防大かわら版VOL.98

2018年09月28日

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◯掲示内容一覧
・夏季定期訓練参加所感
 (各学年、陸・海・空各要員)

夏季定期訓練参加所感(陸上要員)

2学年 岡澤 誠 神奈川県立相模原高等学校(神奈川県出身)

我々2学年陸上要員は、防衛大学校、武山駐屯地及び相馬原演習場にて陸上要員として必要な基礎的動作及び行動要領について訓練を実施した。
 防衛大学校及び武山駐屯地においては、89式小銃の教習射撃や戦闘訓練を実施するとともに、相馬原演習場では校内や駐屯地ではできないような生地を活用した地図判読等の訓練を実施した。その訓練の中で、私が特に強く印象に残ったのは、歩哨・斥候訓練と40km徒歩行進訓練である。
 歩哨・斥候訓練では、歩哨(監視する壕を作り、敵の偵察や攻撃に対して警戒を行う者)と、斥候(隠密に敵陣地に接近し情報を獲得する偵察活動をする者)をそれぞれ訓練し、最終的にはそれぞれのグループに分かれて夜間に対抗方式の訓練を実施した。訓練当日は暗夜であったためほとんど視界が利かず、歩哨はいかに草の揺れる音や枝の折れる音に注意するか、一方斥候はいかに足音や装備の音を減らして接近するかが重要であり、非常に緊張感にあふれた訓練を実施することができた。
 次に40km徒歩行進訓練については、40kmの行程を定められた荷物や武器を携行し、集団で歩いて移動する訓練であった。真夏の訓練であるため、日中は気温が高く、少しずつ体力は削られ、深夜は睡魔との戦いになり肉体的・精神的にかなり疲弊したが、そんな過酷な状況下でも、同期と励ましあい最後まで完歩できた時は言葉では言い表せない達成感を得ることができた。
 今回の夏季定期訓練を通じ、将来幹部となるために肉体的・精神的に更に成長しなければならないと痛感した。この経験を糧に、より一層能力の向上を目指していきたいと感じた定期訓練であった。

訓練終了後(左が本人)

3学年 伊谷 優佑 滋賀県立膳所高等学校(滋賀県出身)  

 私は3学年の夏季定期訓練で、第37普通科連隊(信太山駐屯地)において部隊実習に参加した。約3週間、部隊の方々と実際に営内生活・訓練を共にし、幹部・曹士の方々の生の声を聞いた。その結果、防衛大学校の中では得られない貴重な経験をし、幹部として人として何が必要なのか、どこを目指すべきなのかについてことを考えることができた。
 特に西日本豪雨に伴う災害派遣の研修は強く心に残っている。自分の目で初めて被災地を見たとき、その惨状に私は打ちのめされ、現状に圧倒された。支援活動に来たはずなのに自然の脅威の前で自分は何もできないのではないかという無力感に襲われた。しかしながら、その状況下においても情報を集め冷静に指揮を執る現場指揮官や、炎天下にもかかわらず黙々と活動に取り組む曹士の方々がいた。その姿に尊敬の念を抱くとともに、もし自分が直面したとき同じように指揮を執ることができるのだろうかという不安を感じた。ただ、この3学年時において実任務を間近に研修することができたのは将来幹部自衛官になる者として、大きな糧になると実感している。今回の部隊実習をもとに体力・知識はもちろん人間性も磨いていき、幹部として人として成長できるように日々精進していきたいと思う。

格闘訓練の様子

4学年 湯川 竜太郎 熊本学園大学付属高等学校(熊本県出身)

じめじめした梅雨から、暑い太陽の日差しが照りつける夏へと変わる平成30年7月2日から27日にかけて、夏季定期訓練が実施された。
 4学年陸上要員は北海道の東千歳駐屯地を拠点とし、それぞれ2夜3日の連続状況である「分隊防御総合」と「分隊攻撃総合」を軸に訓練を行った。物事は準備8割実行2割という言葉に習い、万全の準備をして臨んだものの重装備で夜通し急勾配の山道を行進するのは心身共に疲弊した。行進における最終行程では分隊長に任命され分隊の指揮を執った。前任の同期達が自身も計り知れぬほど困憊しているにも関わらず、分隊員の体調を気遣い、長の仕事をこなしている姿を見ていたので分隊長がどのような振る舞いをすれば良いかは明白であり、最終的に私の所属する1分隊は1人の落伍者も出さず良好な状態で目的地に到達することができた。その後すぐに集結地点へ入り現地の安全化と歩哨を配備し、ノンストップで翌日の攻撃まで状況が続いた。
 私が本訓練で意識していたことは、「苦しい時こそ、一歩前へ出る精神」である。これは5班の訓練担当指導教官、塚脇1尉の要望事項であり、疲れていて苦しいときこそ、周りを見て助ける。皆がやりたがらないけれど誰かがやらないといけないことを率先してやる。これは防大生に求められている重要な資質だと考える。具体的に実践できたことは、訓練後の器材整備作業などで人員が求められた際、1番に名乗りをあげることであった。
 「苦しい時こそ、一歩前へ出る」今後これを習慣とし、残り少ない防大生活、短所は補い長所は伸ばすことで、国の役に立てる人材へと成長したい。
 最後に、訓練を支えて下さった訓練隊長、教官、助教をはじめとする全ての方々に感謝申し上げます。

陣地構築(奥の構築作業中が本人)

夏季定期訓練参加所感(海上要員)

2学年 宮川 明佳 私立九州学院高校(熊本県出身)

本定期訓練は、海上要員になって2回目の定期訓練であり、練習艦「しまゆき」で乗艦実習をした。
海上自衛隊の幹部候補生学校がある江田島市を見学した後に、基地のある呉市にバスで移動の予定だったが、直前に起こった西日本豪雨の影響で車両が通行できず、フェリーでの移動となった。呉港に着いてからも交通手段が途絶えていたため、徒歩で基地まで行くことになったが、広島での自然災害の様子を目の当たりし、海上自衛隊がどのように災害派遣を行っているのかを知れる貴重な機会となった。
 乗艦実習では、海上自衛隊の基本的な訓練を見ることができた。今まで私たちは、停泊している艦艇しか見たことがなかったため、訓練の様子を抽象的にしか考えることができなかったが、今回は、射撃等の訓練を見ることができ、具体的に考えることができるようになった。このことは、1人1人が任官後の将来の自分を考える良いきっかけになったと思う。
 また、艦内生活では乗員同士の気遣いを感じた。通路が狭いため、すれ違う際には少し肩を内に入れることや決まった人員で何週間も同じ空間を過ごすため、挨拶を大事にして、全員が気持ちの良い生活を送れるようにすることなど多くの部分で、将来必要となる人間性を学べた。
 まだまだ防大生として未熟な部分はあるが、今後の約3年間で基礎知識を習得し、人としても素晴らしい幹部自衛官になれるよう精進していく所存である。

乗艦実習(左が本人)

3学年 市丸 湧己 神奈川県立湘南高等学校(神奈川県出身)

第3学年海上要員の夏季定期訓練として、厚木航空基地での航空部隊実習及び護衛艦「とね」における乗艦実習に参加した。本訓練を通じ、海上自衛隊が国防の中核であることを深く認識するとともに、将来の幹部自衛官としての重責を自覚すること及び仕事の魅力を理解でき大変有意義なものであった。
 航空部隊の実習は初めてであったが、艦艇とは違った雰囲気であり、普段あまり学ぶことのない航空機の運用や最新の航空装備に関する研修を行い、とても新鮮な経験であった。厚木基地は、米軍と共同利用の基地であるため、基地内で米海軍の軍人と交流する機会があり、海上自衛隊と米海軍との密接な関係を肌で感じることができた。
 乗艦実習では艦橋副直士官としての業務や護衛艦の操艦の一部を実際に体験し、防衛大学校卒業後の幹部勤務がどのようなものであるかを実際に経験でき、有意義なものであった。特に自分の号令で実際に護衛艦を動かす操艦訓練はとても良い経験となるとともに、操艦者として責任の重さも強く感じた。
 乗艦実習中には、岩手県の宮古港に寄港し、地元の史跡を研修する機会を得た。各地の寄港地を楽しむことができることは、他にはない海上自衛官の仕事の魅力であると考えている。
 加えて、実際に艦艇勤務をする乗員の方々と交流し、経験豊富な海曹や防大卒の幹部の方と様々な話をする機会を得た。部隊の隊員との交流の機会がある定期訓練は、防大生にとって貴重かつ有益なものであることを痛感した。隊員との交流の中で、我々は将来の幹部自衛官として、強く期待されており、期待に応えるためより一層精進しなければならないと感じた。
 本訓練において一番の収穫は、実習課目を十分に予習し、課目を実践し、結果を反省するという3つのプロセスを実行できたことである。海上要員は学年及び1から4の所属大隊により、各学年4つの分隊に分かれている。私の所属する31分隊(3学年、1大隊)は術科向上に対する意欲が高く、乗艦実習が始まる前の訓練では操艦に関する予習を十分に行った。実際の乗艦実習では、他分隊の学生に比べて高いパフォーマンスを発揮できたと感じた。
 今年度末には分隊対抗の術科競技会が行われる。これからも本訓練で得た貴重な経験をもとに、競技会2連覇を目標として、31分隊の同期と一致団結し、互いにスキルを高め合っていけるようにしたいと考えている。

           クルーザーヨット訓練
          (右後方から2番目が本人)

4学年 野田 圭人 広島なぎさ高校(広島県出身)

今年の夏季定期訓練では、海上自衛隊初の全通甲板型護衛艦である「いずも」に乗艦することが出来た。そこでは普段の学生舎やアカデミック期間では得ることが出来ないたくさんの経験と知識を得ることが出来た。特に今回は自分と年の近い隊員と同じ作業をしたり、幹部が普段しないような作業に関わることで、自分が部下を持った際に現場では何をさせるのかを身をもって理解することができ、大いに参考となった。その中には初期消火訓練などの訓練の他に、おそらく我々の実習隊しか経験していないであろう食堂での皿洗いなども実施し、若い隊員の艦上での生活をより身近に感じることができた。これは将来部下を持った際の心情把握などに活かせると考えている。また、今回は2週間というこれまでの訓練より長い期間の乗艦であったため、多くの隊員と接する機会があった。母港が横須賀ということもあり、休日に会うことのできる隊員と知り合うことができ、人間関係を広げることが出来た。海上自衛隊は人と人との繋がりが重要な組織なので、この出会いが将来有意義なものになると考えている。

護衛艦「いづも」

夏季定期訓練参加所感(航空要員)

2学年 三井 杏郁 広島県立福山誠之館高等学校(広島県出身)

今回の2学年航空要員の夏季定期訓練では、大きく分けて、航空基地研修、校内訓練及び航空機運用総合訓練が行われた。
 航空基地研修については、私は美保基地に行った。そこでは、最新鋭の輸送機C-2に体験搭乗することができた。C-1よりはるかに大きい機体や着陸及び離陸の音がかなり小さいことに驚いた。基地研修ではその他にも、実際に基地の中の様々な部署を訪問し、職務内容について話を聞く事が出来た。将来自分がどのような職種につき、どのように働いていきたいかなどといった具体的なことを考えることができ、非常に有意義な時間を過ごすことが出来た。
 校内訓練及び航空機運用総合訓練では、4学年の学生の指揮下に入り訓練が進められた。まず、校内訓練では、航空自衛隊式の基本教練を行った。防衛大学校で1学年から習ってきたものと大きく異なるところがあり、最初は戸惑うこともあったが、4学年の学生の指導により、最終的に習得することが出来た。また、航空機運用総合訓練では、短い時間であったがグライダーで飛行することもできた。
 今回の訓練を経て、航空要員になれたこと、また将来は航空自衛官として勤務できることに希望と誇りを持つことが出来た。この訓練の経験を、これからの学校生活に活かしていきたい。

    パイロットスーツ試着(中央が本人)

3学年 宝田 一希 名城大学付属高校(愛知県出身)

夏季定期訓練で痛感したことがあった。それは「自分のできることは限られている」という事である。3年航空要員夏季定期訓練では主に戦闘航空団における部隊実習を行う。そこで私は理想の幹部自衛官像を固めようと考えていた。戦闘機の体験搭乗ではGが体に与える負担、整備補給群では戦闘機の燃料タンクを磨く作業、基地業務群では多くの機能を有する基地の運営の厳しさ、郊外訓練の白山登山では北陸地方の地域特性を知った。このような多くの研修を通して心に残る2つの言葉があった。それは飛行群司令の「苦労は買って出ろ」、とある空士長の「部下の意見も聞いて、それに流されるだけではなく自分の筋をたてたほうがいい」という言葉である。将来幹部自衛官として与えられた役割をこなし部下の監督もする。全員の意見を汲み取ることは容易ではない。そのため今苦労を敬遠して逃げるのではなく、多くのことを経験するべきだとこの言葉から感じた。そして、自分が考える理想の幹部自衛官像とは、誇りを持ち自分に厳しく部下に優しい人間だと導出した。
 最後に予算、人員、時間など限られた状況であることを痛感できたので、広い視野と高い先見性を持って今後の航空自衛隊に尽力していきたい。

白山登山(左から3番目が本人)

4学年 小山 大智 北海道栄高等学校(北海道出身)

4学年航空要員の夏季定期訓練では、主に航空機運用総合訓練と警戒管制部隊実習を行った。航空機運用総合訓練は、3年間の航空要員としての訓練の集大成であり、グライダーを用いて実際の航空団の編成を模擬した、架空の富士川航空団を運用する訓練である。4学年は主要な幕僚としてそれぞれの役職に就き、部下である2学年を活用しグライダーを運用した。この訓練を通じて学んだことは、幹部として運用の知識、指揮能力、部下からの厚い信頼及びフォロワーシップがなければ航空団を運用していくことは難しいということだ。航空団を円滑に運用出来るかどうかは最終的には指揮官の判断に委ねられ、指揮官の責任の重さと重要性を実感した。
 警戒管制部隊実習では、防空指令所及びレーダーサイトを見学した。防衛の最前線で日本の領空を常に警戒監視している姿を見て、国を守るということが非常に身近にあるということを実感した。
 この訓練期間を通じて、任官意志を固めると同時に幹部自衛官として自分に足りていない点について見直すことが出来た。将来の幹部自衛官として、任官までの約半年で何をすべきか何度も振り返って残りの防衛大学校生活を有意義に過ごしていきたい。

航空機運用総合訓練の様子

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