観光特使の新・群馬紀行
第18回 烏帽子岳、天狗岩、三ッ岩岳 

 皆様、こんにちは。
新・群馬紀行第18回は、甘楽郡南牧村の大仁田ダム周辺に登山口がある「烏帽子(えぼし)岳」「天狗岩」「三ッ岩岳」を併せてご紹介します。なお、これらの山に登ったのは、昨年の秋から初冬にかけての頃です。


南牧村と多野郡上野村にまたがる標高1182mの烏帽子岳は、その名のとおり、烏帽子(平安時代以降、和装の礼服着装の際に成人男性が被った帽子)の様に尖った形をした山です。写真は、南牧川沿いに進む信州姫街道の南牧道(群馬紀行第36回参照)から分かれて支流の大仁田川沿いにダムに向かう道から見たところです。 

大仁田ダムは、大仁田川の上流に平成14年に建設された堤高54m、堤頂長163mの治水・利水用ダムです。三ツ岩岳の登山口は駐車場の直ぐ先にあり、烏帽子岳の登山口は左方向に川を渡って車道を600mほど進んだところにありますが、駐車場から頂上付近を見ることはできません。ここまで、東京郊外から上信越自動車道・下仁田IC経由で約125q、2時間10分ほどです。 


最初に、烏帽子岳をご紹介します。烏帽子岳の登山口から沢沿いの急登をほぼ真っ直ぐ登ること約1時間で甘楽郡と多野郡を南北に分ける「郡界尾根」に出ます。写真の郡界尾根の左(北)側が甘楽郡南牧村、右(南)側が多野郡上野村で、正面の木々の間に見えるのは郡界尾根上の「マル」と呼ばれる標高1220mのピークです。


木々に覆われて展望のないマルから一旦鞍部に急降下し、ロープを頼りに急な岩場を上り返したところが烏帽子岳の頂上です。写真は、切れ落ちた狭い頂上から北西の南牧村方向を見たところで、手前の峰に隠れて大仁田ダムは見えませんが、大仁田川の谷を挟んで正面の独立峰が三ッ岩岳、その後方に長野県境の山々が連なり、更に後方に浅間山が顔を出しています。 

 

写真は、北東の下仁田町方向を見たところで、下仁田ICから車で通って来た信州姫街道の南牧道や大仁田川沿いの集落が点々と見えています。正面には、上毛三山の妙義山や榛名山が見え、その右手には前橋市や高崎市の平野部が広がっています。また、紅葉が映える手前の山麓には烏帽子岳の特徴的な影が映っています。


次に、郡界尾根の先にある天狗岩をご紹介します。烏帽子岳から引き続き向かいますが、やせた岩稜が続く危険な尾根上のコースを避け、尾根の南側の山肌を巻く横道コースを選びました。その途中で、尾根上の「シラケ山」(1274m)というピークに安全に取り付くことができる道があるので往復しました。写真は、シラケ山の東方向で、正面に「天狗岩」を見下ろし、その後方に均整の取れたピラミッド形の稲含山(新・群馬紀行第4回参照)、左後方に西上州のマッターホルンと呼ばれる小沢岳(同第12回参照)が見えています。 

 

標高1274mのシラケ山は、岩だらけの狭いピークですが、郡界尾根上の最高峰で360度の視界が広がり、今回ご紹介するピークの中で随一の展望を誇ります。写真は、南東の上野村や神流町方向ですが、両神山、武甲山、双子山などの埼玉県の山々を見渡すことができます。

 


標高1180mの天狗岩は、いくつかの岩峰の総称で、山頂付近は複雑な地形になっています。小さな祠のある山頂は木々に覆われて視界はありませんが、山頂の北側に10mほど突き出た岩の上に設置された鉄製の展望台からは、北半分の視界が開けます。写真は、西方向に連なる郡界尾根で、左からシラケ山、マル、烏帽子岳です。



天狗岩への登山道は、上野村側の湯ノ沢トンネル入口手前から分岐する旧道上からも出ていますが、こちらは家族連れ向きで、烏帽子岳を経由して登るより楽に1時間程度で登ることができます。写真は、別の日にその登山道を登った時のものですが、天狗岩の基部にある「天狗の岩洞(がんとう)」という大きな洞窟で、別名「おこもり岩」とも呼ばれています。  


最後にご紹介する三ッ岩岳は、登山口は一つですが、直ぐ先で登山道が分岐しており、山頂を経由して約3時間で周回することができます。ただし、登山道が一部不明瞭な箇所があるため、慎重な行動が求められます。「竜王の里宮」が祀られた登山口から沢沿いに10分ほどの分岐を右手に折れ、滑り落ちそうな九十九(つづら)折の急登を進むと、「竜王大権現」が祀られた大きな岩峰の基部の洞窟に至ります。
 

更に急登を進んで明るい尾根道に出た後、見晴らしの良い岩場のピークを越えて登り返すと標高1032mの三ッ岩岳山頂です。写真は北西方向で、長野県境の山々やその懐に抱かれた南牧村最奥の集落を一望することができます。手前に見える中岩、北岩という岩峰を合わせて三ッ岩と呼ばれるようですが、中岩の上には石仏が建っています。

 

 

写真は北東方向で、烏帽子岳から写した5枚目の写真と似たような構図ですが、初冬のこの日は空気が澄んでいて条件が良く、右手のラクダのこぶのような形の鹿岳(かなだけ、群馬紀行第36回参照)や左手の奇岩怪石が林立する妙義山、その後方に横たわる大きな山容の榛名山の各ピークが鮮明に見えています。



写真は南東方向で、烏帽子岳から三ッ岩岳を写した4枚目の写真とは対照の構図になっています。谷を挟んで正面の鋭峰が烏帽子岳、その右後方にマル、左後方にシラケ山、天狗岩などの郡界尾根上のピークが連なります。

  

 

 

 (参考図書等:「群馬県の山」(山と渓谷社)、「群馬の山歩き130選」(上毛新聞社)、「ぐんま百名山」(上毛新聞社)、「私が登った群馬300山」(上毛新聞社)、観光パンフレット、現地の説明板等)