教育改善への取組(FD活動)

FD(ファカルティ・ディベロップメント)活動について

FDとは、Faculty Developmentの略称であり、「教員が授業内容・方法を改善し向上させるための組織的な取組の総称」を示すものです。その意味するところは極めて広範にわたりますが、具体的な例としては、教員相互の授業参観の実施、授業方法についての研究会の開催、新任教員のための研修会の開催などを挙げることができます。(文科省HP「大学教員のファカルティディベロップメントについて」より抜粋)

このようなFD活動は、平成11年の大学設置基準改正では、努力義務規定として盛り込まれただけでしたが、大学院では平成19年度から、学部では平成20年度から実施が義務付けられています。これらはそれぞれ、大学院設置基準(昭和49年文部省令第28号)第14条の3、大学設置基準(昭和31年文部省令第28号)第25条の3を根拠としています。

防衛大学校におけるFD活動への取り組み

(1)防衛大学校における教育の特色

防衛大学校は、本科学生に将来自衛隊の幹部自衛官として必要な識見及び能力を与え、かつ伸展性のある資質を育成することを目的として設立され、以来、大学設置基準に準拠した教育、防衛学、自衛官が必要とする基礎的な訓練、規律ある団体生活等を通して、「広い視野を開き、科学的な思考力を養い、豊な人間性をつちかう」ことを教育の基本方針としています。特に、任官後直ちに役に立つ教育よりむしろ、将来の安全保障環境の変化に柔軟に対応できる21世紀の幹部自衛官にふさわしい伸展性を持った人材の教育に力を入れています。

本校では、建学以来上記教育理念に基づいた高等教育を行ってきており、卒業生が一般大学の大学院へ進学し学位を取得した例も少なくありません。この実績が認められ、昭和63年度入校生からは、卒業時に必要な単位を取得し、独立行政法人 大学改革支援・学位授与機構の審査に合格すれば、同機構から学士の学位を取得することができるようになっています。その後、学位取得の道は、修士号、博士号にまで広げられています。

(2)大学設置基準の大綱化とFD活動の始動

本校における学位申請・取得制度の発足と前後して、平成3年に改正された大学設置基準の大綱化により、教育科目区分が廃止され各大学が独自の教育制度を展開することが可能になる一方、各大学は自らの教育研究活動を点検し評価することが求められるようになりました。本校においても、この新しい設置基準に対応しつつ、本校独自の教育目標を達成していくために、「自己点検、自己評価に関する調査・研究を行い、新しい教育体系および教育方法の改善・向上策を検討する」という、FD委員会の前身ともいうべき教育向上推進委員会が発足しています。

この委員会の答申に基づいて、平成5年度から学生による授業アンケートの試行が実施され、平成8年度には一般教育に代わる総合教育(現在の教養教育の前身)が導入されました。このあたりを本校におけるFD活動の黎明期と考えることができます。当初の授業アンケートはマークシート用紙を用いて希望する先生だけが行うものでしたが、その後改善が重ねられ、現在の全科目 WEB入力方式に至っています。

(3)防衛大学校FD委員会の特色

教育向上推進委員会を引き継ぐ形でのFD活動は、教育委員会のもとで始まりましたが、教務部長を長とする教育委員会の下部組織での活動では限界があるため、平成17年度には、教育委員会から独立した形で、副校長(教育担当)を委員長とするFD委員会が設置されました。その主な理由は、本校の教育システムが、大学教育だけでなく、防衛学、訓練、学生舎生活などから成り立っていることにあります。この、独自の教育システムに対応したFD活動は他大学とは異なった意味で全学的に取り組む必要があり、本校のFD委員会には、教官のみならず自衛官である大隊指導教官や事務官も参加することが求められています。その後、平成21年度にはFDを主担当とする高等教育開発官が教授ポストとして設けられ、委員長・副委員長を補佐し、FD活動の企画運営、新着任教官に対する研修等を担当するようになっています。平成27年度からは、教養教育センターの発足に伴い、高等教育開発官ポストは同センター長に振替えられ、引き続きFD委員会の運営にあたっています(FD委員会組織図 参照)。

本校のFD委員会は規模が大きいため、日常的なFD活動は、いくつかのワーキンググループ(WG)を中心に行われており、FD懇談会の実施、授業アンケートの分析、学修状況調査、授業研究や評価会の実施、他大学におけるFD活動を参考にしたFD活動の企画・広報及び情報通信技術を利用したe-Learningの検討等を行っています。各々の課題を担当するWGは、WG長会議を通じて、相互に連携を取りながら活発に活動しています(FD活動への取り組み 参照)。

(4)FD活動と広報

平成12年度から校内の教職員を対象にしたホームページにFD活動の紹介をすることに始まり、平成15年度から紙媒体のFDニュースを発刊し、学校長の巻頭言、講演会等への参加報告、授業方法の紹介等が掲載され、現在も続いています。

本校のFD活動は、多くの大学がそうであったように、一部のFDに熟知した先生が関心の低い先生を啓蒙する時代から始まり、学生による授業アンケートの実施を経てFD活動が次第に普及し、現在はFD委員会に設けられた課題解決型のWGを中心とした組織的な活動へ進化しています。「継続は力なり」という言葉があるように、FD活動も持続させることが重要です。ただ、それが前例踏襲による形式的実施や儀礼的のものに陥ってはいけないことは当然のことです。FD委員会は、このような観点からもホームページ等によって新しい情報を発信し続けることは有意義なことと考えています。
今年度のFD委員会ホームページの大幅な改訂では、WGの再編成によって始まった、新たなFD活動の一端を紹介することにより、本校独自の教育システムに対応したFD活動に関心を持っていただければ幸いです。

本校のFD活動は多くの教官による長年の努力により充実してきましたが、まだまだ解決するべき課題はあります。これからも教育に直接携わる教官、教育をサポートする事務官及び学生の生活指導をする大隊指導教官が一体となって、将来の自衛隊を担う優れた防大生を育成してまいります。

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