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自 衛 隊 百 科
(10月放送内容)



テ−マ:自衛隊・各国軍の食文化

パ−ソナリティ−:

 自衛隊百科のコーナーです。このコーナーでは毎月1回東北防衛局の増田義一局長にお越しいただいております。
局長、本日もよろしくお願いいたします。


増田局長:

 よろしくお願いいたします。


パ−ソナリティ−:

 それでは早速ですが、今日はどのようなお話をいただけますでしょうか。


増田局長:

 はい、今日は、少しあまり硬くない話をしようと思いまして、自衛隊や各国軍隊の食文化について、知っている範囲ですけれども話したいと思います。


パ−ソナリティ−:

 食欲の秋ということで、はい、よろしくお願いいたします。

増田局長:
 まず、自衛隊というのは一体どういうものを食べているのかなと、興味のある方もいらっしゃると思いますけれども、私は文官なもんですから、自衛官の人たちほど食べているわけではないんですね、ただ、基地や駐屯地へ仕事で行ったときにですね、自衛官が普段食べている食事をいろいろ食べさせてもらっています。それから海上自衛隊の護衛艦に1か月乗って毎日船の中の食事を食べていたようなこともありますので、そういった経験からちょっと話をしたいと思いますが、基地や駐屯地で出る食事はですね、私の言葉で言うと「学校給食の大人版」のようなものですね。中身は和食であったり洋食であったりしてですね、一般的に日々普通の日本人が家庭でよく食べているものと基本的に同じなんです。かと言って家庭料理かというと、それよりは学校給食の大人版のようなものといった方がぴったり行くんじゃないかなあと思いましてですね、列に並んで配食を受けるというスタイルも同じですし、多くのメニューの中から好きなものを選ぶというのではなくて、あらかじめ決められたメニュー、これを食べるという点も同じですので、イメージ的にこう言ったら適当なのかなと思って、そういう言葉を使ったんですけれどもね。


パ−ソナリティ−:

 はい、学校給食の人気メニューと言えばカレーなんですけれども、自衛隊のカレーもおいしいとよく周りの方から聞きますねえ。


増田局長:

 そうですね、海軍カレーといって、海上自衛隊のカレーは結構人気があるんですけれども。
 自衛隊とですね、各国軍の食事というのがありますけれども、そういったスタイルや中身はやはり国によって違っていまして、それぞれの文化を反映しているんじゃないかなと私は思います。私は、前にも話したことがありますけれども自衛隊のイラク人道復興支援活動の拠点であったですね、イラクのサマーワ宿営地にポリティカル・アドバイザーとして約半年間行っていたんですが、その時もそういうことを感じました。このサマーワ宿営地で出される自衛隊の食事もですね、基本的には日本国内の基地・駐屯地で出される食事と同じでですね、「学校給食の大人版」のようなものなんですけれども、この食材を日本からイラクまで運んでいました。あるいは生鮮野菜なんかはクウェートあたりで調達していたんですけれども、そういったものを使った日本の料理でしたんで、イラクに行ったときぐらいイラク料理を食べたいなと思ったこともありましたけれどもね。まあ大多数の人がやはり日本の食事を希望しますのでこういうふうになりますけれども。私は日本食に執着しない方なので、1年や2年ぐらい日本食を食べなくても平気なんですね。実際、アメリカのボストンに2年間行っていたときもですね、日本食なしで過ごしましたけれども、昼にはピザとかハンバーグばかり食べていました。まあ、ああいうところでは日本食というのは結構高いんですよね、高級料理なものですからそういうことになるわけですけれども、ワシントンに1年間いたときも同様でありました。


パ−ソナリティ−:

 それでは他の国の方が日本にいるときも同じように感じるのかもしれないですね。フランス料理はフランス人の方、ちょっと日本だと高いなあというような。


増田局長:

 そうですね。イラクの話に戻りますけれども、仕事でですね、多国籍軍の他の国の基地・宿営地に行く機会が時々ありまして、そこで食事もしてくるわけですけれどもね、例えば、バスラにイギリス軍がやっている基地があったりとかですね、あるいはタリル基地というのはここはアメリカ軍ですね、あとはクウェートにキャンプ・バージニアというのがありました。そこもアメリカ軍ですね、あとサマーワにオランダ軍、イギリス軍、オーストラリア軍の宿営地がありまして、そういったところで食事を実際に食べたりしたわけですね、やはりそれぞれの国の文化の違いというものが出ていると思います。アメリカ軍を始めとして、彼らの食事は基本的にはビュッフェ・スタイルですね、よりどりみどりある中からお好きなものを好きなだけ取ってくださいというスタイルで、ピザとかハンバーガーもあるんですね。デザートもいろいろありまして、好きなものを選んで好きなだけ食べれるというところが、やはり日本の学校給食方式と異なるところですね。オランダ軍の朝食なんていうのはですね、質素といいいますか、基本的にはおかずはチーズとハムしかなくて、それをパンに挟んで食べるというものでしてですね、これは私が25年くらい前、学生時代にですね、ヨーロッパ一人旅をしたことがあるんですが、そのときにオランダのペンションに泊まったときもですね、朝食がそんな感じだったもんですから、その頃のことを思い出してしまいましたですね。アメリカ軍のキャンプ・バージニアなんてすごいんですよ。砂漠の真ん中なので、みな天幕暮らしなわけですけれども、そんな中に、ビーチで見かける海の家みたいな掘っ建て小屋がぽつんぽつんとありまして、ピザハットだのサブウェイだのバーガーキングだの我々なじみのファーストフード屋さんが開店しているんですね、こういうところで。ネットカフェまでありましたんで、これは文化の違いだなというふうに思いました。


パ−ソナリティ−:

 ほんとに文化の違いなんですねえ。


増田局長:

 イラクでの自衛隊の食事は、自衛隊員が作っていました。それ専門の隊員がいてですね、彼らが作ってくれるわけですけれども、他方、多国籍軍の他の国は、食事は基本的にはアウトソーシングで民間企業が作って出していました。時々迫撃砲が飛んできたりとかですね、武装勢力の攻撃があるような場所なので、民間企業自身も武装していたりとかですね、あるいは民間軍事会社に警備を委託していたりとかしているわけですけれども、こういった中で活動しているわけですね。多国籍軍の他の国は、食事だけでなくて洗濯とかですね、あるいは宿営地の造成までアウトソーシングで民間企業にやってもらっていたんですけれども、自衛隊の場合は、これらはすべて自前でやっていたわけですね、法的に派遣人数が限られていまして、そういった限られた人数の中で、こういった食事とか洗濯にしても割かなければならないんで、本来の人道復興支援活動に従事できる人数はさらに限られてしまうというような課題もあったわけです。そういえば、サマーワの自衛隊の宿営地の中に、日本の外務省、サマーワ事務所というのが入りまして、彼らがイギリスの民間軍事会社コントロール・リスク社というのがありますが、そこの警備員を雇っておりまして、8人ほどが宿営地の中に常駐していました。彼らは主としてニュージーランド人だったんですけれども、筋骨隆々、全身刺青だらけで、眼光が非常に鋭いという具合で、一見して実戦経験豊かなウォリアーということがわかるんですが、彼らの食事はですね、外務省への便宜供与の一環ということで、自衛隊の食事を提供していたんですけれども、なんと彼らはですね「こんなものだけでは、戦えない」とかと言って、親元のコントロール・リスク社から肉の塊を送らせてですね、それを屋外でバーベキューにしてよく食べていましたですね。こんなときつくづく、「この人たちは、肉食系の人なんだな」と思いましたですけれども。


パ−ソナリティ−:

 ワイルドですねえ。


増田局長:

 話をもとに戻しまして、サマーワのオランダ軍の宿営地の中に喫茶店がありましてですね、よく仕事で行ったついでに立ち寄ってコーヒーを一杯飲んだりしましたけれども、非常に懐かしいですね。ここは、夜になるとお酒も出すんですね。そういえばバスラにあるイギリス軍も基地の中にバーがありましてですね、夜になるとワインとかビールを飲むことができました。他方で自衛隊は非常に禁欲主義でありまして、イスラム教徒であるイラク人がお酒を飲まないんで、まあこれにおつきあいということで、酒は厳禁でしたので宿営地の中にバーなんて無かったですね。せいぜいノンアルコール・ビールを飲んで我慢するぐらいで、半年間禁酒ということでありました。


パ−ソナリティ−:

 郷に入っては郷に従え、日本人の心ですね。


増田局長:

 そうですね。さて、基地や駐屯地で出される食事のほかにですね、非常時の非常糧食があります。戦闘糧食なんて呼ばれますけれども、有事のときはもちろんのこと、災害派遣や野外訓練などのときにですね、基地・宿営地を出て、前進した人たちが野外や天幕の中で食事するわけですけれども、これが戦闘糧食です。それで缶詰であったりレトルトであったりするわけですが、やはり中身は、「非常時なんだから、これで我慢しなさい」的なですね、そんな感じでそれは仕方ないわけですけれども、色々と改善の努力はされていますけれどもそういうわけであります。
アメリカ軍の戦闘糧食でMRE(Meal Ready to Eat)レーションというのがあるんですけれども、これなんかは面白くてですね、一つのパッケージの中にあらゆるものが入っています。メインディッシュ、サイドディッシュ、デザートかスナック、クラッカーかパンが入っていて、それに塗るチーズとかピーナッツバターかジャムが入っていて、あと粉末ドリンクですね、フルーツドリンクやココア、コーヒー、紅茶、スポーツドリンクだったりするんですが、そういうものが入っていて、さらにアクセサリーパックというのが入っているんですね、その中にはチューインガムとかウェットティッシュやマッチ、塩、胡椒、砂糖、クリーマー、そしてタバスコのミニチュアボトルまで入っているんですね。あとはメインディッシュ・サイドディッシュを温めるヒーターも入っているんですが、まあそのようなものです。メインディッシュもいろんなバリエーションがあって、私の知ってる限りでは24種類ぐらいですかね、1番から番号がついていまして、例えば1番はチリ・ビーンズとかですね、3番ビーフ・ラビオリ、12番スパイシー・ペン・パスタとかですね、14番ラタトーヤ、21番レモン・ペッパー・ツナとまあそういった具合なんですけれども。それで先ほどタバスコのミニボトルが入っていると言いましたけれども、スナックなんかですね、例えばm&mのチョコレートですね、こういった市販のお菓子が、ミニチュア版でありますけれども包装なんかそのまま入っているので、結構楽しめるんですよね。それで日本には幕の内弁当という非常にいろんなものが入って楽しめるものがありますけれども、これはちょっと幕の内弁当的だなと思ったりしますけれども、殺伐とした戦場にいながらですね、食事の時だけはアメリカの気分にちょっと戻れるというものなのかなあなんて思っています。アメリカというのは以前も話しましたけれども、第二次大戦の時にはGIピアノというピアノをですね、3千台ほどスタインウェイ社に作らせて前線に投下してしまうような国なので、こういう国はちょっと違うなというような感じはします。このMREレーションというのは市販もされていてですね、軍人以外でも買って食べることができるんですけれども、結構ファンが多いようですね。インターネットで調べればすぐに出てきますので興味のある方はですね、ちょっと探して通販で買うことも出来ますので、試食してみたらいいんじゃないかなと思います。


パ−ソナリティ−:

 是非、試食してみたいと思います。


増田局長:

 今日は、ちょっとつまらない話になりましたけれども、まあこういった話でございます。

パ−ソナリティ−:
 はい、今日の自衛隊百科のコーナーは、自衛隊・各国軍の食文化について、東北防衛局の増田義一局長にお話いただきました。どうもありがとうございました。

増田局長:
 どうもありがとうございました。


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