<物理現象と数学> A

−力学的エネルギー保存則−
                                              応用科学群応用物理学科 助手 澤井真也

  今回は、力学を学ぶと最初に出てくる力学的エネルギー保存について微分積分を使って考えて
みましょう。簡単な様に1次元の運動を考えます。今、ある物体が時刻に位置を速度で通過
したとします(Fig. 1)。
  そしてこの物体は時刻に位置を速度となって通り過ぎて行きました。
  この時間に物体の速度がだけ変化したことになります。
  これは一体何によってもたらされたのでしょう。
  ニュートンによれば、“運動の変化は及ぼされる起動力に比例し、この力が及ぼされる直線の方向
に行われる”、となっています(運動の第2法則)。
  ここで運動という言葉は運動量を意味していて、質量と速度の積として定義されています。すると

質量はその物体に固有の量で時間的に変化しないとすると
というよく知られた式となります。
  ところで物体が動く間に力が働いて速度が変化したと
するとこの力がした仕事となります。
よってからにこの物体が移動する間に

だけの仕事がこの物体になされたことになります。ここで運動エネルギーで定義すると、
となり、力がした仕事により運動エネルギーが変化した、
つまり速度が変化したことになります。
ところで物体に作用する力が位置によって決まっているとしましょう。
つまり関数でと書けるとするわけです。そして
という新たな関数(ポテンシャルエネルギー)を定義します。
となる基準点です。
(重力の場合、、ばねによる力の場合、ですね)。
すると
式(2)と(3)をあわせるととなります。
これが力学的エネルギー保存と呼ばれるものですね。
さて、今物体に働く力が位置ではなく速度
によるとしたら、どうなるでしょう(摩擦力や空気抵抗がそうですね)。
仮にこの力が速度に比例してだとします。

となって、だったわけですから運動中にで運動エネルギーが散逸していく
(熱に変わるなどして)ことになります。
電磁気学で学ぶジュール熱がこれです。このように現実の世界では熱などの発生により、
運動している物体の力学的エネルギーは保存されない場合が多いと思います。
 しかしこの時でも注目している物体のみならず、その物体が走っている台や周りの空気など、
物体から発生した熱などをやりとりする全てのものを考えれば、その中ではエネルギーは保存
されています。
 例えば空気抵抗を受ける場合には、抵抗を受ける物体と周りの空気の分子のトータル
のエネルギーは保存されています。
  さて、もし図の物体が一旦を通り過ぎてに行ってからに戻った場合、これまでの議論は
どうなるでしょう。
  また、物体が壁にぶつかる場合は? 同様にして皆さん考えてみてください。

Fig. 1
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