| 2012年4月27日(金) |
| 戦闘機操縦者への道 Part1 |
いよいよ新年度が始まりました。
入学、入隊の季節です。今年は桜前線もやや遅れ、入隊式にも桜が彩りを添えてくれました(花粉も終わりの時期となりうれしいです!)。
防衛大学校の入校式、自衛官候補生の入隊式、高等工科学校生徒の入隊式等に行かせていただき、凛々しい新入隊員等を目の当たりにし、とても頼もしく感じました。また手前みそながら、自衛隊の教育・訓練はとても素晴らしいと再認識しました。つい数日前に着校・着隊した若者が、その短い時間で基本動作を身につけ、入校・入隊の式典には、ご父兄も感心するほどの斉一な行動をとれてしまうのですから・・・。
さて、今回以降しばらくの間、戦闘機操縦者として歩んできた道についてお話しすることにしましょう。私の歩んできた当時の状況と現在では色々な相違・変化がありますが、なるべく現在の状況に沿う形でお話ししていきたいと思います。
まずは、戦闘機操縦者になるための適性検査や身体検査、操縦教育の概要についてです(輸送機、救難機等の操縦教育は別の機会にいたします。)。
【適性検査】
適性検査には、筆記式のものと実際に航空機に搭乗して行うものの2種類があります。
最初に筆記式の検査を受けることになりますが、機体の絵などを見て、それがどんな状況になっているのか、例えば、機種を下げて降下しているといったような、3次元空間の中でどういった状況にあるのかをイメージするものや、自分がどの方位に向いているのかをイメージするものなどで、面白い問題だなぁと感じたことを憶えています。
実際に航空機に搭乗して行う適性検査は、最初の操縦教育で使用しているレシプロ練習機の後席に乗って行います。計4回の飛行を行いますが、水平直線飛行、浅い傾きでの旋回や上昇・降下など基礎的な操作を自分で行います。毎回新しい内容のことがプラスされるのですが、前回のことに加えて次のステップに適応できるかといった適性を見ているのだと思います。実際のフライトコースでは、毎回新しい課目に挑戦し、評価されていくことになりますので、このような検査は当たり前といえば当たり前のことかもしれません。
【身体検査】
さて、身体検査ですが、「航空身体検査」という特別なものとなります。上空での任務に適するかという点が通常の検査に加えられます。上空では気圧が低く、上昇降下等の機動も頻繁に行うことになりますので、気圧の変化への対応能力や姿勢の認識能力が必要ですし、遠くで目標を発見し優位な状況を作為したり危険を回避するため(相対速度は少なくとも300km/時以上、戦闘時では2000km/時近くになり、この時1秒間で500m以上近付くことになります・・・)、視力も要求されることになります。
さて、身体検査や適性検査をクリアするといよいよ操縦教育に進みます。
【操縦教育の概要】
操縦教育は、まず「飛行準備課程」から始まります。
山口県は防府(ほうふ)北基地(新隊員教育等を任務とする防府南基地もあります。)に所在する第12飛行教育団において、約1ヶ月から6ヶ月の期間で、飛行訓練に臨むための地上準備教育を受けます。
年度の養成計画に基づき、被教育者はコース分け(学校で言うとクラスに相当)され、コースごと順次飛行教育に進むことから、最も早いコースでは約1ヶ月で準備課程を終わりますが、最終のコースは約半年後ということになります。
遅く入るコースの者から見ると、同期が航空機を操縦している姿に「先を越された」感が強く、自分も早く空を飛びたいと焦るのですが、この間はあまりプレッシャーのかからない飛行教育準備期間ですので、ゆったりと構えて準備に万全を期せば良いと思います。後で振り返れば長ければ長いなりに良かったと思えるのではないでしょうか。
さて、いよいよ飛行教育に臨むことになりますが、以降は、若干複雑な教育体系になっているので、「戦闘機操縦者になるまで」と題した図を参照していただけるとわかりやすいと思います。
【初級操縦(T−7)課程】
初級操縦課程は、山口県の防府北基地 第12飛行教育団又は静岡県の静浜基地 第11飛行教育団において行われる約6ヶ月の飛行教育です。
ここで乗る機体は、既に適性検査でお世話になった「T−7」初等練習機です。プロペラで推進力を得る機体で、初級操縦にもってこいの安定した飛行特性を持つ、最大速度約400km/時の機体です。
この課程では、外を良く見て自分の姿勢を把握しながら、基本的な機動や離着陸に主眼をおいた操縦訓練が実施されます。
細部は、次回お話しすることにしましょう。
【基本操縦前期課程】
基本操縦前期課程は、福岡県の芦屋基地 第13飛行教育団において、T−4中等練習機を使って行われる約6ヶ月の飛行教育です。
T−4は、あの「ブルー・インパルス」が使用している機体です(ブルーの機体は特別な改修が加えられています・・・)。この課程で初めてジェット練習機に乗ることになりますが、今までの手順のスピードでは全く間に合わず、速度の違いに大いに驚くことになります。
基本的な空中操作、編隊飛行、航法、計器飛行等を訓練していきます。
【基本操縦後期課程】
本課程は、静岡県の浜松北基地 第1航空団において、T−4中等練習機を使って行われる約7ヶ月の飛行教育で、修了すると晴れて「航空自衛隊パイロット」です。
前期課程に引き続き、編隊飛行、航法、計器飛行等を訓練するとともに、「事業用操縦士」の国家資格を取得するための準備を進め、受験します。国家資格を取得し、最終検定に合格すると、いよいよ憧れのパイロットとなります。
ひとりひとりに対し、第1航空団司令(空将補)から左胸に「ウィング・マーク」を付けていただきます。この時の感激は一生忘れられないものとなるでしょう。
【戦闘機操縦基礎課程】
本課程は、引き続き、浜松北基地 第1航空団において、T−4中等練習機を使って行われる約2ヶ月の飛行教育です。戦闘機による飛行教育に移るための準備の課程で、戦闘機の機動の基礎を学ぶことになります。
【戦闘機操縦(F−15、F−2)課程】
いよいよ実際に戦闘機に搭乗して行う飛行訓練となります。
F−15要員は、宮崎県の新田原基地 飛行教育航空隊における約9カ月の飛行教育を受けます。
F−2要員については、これまで宮城県の松島基地で教育を受けてきましたが、東日本大震災の影響で、現在は青森県の三沢基地及び福岡県の築城基地において約10ヶ月の飛行教育を受けます。
F−4要員は、戦闘機操縦課程終了後、宮崎県新田原基地 第5航空団において約4カ月の機種転換操縦課程を受けます。
これらの課程を修了すると、晴れて戦闘航空団に配属となり、実戦部隊の戦闘機パイロットとしての訓練を受け、実任務に就くこととなります。
飛行準備課程からこれまでの間、少なくとも31カ月、2年半余りの期間となります。
さて、今回は操縦者になるための適性検査や身体検査、操縦教育の概要についてお話してきましたが、一部の要員は、T−4による基本操縦課程に進む時期に、英語教育も含めた約21カ月の米空軍の操縦教育に進み、ウィング・マークを取得することも付け加えておきましょう。米留にもチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
次回は、初級操縦課程について少し詳しくお話していくことにしましょう。
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