりする動きがありましたけれども、特に、コミュニティー放送は、地域の細やかな情報を提供できますし、こういう点で非常に重要だったんじゃないかなと思います。ただ、コミュニティー放送は財務基盤が弱いところが多いですので、これを支援するものが必要かなと思っておりましたけれども、コミュニティー放送を支援する機構を作る動きがですね、山形を中心に広がったということは喜ばしいことだなと思っています。


パ−ソナリティ−:

 ありがとうございます。今後は災害が起こる前にすべきことというのも踏まえて考えていかなくてはいけないなと思います。


増田局長:

 そうですね。普段、効率性、合理性と何でもかんでも効率性・合理性を追求してきたということがあったと思うんですね、そういうことで、いざというときに大きな支障をきたしてしまった事例が色々見られました。やはり、余裕というものが必要であるんじゃないかなというふうに痛感した次第ですね。効率性を追求しすぎたため、人は足りない、物は足りないという事態になりますと、これは困ったもんですので、やはり余裕が必要と。それで今回の震災では、従来徹底的な効率経営を追求して賞賛されていた企業ほど、あらゆる面でモノ不足という状況にありましたので、被災民に物資をですね、提供、販売できなくて、こういった意味でですね、こういった企業が役立たずだったというのは皮肉なことですね。
近年、行政分野にも市場の論理を持ち込んでですね、徹底的な効率化・合理化を推進するというのがトレンドになっていますけれども。それで良い分野もありますけれども、ダメな分野も行政にはあると思うんですね。いわゆる「市場の失敗」と、経済学の言葉ですけれども「市場の失敗」がある分野だと思います。民間は市場原理万能主義でもかまわないと思いますけれども、行政の分野ではやはり万能というわけにはいきませんので、災害の際にですね、余裕というものが必要だなということを感じました。財政難という事情は理解できますけれども、防災という観点からは余裕が重要ということで、備蓄にも余裕が必要ですね。ギリギリの備蓄では役に立たないという状況だと思います。
そしてこれらの余裕についてですね、リダンダンシーの必要性というふうに言っても良いのかなと思います。リダンダンシーという言葉はですね、防衛大学の五百旗頭(いおきべ)校長がですね、座長になりました復興構想会議というものがありましたけれども、そちらがまとめました「復興への提言」の中でも出てきます。「リダンダンシーの確保により防災機能を強化しなければならない」というような記述が出ておりましてですね、こういった視点が必要なのかなと思っております。ちなみにですね、厳しい財政事情の下でですね、防衛関係費も減少傾向にありますので、まあ、いざというときのためにですね、余裕という観点からの検討も必要なんじゃないかなと思っているところであります。


パ−ソナリティ−:

 なるほど、人間にももちろん余裕が必要ですけれども、やっぱりこういった観点からも本当に余裕というものは大切なものだなと思いますね。本日は、東北防衛局の増田義一局長にお越しいただき、お話をいただきました。局長、本日もどうもありがとうございました。


増田局長:

 どうもありがとうございました。
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