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自 衛 隊 百 科
(9月放送内容)



テ−マ:自衛隊と軍用犬

パ−ソナリティ−:

 自衛隊百科のコーナーです。このコーナーでは毎月1回東北防衛局の増田義一局長にお越しいただいて、お話をいただいております。
局長、今月もよろしくお願いいたします。


増田局長:

 よろしくお願いします。


パ−ソナリティ−:

 それでは早速ですが、今日はどのようなお話をいただけますでしょうか。


増田局長:

 はい、犬をペットとして飼っている方が沢山いらっしゃると思いますけれども、今日は犬についてですね、自衛隊と軍用犬について話したいと思います。


パ−ソナリティ−:

 はい、お願いいたします。

増田局長:
 犬と人間の共存の歴史というのは結構古いんですね。ものの本によりますと、最も古い犬の骨が、3万5千年前のネアンデルタール人の住居跡から発見されているそうですので、何万年という単位で続いているということになりますね。その間に、犬はオオカミのような姿から、どんどん変容を遂げていますけれども、トイプードルなんか見ていますと、「これ本当にオオカミの子孫かな?」なんて思ったりしてしまいますよね。


パ−ソナリティ−:

 そうですね、今は犬といえばペットとしての可愛らしいイメージというのが一番最初に思い浮かびます。


増田局長:

 犬は、人間と共存している間に、単なるペットというだけでなくて、色々な役割を与えられて人間に貢献してきたわけで、古くは、狩猟のために猟犬として働いたりとかですね、あるいは牧羊犬として放牧のお手伝いをしたりとか、北極圏ではそり犬として犬ぞりを引っ張ったりとかしていますね。もちろん、番犬としても活躍していたわけですけれども。


パ−ソナリティ−:

 本当に人の生活に密着したお手伝いさんとして近くにいる存在ですね。


増田局長:

 現代でもこのような仕事も残っていますけれども、その他に、盲導犬とかですね、あるいは耳の不自由な方のための聴導犬とか、あるいは手足の不自由な方のために介助犬とかですね、更には心を癒やすセラピー犬などもいるわけで、あとは災害救助で活躍する救助犬なんかもいるわけです。


パ−ソナリティ−:

 お医者さんというか、ヘルパーさんのようなそういった形での手助けをしてくれているんですね。はい、それでは今日の本題である犬と自衛隊の関係についてなんですけれども。


増田局長:

 そうですね、軍事目的とかですね、治安目的とかこういったものに軍用犬とか警察犬とかいるわけですね。あとは水際取締のために麻薬犬というのがいますけれども、これなんかは空港の到着口なんかでご覧になった方もいらっしゃるかと思いますけれども。私は昔、財務省の関税局に出向して、税関の取り締まりに関する政策を担当する課の課長をしていたことがありましてね、それで麻薬犬に関することもその所掌に入っていたものですから、空港や港湾で活躍する麻薬犬の活動を見に行ったりとかですね、あるいは訓練センターでの訓練の様子を見に行ったりする機会が何度もありました。その時の印象を言えば、犬は人間のために働くのが大好きという感じでですね、喜々として活動していました。麻薬犬を訓練してこれを扱う人をハンドラーと言いますけれども、あるハンドラーがおっしゃるにはですね、「人間から何も仕事を与えられないことほど、犬にとって辛いことはない。」というふうにおっしゃっていたのをよく覚えています。


パ−ソナリティ−:

 たしかに人も何か役割があって、必要とされてはじめて自分を幸せに感じることもありますから、犬も一緒なんですね。


増田局長:

 そうですね、それで9.11の同時多発テロ以降には、テロ関連の水際取締が強化されまして、税関でも麻薬犬だけでなくて爆発物の探知犬、これを略してバクタン犬というふうに呼んでいましたけれども、こういったものの活動も増えました。そしてバクタン犬はですね、色々な種類の火薬・爆薬に反応するように訓練しなければならないので、こういった火薬・爆薬を取りそろえている在日米軍に行って訓練をさせてもらったりしていました。あまりこういう話を暴露すると取締りに支障をきたすのではないかと怒られそうなので、これくらいにしておきますけれどもね。


パ−ソナリティ−:

 はい。


増田局長:

 あと爆発物の関係では、地雷犬というものがいます。これは地中に埋まった地雷の臭いを犬が嗅いで探し当ててですね、人間がこれを爆発処理するわけですけれども、国際紛争が終わった後に取り残されている対人地雷、これが民間人に子供を含めまして多くの犠牲を出したということで大きな問題となっていました。そういった対人地雷の処理の現場でも活躍している犬がいるわけであります。これなんかは、軍用犬というよりは人道目的の人道犬と言ったほうがふさわしいのではないかと思いますけれどもね。


パ−ソナリティ−:

 はい、いろんな場面で犬が活躍しているんですねえ。


増田局長:

 それで自衛隊の話ですけれども、まず航空自衛隊にですね、歩哨犬という呼び方をしていますけれども、基地警備に従事している犬がいます。航空自衛隊の基地全体で300頭ぐらいいるのではないかと思いますけれども。航空自衛隊の航空祭のときにですね、訓練展示というものをやっていますので、ご覧になったことがある方もいらっしゃるんじゃないかと思います。入間基地に訓練所がありまして、専門的にこの歩哨犬の訓練がされています。
パ−ソナリティ−:
 歩哨犬というのは人でいうとガードマンの仕事をしているということなんでしょうか。
増田局長:
 そうですね、犬の種類は、ジャーマン・シェパードです。そもそも、日本の軍用犬の始まりは、第1次大戦でドイツの租借地であった青島、ここを日本の陸軍が攻略したときの戦利品としてですね、ドイツの軍用犬を入手したのが始まりというふうに聞いていますけれども、そのときの犬の種類がジャーマン・シェパードでありました。それ以来、軍用犬といえばジャーマン・シェパードが主体なわけですけれども、この犬は素直だし情緒が安定していて良いというふうに聞いています。
パ−ソナリティ−:
 シェパード犬というのはちょっとシュッとしたような顔をしているので、なんかちょっと恐いなというイメージもあるんですけれども、素直なんですねえ。他にもそういった犬はいるんでしょうか。
増田局長:
はい、あとは海上自衛隊でも犬が活躍しておりまして、こちらの方は警備犬というふうに呼ばれています。同じ自衛隊なのに海上自衛隊と航空自衛隊で呼び方が違うのがちょっと面白いんですけれどもね。この警備犬の中には、国際救助犬の試験に合格している犬もいまして、先の東日本大震災で活躍をしたりしました。それでそのうちの1頭が死んでしまったんですけれども、それがマスコミではちょっとニュースになっていましたね。呉の部隊に所属する金剛丸というジャーマン・シェパードだったんですが、この犬は救援活動の際にはですね、瓦礫で足を怪我してもひるまなかったと、また、水の中を泳いでですね、生存者の捜索を行ったらしいんですけれども、残念ながら、その後体調を崩して死んでしまったんですね。まだ4歳4ヶ月の働き盛りだったんですけれども、可哀そうだなと思います。

パ−ソナリティ−:
 そうですねえ。
増田局長:
 あとは陸上自衛隊には、犬はいません。
話はちょっと飛びますけれども、イラクに人道復興支援活動、これは自衛隊がやっていましたけれども、イラクに私もポリティカル・アドバイザーということで陸上自衛隊とともにサマーワに半年ほど行きました。その際に、狂犬病の予防接種も打って行ったんですね。自衛官の皆さんも同じなんですけれども、全部で13本も予防接種を打って行きました。その中にはですね、既にWHOが撲滅したと宣言した天然痘の予防接種もありましてですね、イラクには生物兵器として残されているかもしれないというそういう配慮でこれが入っていたんですけれどもね。それで狂犬病の話ですけれども、日本ではもう狂犬病というのはありませんけれども、外国では年間5万人も死亡している病気ですね。そして狂犬に噛まれて、発症したら100%助からないという病気ですので恐ろしいですよね。日本人でも、海外旅行中に犬に噛まれて、その後狂犬病を発症してですね、お亡くなりになる方が、たまにいらっしゃいますので、外国で犬に噛まれないよう気をつけたほうが良いと思いますね。
私は、イラクでは、サマーワ宿営地の中にですね、野犬が入ってきて、徘徊しているのを何回か遭遇しましたけれども、相手にスキを見せると噛まれますので、スキを見せないようにしていましたら、野犬の方から逃げていきましたけれどもね。
パ−ソナリティ−:
 気合いで犬を撃退されたんですね。すごいですねえ。
増田局長:
  はい、最後はこんな話になってしまいましたけれども、今日はこんなところで。
パ−ソナリティ−:
 はい、どうもありがとうございました。
増田局長:
 ありがとうございました。
パ−ソナリティ−:
 本日は、東北防衛局の増田義一局長にお話をいただきました。自衛隊百科のコーナーでした。


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