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自衛隊インビテ−ション
(9月放送内容)



テ−マ:無人機(UAV)とロボットと東日本大震災

パ−ソナリティ−:

 皆さんこんにちは、今日は東北防衛局の増田局長にお越しいただいております。局長、今日はどんなお話でしょうか。


増田局長:

 はい、東日本大震災では、米軍がトモダチ作戦で多大なる支援をしてくれたわけですけれども、その際に、米軍が保有するロボット、無人機も含めてですね、このロボットが非常に役に立ったということが改めて認識されました。防衛目的だけではなくて、災害対応や原子力災害対応に非常に役に立つという、このロボットの導入を日本も急がなければならないという動きになっておりますので、今日は無人機も含めたところのロボットの話をしたいと思います。


パ−ソナリティ−:

 はい、よろしくお願いします。

増田局長:
 まず、無人機の話をしましょう。無人機はですね、通常の飛行機やヘリコプターのようにですね、パイロットが乗って操縦するのではなくて、無人機だけで飛んでいくので、空飛ぶロボットと言っていいと思いますけれども、一般にUAVといいます。Unmanned Aerial Vehicle の略なんですけれどもね。
これは東日本大震災のときには、米軍の無人機グローバルホーク、これが飛んでですね、被災地や原発事故の情報収集に大活躍をしました。無人ですから、放射能を気にする必要がないわけですね。福島原発の真上を飛んだ自衛隊機がですね、放射能の線量を気にしながら飛ばなければならなかったわけで、その放射線量が強すぎて真上を飛べなかったこともあったわけですけれどもね。これは無人機、UAVであれば大丈夫なわけです。もちろん放射性物質が付着すればですね、後で除染は必要なんですけれども。
このグローバルホークは、全長13メートル、幅が35メートルもある大型のUAVで、ターボファンエンジンを搭載して、最高36時間の飛行が可能なんですね。高度も2万メートル近くまで上がれます。電子・光学・赤外線その他各種のセンサーを搭載していますので、雲の上からも地上を偵察することができます。東北地方と関東地方を合わせたぐらいの広大な面積の詳細な情報を1日で得ることが可能なんですね。また、事前にプログラムしておけば、離陸から着陸までの間、オペレーターとの交信が一切なくても自立的に行動ができるそういったものですね。
 この米軍のグローバルホークは、イラクやアフガニスタンで、偵察・監視活動に大活躍しました。武器を搭載していませんので、情報収集が専門で、攻撃は行いません。その点がですね、ヘルファイアーミサイルを搭載してアフガニスタンなどでテロリストをピンポイントで攻撃したプレデターという無人機とは違うところなんですね。

パ−ソナリティ−:
 日本製の無人機というのはあるんですか。

増田局長:
 防衛省の技術研究本部で無人機の研究開発はやっておりまして、試験飛行などですね、硫黄島なんかでやったりしていますけれども、これはまだ調達の段階には至っていません。
 イラクの人道復興支援活動では、サマーワ宿営地の警備のために、無人機を飛ばしていましたですね。この無人機は無人ヘリコプターでありまして、オモチャのラジコンヘリを大きくしたようなものなんですけれども。私もサマーワに行ってましたけれども、夜間静まりかえった頃に暗闇の中からブーンとこれが飛んでいる音が聞こえてきたのを覚えています。これはメーカーがヤマハの無人ヘリだったんですけれども、ヤマハはその後、中国への不正輸出で検挙されてしまいましてですね、無人ヘリというのは農薬散布などの民生目的でも使われていますけれども、軍事転用も可能なので輸出には注意しなければならないですねえ。残念なことですけれども。


パ−ソナリティ−:
 そうですねえ。


増田局長:

 ロボットの話に移りたいと思いますけれども、福島での原子力災害では、米軍で使われていた軍用ロボットが大活躍しています。放射能が高くて人が入れないようなところでも、スイスイ入っていって映像を送ったり、作業をしたりすることができるわけですね。いろいろなロボットが使われているようですけれども、例えば、iROBOT社のPACKBOTとかWARRIORとかのロボットが使われています。iROBOT社といえば、ロボット掃除機ルンバのメーカーといえば、ああ、あれかと分かる方もいらっしゃるかもしれませんけれども。このPACKBOTというロボットですね、2001年に出ていますので、そんなに新しいものではないですけれども、ボディーが非常にコンパクトで、50センチ×70センチぐらいですね、あと高さが20センチぐらいなので、狭いところでもスーと入っていってですね、足がキャタピラみたいになっていてですね、60度の角度でも登っていけるんですね、そしてキリンのように長い首が折りたたまれてですね、頭のところにカメラがついているので、首をグーと伸ばせば、2メートル近い高さからモノを見たりすることが出来ます。あとマニピュレーターで色々な作業もできるわけですね。オペレーターの離れた安全なところで、電波で送られてくる映像を見ながら、プレイスティションみたいなですねコントローラーを使って作業をすることができます。これらのロボットは、アフガニスタンやイラクで活躍しまして、武装勢力がIEDなんかの爆発物を仕掛けて、これで多国籍軍も相当被害を受けたわけですが、これらの爆発物処理の危険な作業や偵察なんかにこのロボットが活躍したわけです。
福島では、その他にも、HoneywellのT-Hawkなんかも使われましたけれども、小さな空飛ぶ円盤みたいなもので、これが原子炉の上の方から映像を撮ったりとかそんな活躍をしておりました。


パ−ソナリティ−:

 ロボットもかなりの高性能という感じですね。

増田局長:
 そうですね、ロボットの活用というのは、かつての自動車産業の溶接ロボットなんかにみられますように、日本のお家芸のように思われていましたけれども、今度の原子力災害を見る限りですね、この分野での活用という点では後れをとってしまったようですね。防衛省・自衛隊においても、今回の教訓を踏まえてですね、無人機やロボットの調達という方向に進んでいくというふうに思います。まあ放射能汚染環境下でも使用できる、また、自衛隊のニーズに基づく無人システムですね、研究開発が進んでいくんじゃないかなあと思います。


パ−ソナリティ−:

 そうですね、その必要性は大いにあると思いますね。


増田局長:

  はい、国際的な武力紛争では、もっとも危険を伴う環境にあるわけですので、ロボット化が進むのは当然だと思いますね。最初の方で、プレデターの話をしましたけれども、プレデターのオペレーターは、アフガニスタンやイラクから遙か離れた地球の裏側でですね、画面を見ながら遠隔操作で、テロリストや武装勢力への攻撃を行っているんですね。従来のように戦闘機に乗って攻撃していたのでは、仮に撃墜されてパラシュートで脱出しなければならない状況の下では、相手方も戦争法とか人道法とかそんなことはもう知らんこっちゃないという人たちですから、そういうところにパラシュートで着地したら、どんなに残酷な目に遭うか知れたものではないわけで、だから安全な場所で遠隔操作というようなことになるわけですね。まあ技術進歩に伴って凄い時代になってきたなあというふうに感じます。


パ−ソナリティ−:

 そうですね、今日は無人機とロボットのお話、とても興味深いお話どうもありがとうございました。

増田局長:
 どうもありがとうございました。
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