8月16日、防大「ヤラピーク遠征登山隊」
            6人全員登頂に成功


                                               防衛大学校 山岳部 4学年 須釜 隆

 『ヒマラヤ』それは山を登るものなら誰でもあこがれるものである.
  8000mを越える山々,真っ白な雪,真っ青な空… 我々を魅了するものは
無限にあった.だから単に自分自身の身をそこに置くだけでも人生観が変わる.
 今まで気付かなかったものを気付かせてくれる.
しかし,美しいものを見るにはそれなりのリスクを背負わなければならない.
  薄い空気や,雪崩,落石.しかしそんな危険要素があったとしても,自分の技術,
力を試したいと思うとなぜかわくわくしてくる.だから,山を登るのはごく自然の
事なのだ.
  しかし,防大山岳部は今まで海外遠征を行なった事がない.まさにゼロからの
スタートであった.この遠征は3年越しの計画であった.私が1年のころから
山の選定に入り,準備を進めていった.
 その前に本当に我々がヒマラヤの山を登るほどの力があるのだろうか.8000m
の山は無理に決まっている.でもヒマラヤは8OO0mの山ばかりではない.
 5500mぐらいの山ならば我々にもチャンスがあると思った.
こうして登る山はヤラピーク峰(5500m)に決定した.
 準備は食糧,装備,無線,医療など多彩にわたる.遠征費用は全て個人負担の
ため出来るだけ費用を抑えなければならない.
  しかし物は何とかできたとしても時間はどうにもならない.防大は時間的制約
が多く校友会に割くことが出来るのは平日のみであり、しかも2時間ぐらいである.
 また我々は遠征の準備と富士山の4回にわたる高所順応合宿(薄い空気に体を
慣らすため何度も富士山に登る)を常に同時進行させていかなければならない.
 準備では時間がないのが一番辛かった.時間がないからといって準備をおろそか
にすれば即遭難につながる.こうして準備は進んでいった.
 ネパールについてヤラピークの麓に行くまで約4日かかる.こうしてキャラバン
を終え,いよいよヤラピークにアタックした.
 ヤラピークの周りには7225mのランタンリルンなど神々しい山々ばかりであった.
 頂上に立ったときもちろん感動はしたが安全に帰る事を思えばまだ安心出来なかった.
 ヒマラヤでは上るときよりも下山する時のほうが事故が多く起こっている.
 事故が起これば遠征の意味はなくなってしまう.事故が起こって登頂するよりも,
登頂できずに無事故の方がいい.
 今回の遠征は防大山岳部創設以来初めてであり,全員登頂する事ができた.
 しかし一つの遠征として終わるのではなくさらに高いヒマラヤの山々に挑む
一つの階段である.だから我々は次の目標に向かっている.


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