体力の必要性
「部下を統率し、時に過酷な環境において人命を左右するような判断を求められる幹部自衛官にとって、強靱な体力の練成維持は不可欠」1)であり、言い換えれば、「自衛隊の精強性の基本は体力であり、精神面の強さ、知的向上心も体力に負うところが大きい」ことから、体力向上を図り、知・徳・体の十分な総合能力を身につけた学生を幹部候補生学校へ送り出すのが防衛大学校の責務である」1)という認識のもと、本校では個人特性に考慮しながら、体系的な体力養成プログラムを実施しています。
体力養成プログラム
この体力養成プログラムを、体力向上パスウェイと呼んでいます。体力向上パスウェイの目標は、学生の「伸展性」「自主自律」を念頭に、体力測定を通じて自らの体力を正しく認識し、適切なトレーニングを実施しながら到達基準をもとに主体的に体力管理に励む学生を養成することです。
まず、入校直後の4月に体力測定を実施した後、科学的トレーニング方法の基礎知識を習得させながら、受験期間に衰えた身体を運動に慣れされると同時に新入生間のコミュニーケーション向上を意図して体育授業を実施します。その後卒業までの間に、毎年体力測定を実施しながら、全学共通教科である体育理論と体育実技では、基礎的運動能力を向上させるとともに基礎体力向上を意図した科学トレーニングの理論と方法を習得することができます。教養教育選択科目では体育理論で学んだことをベースに健康やスポーツ科学に関する発展的なテーマも学ぶことができます。訓練では、基礎体力の底上げと自衛官として求められる専門的な体力の養成を図ることができます。また、学生の自主性発揮の場である校友会活動では、学生自らが選択した種目を通して体力を向上させることができます。
そして、体力が低位な学生には、各種補習プログラムが用意されています。また、ケガなどでトレーニングの中断を余儀なくされた学生に対してもアスレティックリハビリテーションの専門家による患部のリハビリテーションおよび患部外トレーニングが行われ、体力の維持向上を図りながら安全に通常のトレーニングへと復帰できる体制を整えています。
体力測定
体力測定は、学校内にある陸上競技場、ラグビー場、アメリカンフットボール場、サッカー場等の運動施設で実施します。測定種目は、50m走、立ち幅跳び、ソフトボール投げ、懸垂(男子)、斜懸垂(女子)、1500m走(男子)、1000m走(女子)を採用しています。走跳投の動作を中心に、筋力、瞬発力、持久力などの能力を測定しています。
50m走
陸上競技の公認大会でも使用されているトラックで行われます。
瞬発的な走能力を測定します。
立ち幅跳び
立ち幅跳びでは脚パワーの能力を評価することを目的に行われます。
パワーとは、スピードと筋力を掛け合わせた能力のことです。
ソフトボール投げ
ソフトボール投げでは、投動作を用いて上半身のパワーを評価します。
懸垂
懸垂は男子のみが行う種目です。
これにより上半身の特に腕及び背部の筋持久力を評価することを目的としています。
斜懸垂
斜懸垂は女子のみが行う種目です。
腕及び背部の筋持久力を評価するために行われます。
1500m走(男子)・1000m走(女子)
陸上競技の公認大会でも使用されるトラックで行われます。
持久的な走能力を測定します。
体力向上は、一朝一夕に成しえるものではありません。体力を向上させるためには継続的かつ段階的に鍛錬を重ねていく必要があります。そのため本校では、体力測定における到達基準を入校時から、1学年、2学年、3学年、そして4学年と段階的に引き上げる仕組みになっています。また、偏りのないバランスのとれた体力を養成するため、各種目の合計点の評価だけではなく、各種目に最低基準を設定しています。
参考資料
1)「防衛大学校改革に関する報告書」
【文責:体育学教育室 教 授 山本 巧】