学校長挨拶

防衛大学校長國分良成の写真

自衛隊の活躍

2011年3月11日の東日本大震災以後、自衛隊の幹部養成を目的とした防衛大学校の存在感が増大しました。五百旗頭真(いおきべ まこと)前学校長が復興構想会議の議長として、多大な役割を果たされたことも周知のとおりであります。防大が注目されたのは、何といっても、被災地や原発事故の現場で、厳格で規則正しい行動の中にも献身的で人間的に活動する自衛隊員の姿を目にしたからだと思います。

最近の世論調査によると、自衛隊に対する好感度も大幅に上昇しております。ただ、私には今回の高い評価が、これまで自衛隊が地道に行ってきた活動が表に出てメディアに取り上げられたからであって、自衛隊からすれば、いつでもやるべきこと、普段からやってきたことを実践したにすぎないように思えます。ですから、本来もっと評価されてしかるべきであったことが、今回改めてクローズアップされただけのことであったようにも思えます。この震災で、我々が目撃した悲劇は枚挙にいとまがありませんが、その中にいくつか希望も見えました。それは東北地方の漁村や農村、自衛隊、警察、消防、海上保安庁、NGO、若者、これまであまり光をあてられなかったセクターが、日本社会を底辺から力強く支え、育っているという事実です。

自衛隊の役割

自衛隊の場合、本来の任務は国防です。近年、国防の課題はまさに我々の暮らす東アジアにおいて、ますます大きく複雑化しつつあります。大量破壊兵器の拡散、ミサイル開発などをはじめとした軍備増強、それに近年では海洋権益や領土をめぐる摩擦や紛争が多発化・深刻化しつつあります。自衛隊はそうした現実の中で、厳しい財政と人員の問題を抱えつつも、日夜努力し、今後はより機動性を備えた「統合機動防衛力」の充実を図ることを目指しております。

こうした活動は、普段、一般の国民の目には見えないものでありますが、目に見えないところで日本を守り、支えているのです。自衛隊はまた、PKO(平和維持活動)や人道支援、災害復興支援などの国際貢献の面でも危険と背中あわせの中で努力を重ね、国際的評価も上がってきております。近年注目される「人間の安全保障」といってもいいでしょう。こうした活動も一般の生活の中で注目されるわけではありませんが、時間をかけて地道に蓄積してきた成果であります。私は自衛隊がこのような歴史の中で培ってきた積み重ねの実績と資産が、いまようやく陽の目を浴び、評価されているのだと思います。

防衛大学校の理念と使命

防衛大学校は、昭和27年(1952年)、その前身となる保安大学校として誕生し、昭和29年に防衛大学校に改名し、翌30年に現在の小原台に移転して現在にいたっております。本校は第2次大戦後、吉田茂首相の発案によりその構想が始まり、吉田と親しかった小泉信三元慶應義塾長の推挙により槇智雄慶應義塾大学法学部教授が初代の学校長に就任いたしました。現在にいたるまでの本大学校の基礎を創り上げたのは、まさにこの槇智雄初代学校長の時代であります。彼の崇高な理念と強力なリーダーシップのもとで、本校は戦前と一線を画し、陸・海・空の幹部候補を一緒に教育するという民主主義時代の新たな士官学校としてスタートいたしました。

我々は、この実績と資産をさらに大きく確実なものとしなければなりません。有為で使命感に溢れるリーダーを確実に社会に供給し続けること、それが防衛大学校に課せられた我々の責務です。必ずしも、我々が社会を先導するわけではありません。我々の役割は、日本というかけがいのない祖国とそこに住む人々の独立と平和と安全を、最後の一線で守り抜くことです。一般の大学では、学生たちは大学生活を通して自分の人生を考え、それを就職活動などで生かそうとします。しかし実際には今日の就職難の中で、自分自身を見失いそうになることも多いのが実情です。防衛大学校はそれとはまったく異なります。卒業後の仕事、というより使命(ミッション)が明確であります。日本という国家と日本人の独立・平和・安全を守ることであります。これは崇高な使命であります。

実り豊かな学生生活

近年、防衛大学校は入学制度の多様化を進めることで、全国からさまざまなタイプの学生を集める努力を展開しております。また本校は、優れた施設・設備の中で充実した教育制度と学生生活を実現すべく、教職員が一体となって継続的に改革を行っております。厳しい各種の訓練や規律習得があることも事実ですが、多様な専攻と授業科目、少人数教育による徹底指導、充実した英語教育、遠泳・スキー・パレード・棒倒し・ダンスパーティなど、他校には見られないバラエティに富む学校行事、数多い海外派遣や短期留学の機会、多様な校友会(クラブ・サークル)活動等々、普通の大学生生活では味わえない充実感に満たされることは間違いありません。そして最後には、総理大臣と防衛大臣が参列する卒業式が待っているのです。

防衛大学校は東京湾と富士山を望む三浦半島・横須賀の小原台に位置しています。都心からそれほど離れていないにもかかわらず、自然環境が非常に豊かで、最高の教育環境といってもいいでしょう。すばらしい教育・研究・訓練施設の中で、優秀な教育スタッフ、真摯で熱情あふれる訓練教官、学校と学生への思いにあふれる職員に囲まれ、防衛大学校の学生諸君は必ずや生涯忘れられない青春時代を過ごすことになるでしょう。

今後とも、防衛大学校はこれまでの実績と経験の蓄積のうえにさらなる努力を重ね、日本の将来の平和と安全のために前途有為な人材を輩出することに邁進いたします。

防衛大学校について