海洋安全保障雑感~米国東海岸便り(No. 9)
-日米同盟の礎としての在日米軍経験者との絆-
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(コラム101 2018/05/28)
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5月19日(土)午後、ボストン郊外にある日本国総領事公邸は、子供たちの笑い声に包まれていた。
ボストン総領事主催 在日米軍経験者との集い
この日、総領事公邸で行われた集いは、在日米軍に勤務経験のある米軍将兵及びその家族の日本における苦労を労うとともに、在日経験で生まれた絆をさらに深めることを目的に行われたものであり、ボストンにおけるこのような行事は、昨年3月に続き2回目となる。
ハーレー(Jeffrey A. Harley)米海軍大学校長(海軍少将)をはじめ、約60名の学生や教官等及びその家族がニューポートから参加した。ハーレー校長自身も第7艦隊揚陸部隊指揮官などで日本勤務を経験するなど日米関係を知悉する米海軍提督の一人である。また、今回はCNO特別フェローとして米海軍大学に在籍する武居智久前海幕長とハーバード大学フェローとしてボストンに在住中の磯部晃一元陸自東部方面総監もそれぞれ夫妻で出席された。冒頭、主催者である道井緑一郎総領事より、歓迎の挨拶につづき、米海軍駆逐艦USSジョン・S・マケイン、USSフィッツジェラルド、米海軍輸送機C-2など、日本周辺海域における活動中の事故で犠牲となった米軍将兵に対する哀悼の言葉はすべての参加者の胸を打っていた。次いで、ハーレー校長より、日米双方の相手への「思いやり」の精神が米軍と自衛隊の強固な関係を維持してきた要因の一つであると述べて杯を上げ、集いが始まった。
今回の集いは、ボストン裏千家の協力による呈茶体験など、参加者に日本文化をあらためて体験してもらう一方で、会場のあちらこちらに飾られた、多くの参加者から提供された日本滞在中の写真に日本を懐かしむ話の輪が広がっていた。参加者の語る想い出の多くは、勤務地周辺や旅先における地元社会、地元住民との交流を懐かしむものであり、とりわけ日本に対する親しみの感情を彼らが家族で共有していることが口々に語られていたのが印象的であった。
地道な取り組みを太平洋の両岸で
在米日本国大使館及び米国の各地に所在する総領事館などでは、在日米軍経験者等との絆をより強く豊かにするために様々な取り組みが行われており、今回の集いもその一環である。
また、このほかにも、JUMP(Japan U.S. Military Program)という官民協力による交流活動が熱心に進められている1。国家安全保障戦略において、日米同盟は我が国の平和と安全及びアジア太平洋地域の平和と安定に不可欠な役割を果たすとともに、国際社会の平和と安定及び繁栄にもより重要な役割を果たしてきたとして、我が国の国家安全保障の基軸に位置付けられている。
日本各地で地元市民や自治体が、また米国各地において官民挙げて、このような取り組みが、日米同盟を過去から現在、そして将来へと確たるものとして継続させるための大きな礎となってきたことは間違いない。日米同盟といえばプロフェッショナルな最前線に目が向かいがちであるが、このような取り組みなくして真の同盟が機能しえないことも我々は忘れるわけにはいかないだろう。(米海軍大学連絡官、米海軍大学インターナショナル・プログラム教授 山本勝也)
(本コラムに示された見解は、幹部学校における研究の一環として発表する執筆者個人のものであり、防衛省、海上自衛隊の見解を表すものではありません。)
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1 JUMP, https://www.jumprogram.org/