自衛隊を知りたい

武力攻撃事態などにおける国民保護のための取組

国民保護における自衛隊の役割

自衛隊と国民保護

武力攻撃事態等において、自衛隊は、速やかに武力攻撃を排除し、国民への被害を局限化することが重要であり、この自衛隊にしか実施することができない任務の遂行に万全を期すこととなります。このため、武力攻撃事態等の規模・態様によりますが、自衛隊の持てる能力を、人命救助や復旧支援などに集中することが可能な自然災害のみへの対応(災害派遣など)の場合とは異なり、自衛隊は、武力攻撃を排除するという任務との両立を図り得る範囲内で、可能な限り、避難住民の誘導、避難住民などの救援、武力攻撃災害などへの対処や応急の復旧などの国民保護措置を行うこととなります。

国民保護等派遣

国民保護法の制定に伴い、防衛省は、武力攻撃予測事態などにおいて、自衛隊が国民保護措置を実施できるよう自衛隊法を改正し、新たな自衛隊の行動として、「国民保護等派遣」を自衛隊法第77条の4に新設しました。活動内容としては、自然災害時における「災害派遣」と変わるものではありませんが、武力攻撃事態等という環境下における活動であるため、武器使用に関する規定や、内閣総理大臣の承認規定などを設けています。なお、武力攻撃事態において防衛出動が命ぜられている場合や緊急対処事態に対する対処措置として治安出動が命ぜられている場合には、国民保護等派遣を命ずることなく、防衛出動や治安出動などの一環として、国民保護措置又は緊急対処保護措置を実施することとなります。国民保護等派遣に関する規定の概要は次のとおりです。

  1. 派遣の要請

防衛大臣は、都道府県知事からの要請を受けた場合において、事態やむを得ないと認めるとき、又は対策本部長から求めがあったときは、内閣総理大臣の承認を得て、国民保護措置を実施するため、部隊などを派遣することができます。

  1. 警察官などに準じた権限

国民保護等派遣を命ぜられた自衛官は、警察官などがその場にいない場合に限り、警察官職務執行法の避難等の措置、犯罪の予防および制止、立入、武器の使用の権限を行使することができます。

  1. 市町村長などに準じた権限

国民保護等派遣を命ぜられた自衛官は、市町村長などがその場にいない場合に限り、退避の指示、応急公用負担、警戒区域の設定、住民などに対する協力要請などの権限を行使することができます。

  1. 臨時部隊編成など

国民保護等派遣を行う場合に、必要に応じた特別の部隊の臨時編成、即応予備自衛官および予備自衛官に対する招集命令の発令を行うことができます。

  1. 緊急対処保護措置

緊急対処事態に係る措置に関しても、同様の規定を準用します。

国民保護のための防衛省・自衛隊の施策

国民保護に関する「基本指針」

平成17年3月、政府は国民保護法第32条に基づき、国民の保護に関する基本指針を策定しました。この中で、国民保護措置の実施にあたり留意すべき事項を明らかにするため、武力攻撃事態の想定として、

  1. 着上陸侵攻
  2. ゲリラや特殊部隊による攻撃
  3. 弾道ミサイル攻撃
  4. 航空攻撃

の4類型を想定しています。これらの事態は複合して起こることが予測されますが、同指針では、それぞれの類型に応じて実施される国民保護措置の特徴などを整理しています。(各類型の特徴および保護措置実施上の留意点については、防衛省・自衛隊の行動と併せて、次表参照)

事態の類型
基本指針による武力攻撃事態の想定
防衛省・自衛隊の行動
特徴
留意点
着上陸侵攻 ●広範囲、長期間を予想
●武力攻撃予測事態において、避難を行うことも想定
●事前の準備が可能であり、戦闘予想地域からの先行避難とともに広域避難が必要
●広範囲にわたる武力攻撃、災害の復旧が課題
【島嶼部への小規模な侵攻が行われた場合】
●基本的には武力攻撃排除のための準備と並行
●島民への島外への先行避難の支援(航空機や艦船による輸送等)を中心に対応
【本格的な侵攻が生起した場合】
●住民の先行避難を中心に、武力攻撃排除の準備に支障のない範囲で可能な限り対応
ゲリラ・特殊部隊による攻撃 ●事前の予測・察知が困難で突発的に被害が発生する虞れ
●被害の範囲は狭いが、大きな2次被害の可能性
●NBC兵器等使用の可能性
●攻撃当初は屋内に一時避難、その後安全措置を講じつつ適切に避難 ●攻撃の排除、他地域でのさらなる武力攻撃への警戒活動と並行
●被災地の住民の避難・救済支援や武力攻撃災害への対処を中心に迅速に対応
弾道ミサイル攻撃 ●発射された段階での攻撃目標の特定は困難
●短時間での弾着
●弾頭の種類に応じて、被害の様相・対応が異なる。
●迅速な情報等の伝達による被害の局限化
●屋内避難や消火活動が中心
●弾道ミサイル発射の情報を迅速に対策本部等に提供
●更なる武力攻撃への警戒活動と並行して、被災地の住民の避難・救援支援や武力攻撃災害への対処を中心に迅速に対応
航空攻撃 ●攻撃目標の特定が困難
●都市部やライフラインのインフラ施設が目標となることも想定
●攻撃目標を限定せずに屋内への避難等の避難措置を広範囲に指示 ●武力攻撃の排除措置のための部隊の展開等の準備と並行
●周辺住民の先行避難の支援を中心に対応

また緊急対処事態については

  1. 危険性を内在する物質を有する施設などに対する攻撃が行われる事態(原子力事業所の破壊、石油コンビナートの爆破など)
  2. 多数の人が集合する施設及び大量輸送機関などに対する攻撃が行われる事態(ターミナル駅や列車の爆破など)
  3. 多数の人を殺傷する特性を有する物質などによる攻撃が行われる事態(炭疽菌やサリンの大量散布など)
  4. 破壊の手段として交通機関を用いた攻撃などが行われる事態(航空機による自爆テロ、弾道ミサイル等の飛来など)

の4事態を想定しています。

防衛省国民保護計画

指定行政機関である防衛省は、国民保護法第33条第1項や基本指針に基づき、平成17年10月に国民保護計画を策定しました。

基本的考え方

自衛隊は、武力攻撃事態においては、主たる任務である武力攻撃の排除を全力で実施するとともに、国民保護措置については、これに支障のない範囲で、住民の避難・救援の支援や武力攻撃災害への対処を可能な限り実施します。

実施体制等
  1. 平素から、庁内の連絡調整体制、隊員の非常参集態勢などを整備します。
  2. 武力攻撃事態等においては、大臣は、必要に応じて開催される防衛会議の助言の下、必要な対処を指示します。そのため要員の増強などによる大臣の補佐体制を確立するとともに、部隊等において、国民保護措置の実施も想定しつつ、即応態勢を確立します。(隊員の勤務態勢の強化、装備品・資器材の点検・整備など)
国民保護措置の実施手続き
  1. (1)都道府県知事からの要請を受け事態やむを得ないと認める場合、(2)対策本部長の求めがある場合は、大臣は、総理の承認を得て、部隊等に「国民保護等派遣」を命令し、国民保護措置を実施します。
  2. 都道府県知事から支援依頼を受け必要と判断する場合などは、大臣は、「防衛出動・治安出動」を命ぜられた部隊等の全部または一部により国民保護措置を実施します。
自衛隊が行う国民保護措置の内容
  1. 住民の避難

必要な情報を収集・提供するとともに、関係機関と連携して、避難住民の誘導や運送を実施します。このほか、地方公共団体の長から、住民の避難のために自衛隊の駐屯地・基地内の通行などを要請された場合には、速やかに所要の調整・手続きなどを実施します。

  1. 避難住民などの救援

人命救助関係(捜索・救難、応急医療の提供など)を中心に、対策本部長などからの求めにより、医療活動の支援(傷病者の搬送など)や、必要に応じて生活支援関係の措置(炊き出し、給水、救援物資の輸送など)や安否情報の収集を実施します。このほか、救援のための、防衛省の施設の使用許可などを行います。

  1. 武力攻撃災害への対応

被害状況の確認(モニタリング支援など)、人命救助(捜索・救助、応急医療の提供など)、被害の拡大防止(周辺住民の退避支援、消火など)、NBC攻撃等による危険物質の除去などを実施します。このほか、生活関連等施設の安全確保の支援(指導・助言、職員の派遣)などを実施します。

  1. 応急の復旧

防衛省の所管する施設および設備の応急の復旧を行うとともに、都道府県知事などからの要請により、危険ながれきの除去や道路や滑走路の応急補修などの支援を行います。

緊急対処事態への対処

国民保護措置に準じた実施手続きや内容で緊急対処保護措置を実施します。