“「高所から落下する物体による衝突の危険性」で
テレビ局各社から取材を受ける”
〜 防大教官 大野教授と大型衝撃実験施設 〜

 防衛大学校システム工学群建設環境工学科の大野友則教授は、かねてから落石事故や航空機 ・車両の衝突事故による人命保護を目的とした構造物建設について研究を行っています。この 研究では、理論解析よりも実際に近い条件での実験が必要なため、平成10年に高さ30メー トルの大型実験施設が建設されました。

その概要については、「世界唯一の落錘式大型衝撃試験装置による耐衝撃構造の研究」という 内容で、防大タイムズ、平成15(2003)年7月号に掲載されています。ちなみに、本装 置は、防衛大学校のキャンパス全体に対する給水施設として建設された高さ50メートルの鉄骨塔(ま た、防衛大の校章と時計が外壁に取り付けられ、大学のシンボルタワーや時計台として親しま れている)の内部にあり、その建物内部30メートルの空間を利用して作られました。

実験では、最大重量3、000キログラムの鋼製錘を最大高さ26メートルから落下させるこ とができる大きなもので、室内でできる衝撃実験装置としては国内はもちろん世界でも最大規 模です。


落錘式大型実験装置の概要(防大タイムズ2003年7月号より)


写真1 実験室の1階部分

 この実験施設や大野教授がテレビ局に知られているのは、学会での研究発表や物が落ちる・ ぶつかるなどの衝撃にからむ事件・事故が発生したときのコメンテーターとしての存在です。 例えば、平成13年9月11日に発生した航空機テロによる米国ニューヨーク世界貿易センタ ービルの崩壊事件にともなうニュース報道がありました。このときに、テレビ局の取材を受け て大型衝撃実験施設を使った崩壊原因の実験検証がなされ、ニュース番組で紹介されました。

 そして、平成17(2005)年4月20日に高層マンション27階(地上77メートル) のベランダから78歳の老女が木製の植木鉢台などいろんな物を投げ落として殺人未遂容疑で 逮捕されたという事件が起きました。幸い人身事故にはなりませんでしたが、高所から落下す る物体による衝撃力の大きさと恐怖について、大きなニュース性があるとしてテレビ報道局が 動くことになりました。

そこで、この事件の翌日である4月21日には、防大に対してテレビ取材の依頼が相次ぎまし た。日本テレビの「ザ!情報ツウ800」、フジテレビの「FNNスーパーニュース」、フジ テレビの「とくダネ!」、TBSテレビの「イブニング・ファイブ」などです。

 事件での実際の高さは77メートルですが、装置の落下高さが23メートルしかとれないた め、実験では、水の入ったPETボトル、ゴルフボール、植木鉢、鉢置き台、コーヒー空瓶な どを23メートルの高さから落下させて計測した衝突時の衝撃力を77メートルからの条件に 換算して解説が行われました。

 例えば下の図は、高さ77mから重さ760グラムの植木鉢を硬い地面上に落としたときの 衝撃力を示したものです。衝突した瞬間(0.005秒以内)に1トンの衝撃力が発生していることがわかります。 もし植木鉢が人に当たっていたら・・・、このような衝撃力に対しては大変なことになるでし ょう。


植木鉢落下衝突時の衝撃力−時間関係

 この実験検証と解説は、全国版のテレビニュースとして即日放映され、多くの反響を呼んでいます。



    写真2 テレビロケ風景                 写真3 テレビロケ風景
(マネキンの頭上に植木鉢が当たる直前)     (植木鉢がマネキンの頭を直撃した後)

※防大タイムズ2003年7月号の記事はこちらから、ご覧になれます。 http://www.nda.ac.jp/ad/boudaitimes/btms200307/shock.htm