海洋安全保障雑感~米国東海岸便り(No.1)
   ~ -中国の海上民兵(ミンビン)-

  • (コラム088 2017/03/09)

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       筆者は昨年9月より米海軍大学連絡官としてニューポート(米国ロードアイランド州)に赴任し、あわせて米海軍大学インターナショナル・プログラム教授として、米海大CMSI1、I-FWS2をはじめとする各研究グループと共に研究活動に従事しています。
       このコラムは、それらの活動を通じて得た海洋安全保障に関する雑感をご紹介するものであり、従前の「防衛駐在官の見た中国」シリーズの続編として今後、随時投稿させていただく予定です。

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    中国の民兵(ミンビン)は民兵(みんぺい)にあらず

       これまで人類の歴史上、「民兵(Militia)」と呼ばれてきたものには様々な形態がある。これらは一般的には国家が保有する正規の軍隊、すなわちプロフェッショナルな軍隊ではなく、地域の共同体や政治グループ、民族・宗教団体などによって作られた武装組織を意味することが多い。とりわけ、日本語で「民兵」という場合は、非国家主体が組織した軍事力をイメージすることが一般的である。

       英語で言う「Militia」の場合、国家が有する正規の軍事力・防衛力ではない「市民軍」といったイメージである。また、米国の一部の州が保有する州独自の防衛力(State Defense ForceやNaval Militia)3を「Militia」と呼ぶことがあるが、その場合の「Militia」は、「民兵」と言うよりも「州軍」といったニュアンスが強い。米海軍大学CMSIのエリクソン(Andrew S. Erickson)教授とケネディ(Conor M. Keneedy)研究員も、米国の一部が保有するNaval Militiaと中国の海上民兵との違いについて詳しく言及している4
       したがって、中国語でいう「民兵(Min-Bing、ミンビン)」と日本語でイメージする「民兵(Min-Pei、みんぺい)」、また英語でいう「Militia」がそれぞれ意味する内容は必ずしも一致していない。

       以前、中国の海上民兵について触れた際5にも述べたとおり、中国における「民兵」の位置づけは、地域共同体や一部の政治勢力による武装組織でもなければ、少数民族や宗教勢力による武装組織でもない。中華人民共和国の国内法令に明確に規定された、「中国人民解放軍現役部隊及び予備役部隊、人民武装警察部隊」と並ぶれっきとした「中国の武装力量(armed forces)」である。繰り返すまでもないことではあるが、一般的に日本語では「armed force(s)」を「軍隊」と訳している。

       当然、彼らが「民兵」として任務に従事する際には、定められた軍服(階級章などに「民兵(Ming-Bing)」を示す「MB」が記されているほか、人民解放軍の軍服に類似)等、国際法に則った所要の標章を着用して活動する必要がある。戦闘員が「自己と文民とを区別する義務を負う」ことは、人類がこれまでの歴史を踏まえて築き上げてきた国際社会における人道上の約束事であり、中国の国内法に基づけば、武装力量たる「民兵」は戦闘員である。

    襟に「MB」のついた階級章が見える。<br />(「中国広播網」より)

       民兵の中でも、本稿の主題である海上民兵について、中国海軍も彼らが、「兵と民との二つの身分を併せ持つ存在であり、(中略)海洋権益防護のために行動し、軍事的プレゼンスを強化するとともに、対立の強度や敏感度をコントロールし、有事の際には真っ先に使用するとともに全過程において用いられる」軍事力であると期待している6

       歴史的に見ても、昭和49年(1974年)、パラセル諸島周辺で中国と南ベトナム(当時)が武力衝突した際に、中国の海上民兵(トロール漁船)は中国海軍と共に戦闘に参加し、南ベトナムの軍艦を攻撃するなど、海軍部隊の一部として使用されてきた事実がある7

       指揮関係の点から見た場合、中国の民兵は、中央軍事委員会の指導下にあり、具体的には中央軍事委員会・国防動員部が人民解放軍予備役部隊とともに民兵部隊建設を担当している8。行政上は、中央軍事委員会と国務院(国防部)の双方からの指導の下に国家国防動員委員会9が民兵に関する事務を担当している。
       また、地方、草の根レベルでは、人民解放軍の地方機関である省軍区及びその下部機関である軍分区が、それぞれに対応する地方政府の人民武装部(中央政府の国防部のようなもの)と協調しつつ、民兵部隊を動員し、教育・訓練しており、部隊編成上、人民解放軍現役部隊とは別の組織となってはいるものの、中央軍事委員会及び各レベルの人民解放軍地方機関によって、人民解放軍の支援部隊(「解放軍の助手」10)として組み込まれた組織であることが明確である。

       したがって、中国の国内法で定められた「民兵」は、一般的な日本人がイメージする「民兵」とは全くの別物であり、中国の正規軍(彼らは「国軍」ではなく「党軍」だと言う)の一部であることを忘れてはならない。
       中国の民兵は、人民解放軍現役部隊及び同予備役部隊、人民武装警察部隊に続く、「第3軍」であり、海上民兵は人民解放軍海軍、中国海警11に続く、「第3の海軍力」である。強いて呼ぶならば「ミンビン(Min-Bing)部隊」、「海上ミンビン部隊」とするのが最も適切ではなかろうか。

       中国語と英語及び日本語によるイメージの差について、これまでCMSIのメンバーとも繰り返し議論してきたが、最近、エリクソンが海上民兵を「PAFMM(People’s Armed Forces Maritime Militia)」あるいは「Third Maritime Force」と呼称し始めたことは、その意味でとても心強い変化である。

    海上民兵の現状

       近年、人民解放軍、とりわけ海軍は装備の近代化、活動海空域の拡大など急速な発展を遂げており、中国海軍の活動を取り上げた中国国内における報道はいずれも勇ましく自信にあふれた内容のものばかりが目に付くようになってきた。
       一方で海上民兵に目を転じてみると、まだまだ中国中央の目指す姿には程遠いものであることが彼らの報道から見えてくる。

       例えば、平成28年(2016年)4月、「海上民兵を組織的に運営することは、陸上の民兵に比べて多大な困難を伴っている様子である。海上民兵の主たる構成員である漁民は1年のうち8か月近くを漁労のため遠洋に出かけるとともに、それらの民間船舶は漁政や交通、海事等多くの関係部門から多様な影響を受けていることから民兵として人員を管理し、訓練することの難易度は高い。そのうえ、装備も不十分であり、必要な訓練を行うことも困難である。さらに訓練も旧態依然としており、陸軍関係の訓練が多く、海軍関係は少なく、また洋上訓練に精通した教官も少なく、教育能力が低い。漁民たちの民兵への訓練参加意欲も低い」として、人民解放軍の機関紙「解放軍報」は、海上民兵の現状について問題を提起していた12

       そのため、中国海軍は海上民兵が真に海軍戦略の重要構成要素であると位置づけて、海上民兵(海軍民兵13)の「正規化」のために、訓練の指導指針である「海軍民兵軍事訓練と審査大綱」14を改訂し、海上民兵に対する教育訓練の改善を図っている15
       こうした問題意識の下、海上民兵に対する教育訓練の在り方も具体的に変化が始まっており、例えば、南海艦隊司令部が所在する広東省湛江市では、これまで陸上における訓練や机上での訓練ばかりであったものが、2016年になって以降、海軍の指導及び海軍と共同する洋上における訓練が増えてきたことに対する民兵自身の素直な驚きを報じている16

       

       しかし、一方でそのように提起された問題のほとんどが解消できぬまま、新たな年(2017年)を迎えている様子も散見される。例えば、浙江省温州市蒼南県の海上民兵分隊では、船員の多くの知識水準が低く、軍の専門家が海洋情勢、海戦理論や政治教育などを講義しても関心を見せないとして民兵部隊の指導者が困惑している状況を告白している17

       また今年2月には、東海艦隊のお膝元でもある浙江省寧波市の海上民兵部隊が、洋上訓練への召集命令に対して、当該期間が漁業繁忙期であったことことから、ほとんどの漁民が召集に応じなかったため、やむを得ず漁村の「老船頭」の協力によってようやく参加者を得たなどの苦労話が報じられている。同じ記事では、漁業会社の転廃業や漁民が定住せず移動するために連絡が取れず、さらに年間の大部分を洋上で漁業活動に従事するため、平素の教育管理ができないなどの問題を再び挙げている18

       以上の記事は、海外向けのプロパガンダではなく、中国国内向けの報道である。したがって、海上民兵の近代化を進めるうえでの国内の意識改革のための宣伝報道の可能性があるとはいえ、ほぼ現状を描いているものであるとみることが適当であろう。

    中国の海上民兵には二つの異なる民兵がある: 「プロフェッショナルな海上ミンビン」

       エリクソン達が明らかにしたのは海南省の海上民兵である。
       その一つは、三亜市に拠点を置く「三亜福港漁業水産実業有限公司」による民兵部隊である。当該企業は、三亜市の特別予算を活用して、民兵司令部の建設、武器の操作を含む教育訓練及びレーダー、通信機材等の装備の近代化を充実させて、①2009年に米海軍「インペカブル」に対する中国海軍、中国漁政19と連携したハラスメントの実施。②2012年のフィリピンやインドネシアの沿岸警備隊艦船に対する中国漁政の電波妨害を含むハラスメントに連携。③2014年に中越両国の係争海域に派遣する石油プラットフォーム20の護衛を広州軍区(当時)及び海南軍分区の支援を得て実施してきたことを明らかにしている21
       「インペカブル」に対する海上民兵によるハラスメントについては、APCS22の教授でもあるオドム(Jonathan G.Odom)米海軍中佐が詳細な研究成果を報告している23

    「インペカブル」に接近する中国漁船。<br />(「ロイター通信」より)

       その第二は、平成27年(2015年)に設立されたパラセル諸島に拠点を置く「三沙漁業発展有限公司」による民兵部隊である。当該企業は南シナ海における民兵建設のための企業であり、高額の報酬で退役軍人をリクルートし、教育訓練するとともに、武装可能な新造の大型鋼製漁船を大量に調達していることを紹介している24

    「(「海南省政府」HPより)

       中国がどのような思想・政策の下に軍事力・防衛力を整備しようと、他国がそれにとやかく言う話ではない。しかし、ここで国際社会が懸念しているのは、これまで挙げてきた海上民兵の他国へのハラスメントや攻撃が、一般の漁船や漁民と区別のつかない状態で行われていることにある。さらに、そうした非戦闘員か否かの識別の難しい彼らが、海軍や法執行機関の艦船よりもさらに前線において活動しているというところにある。こうした活動はかつての「便衣兵」を想起させるものであり、無辜の漁民達をも巻き添えにしかねないリスクを伴っている。

       いわゆる武装グループが割拠する中東やアフリカの一部地域と異なり、我が国はじめ中国、韓国など統治能力の高い国が占める今日の北東アジアにおいて、その上、大陸から離れた洋上や離島において、高度な戦闘力を行使する非国家主体が活動することはあり得ない。したがって、大陸から離れた洋上や離島において高度な戦闘力を行使する集団は、国家の持つ防衛力・軍事力以外にあり得ないと言っても間違いではない。
       平成26年(2014年)のウクライナでは、正規軍並みの武装をした強力な戦闘力を備えた「グリーンマン(Little Green Men)」25の存在が国際社会で問題となったが、「ブルーマン(Little Blue Men)」26とも呼ばれるプロフェッショナルな戦闘力を有しながら漁船や漁民の振りをする者たちは、たとえその正体を隠していても、実態は中国のプロフェッショナルな海上民兵以外にはありえないと言っても過言ではないだろう。
       「インペカブル」に対する海上民兵によるハラスメントについては、APCS22の教授でもあるオドム(Jonathan G.Odom)米海軍中佐が詳細な研究成果を報告している。

       昨年3月、筆者は中国共産主義青年団、四川省政府及び人民解放軍が他国の知的財産権を蔑ろにしている事例を紹介し、国際社会のルールを尊重しない中国指導層の姿勢について指摘した27

    「中国空軍の制服で日米のアニメキャラクターが2016年新年あいさつ。<br />(「中国軍網」より)

       そして今年は、中国中央テレビ局軍事チャンネル(八一電視)上に、中国海軍陸戦隊を応援する日本のアニメキャラクターが登場した。

    「(「八一電視」HPより)

       中国は、国民に対しては「依法治国(法律に基づいて国を治める)」を、人民解放軍に対しては「依法治軍(法律に基づいて軍を管理する)を繰り返し訴えている。その一方で、このように平時において国際社会のビジネスルール(知的財産権の保護)を軽視した対応を国家レベルで平然と公開している。
       上記のような人道を無視した軍事力(ミンビン)の用法は、我々からすれば現行国際法に対する挑戦とも見えなくもないが、平時のビジネスルールですら軽視する中国にとっては、有事における国際法などそもそも眼中にないのかもしれない。

    中国中央は中国漁民(似非海上民兵)をコントロールできるのか

       一方で、中国国内の報道を見ていると、「民兵」に対する全く別の懸念が浮かび上がってくる。
       中国の民兵制度では、部隊は地域のコミュニティや企業、職業を単位として編成されている。ここで懸念として挙げられている点は、改革開放経済の下、経済発展と格差が急速に拡大する今日の中国社会において、民兵部隊を組織している一部の企業が、法令を無視して、民兵要員や民兵の装備を企業の「私兵」として扱っているという報道である。

       例えば、湖北省荊州軍分区において、ある民間企業が、地方政府や人民解放軍の地方機関との経済的関係を有利に進めることを目的に民兵組織を企業内に設立したこと、あるいは召集訓練に参加する自社の職員に、訓練よりも民兵組織内での営業活動を優先させていたこと、また別の観光企業では、民兵部隊を観光アトラクション、マスコットとして使用していること、さらに別の企業では、民兵部隊を当該企業の施設や企業主の財産を守る警備員として使用していること、また別の企業では、企業を訪問する賓客に対するサービスの一環として民兵部隊を儀仗兵代わりに利用する等、多くの実例を具体的に挙げて問題提起した記事が昨年11月の「解放軍報」で報じられ、法律の順守と民兵制度の厳格な運用について警鐘を鳴らしている28

       こうした動きが果たして湖北省だけの特異な問題であるのかどうか。法令やルールに対する態度、国家及び中国共産党への忠誠心といった点において、沿岸部の中国人民(漁民等)が、内陸部の中国人民と比較して特段に優れているとは想像しがたい。逆に、平素、本土を離れた洋上において無数の小さな漁船に分かれて活動する漁民に対して、党による政治教育を徹底することは陸上のそれに比べて困難であることを考えれば、海上民兵の現状も想像に難くない。

       平成24年(2012年)12月、韓国の排他的経済水域において法執行活動を行っていた韓国海洋警察に対し、違法操業中の中国漁民が抵抗して、韓国の海洋警察官を刺殺した事件が起きた際、中国政府が無法な漁民の行動に手を焼いていることを中国共産党系日刊紙「環球時報」が明らかにしたことは、以前のコラムでも紹介したとおりである29

       中国は世界最大の漁民グループを有し、海岸線も長く、人口も世界一である。しかし、中国近海の漁業資源は枯渇し、近年の操業エリアは公海へと拡大している。漁民は漁具を購入するための元手を回収しなければならない。漁民に漁業規律を厳格に守らせることは中国近海といえども難しく、中国政府が宣伝教育により彼らに黄海上の中韓漁業協定を厳格に順守させることは容易なことではない。漁民はコストを回収し利益を上げるために様々なことを考えており、考慮の中には漁民自身による身の安全も含まれている。(中略)中国人は一般的に韓国人よりも貧しく、中国人の教育レベルは韓国人ほど高くない。中国の漁民に外交官のような品の良さを求めることは現実的ではない」30

       あれから既に4年が経過したが、その後も韓国近海において中国漁船の攻撃的かつ無法な対応は繰り返されており、中国政府が彼らを十分にコントロールできているとは到底考えられない。

       湖北省の事例と同様に、もし漁民が、あるいは水産業者や海事関係企業が、海上民兵として装備された武器や船舶等を、自分たちの私利私欲、企業利益のために「民兵」と偽ってその実力を勝手に行使したらどうなるのか。行使の対象が中国以外に向けられた場合にどうなるのか。そうした懸念を打ち消すことは現状ではなかなか難しい。また不幸にして懸念が現実になった場合、果たして中国政府は適切に彼らをコントロールして事態の悪化を防ぐことができるのだろうか。こうした懸念を拭うこともまた難しい。

       民主主義国が持つ選挙や世論調査といった国民の意思を図る術のない中国のリーダーシップは、日本や欧米の政治指導者以上にネット世論等に敏感に反応するのが最近の例を見ていると、彼らが感情的な世論におもねるあまりに事態を悪化させる虞がないとは言い切れない。

    まとめに代えて

       本稿では、中国の民兵が日本語でイメージする民兵(みんぺい)とは全く異なる存在、中国における正規の軍事力の一部、民兵(ミンビン)であることをまず確認した。その上で海上民兵部隊の整備が必ずしも順調に進んでいないことを紹介するとともに、南シナ海ではそれとは全く異なるプロフェッショナルな「民兵」が中国の海軍力の一翼として活動していることに言及した。またその一方で、漁民に対する中国政府のコントロールへの懸念についても言及した。

       南シナ海で活動が確認されているプロフェッショナルな海上民兵は、その行動態様が国際社会のルールを遵守したものであるか、挑戦的であるのかは別として、少なくとも中華人民共和国の国家意思に従って活動していることに疑いの余地はない。したがって彼らの活動が引き起こす国際社会との摩擦や紛争は、相手国にとっては予期しない、不測の事態であるかもしれないが、少なくとも行使主体である中国にとっては計画された意図的なものであることは間違いない。

       一方、私利私欲に基づく中国の不法漁民たちに起因する国際社会との摩擦や紛争は、相手国のみならず、中国政府にとっても予期できない、双方にとって不測の事態となりうる危険性をはらんでいる。ある意味で最も不確実で予測困難な虞を有するものである。

       我が国を含む中国の周辺諸国にとって、海上民兵の存在は極めて厄介なものであるが、そうであるからこそ、より客観的に海上民兵の実像を把握し、理解を進めていく必要がある。またその上で、国際社会のルールに挑戦する彼らの行動に対しては毅然とした対応で応えていく必要がある。

       我が国は約150年前に近代国際社会に向けて開国した後、失敗を含む様々な経験を重ねることにより、国際社会のメンバーとして名誉ある地位を占めるためには、国際社会のルールを尊重し遵守することが重要であることを繰り返し学び、今日の地位を築いてきた。
       世界第2位の経済大国、軍事大国となった今日の中国が、国際社会のルールを無視して失敗すれば、それは周辺諸国のみならず国際社会に深刻な影響を及ぼす恐れがある。中国が無用な過ちを犯す前に、我々は中国に対して、国家指導層のみならず洋上で活動する漁民に至るまで、既存の国際法に対する理解と遵守について繰り返し訴えていかなければならない。

    (米海軍大学連絡官、米海軍大学インターナショナル・プログラム教授 山本勝也) 

     本コラムに示された見解は、幹部学校における研究の一環として発表する執筆者個人のものであり、防衛省または海上自衛隊の見解を表すものではありません。

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    1 CMSI(China Maritime Studies Institute): 米海軍大学における中国研究グループ。 https://www.usnwc.edu/Research---Gaming/China-Maritime-Studies-Institute.aspx
    2 I-FWS(Institute for Future Warfare Studies):米海軍大学における未来戦研究グループ。 http://www.mod.go.jp/msdf/navcol/i-FWS/news/2017/0207.html
    3 State defense force, Naval Militai:大統領令によって連邦軍に編入され米国の軍事力として活動することがある、州兵(National Guards)とは別の組織であり、連邦には属さず州のみに属する小規模な(一部の州では歴史的・名誉的な)軍事力。
    4 Andrew S. Erickson and Conor M. Kennedy, "Irregular Forces at Sea:‘Not Merely Fishermen—Shedding Light on China's Maritime Militia'" , CIMSEC, November 02 2015, http://cimsec.org/new-cimsec-series-on-irregular-forces-at-sea-not-merely-fishermen-shedding-light-on-chinas-maritime-militia/19624, 平成29年2月27日アクセス。
    5 コラム056「海上民兵と中国の漁民」参照(リンク
    6 中国海軍網「发挥好海上民兵优势 打好军民融合攻坚战(海上民兵の長所を発揮し、軍民が融合して手堅く勝ち抜く)」http://navy.81.cn/content/2016-10/31/content_7334774.htm, 平成29年2月28日アクセス。
    7 Andrew S. Erickson and Conor M. Kennedy, "TRAILBLAZERS IN WARFIGHTING: THE MARITIME MILITIA OF DANZHOU", CIMSEC, FEBRUALLY 01 2016, http://cimsec.org/trailblazers-warfighting-maritime-militia-danzhou/21475, 平成29年2月27日アクセス。
    8 中国軍網「加快构建具有中国特色的新型国防动员体系(中国の特色ある新型国防動員システムの加速度的構築)」、http://www.81.cn/jwzb/2016-03/09/content_7125943.htm、平成29年2月26日アクセス。
    9 国家国防動員委員会:トップである主任は国務院総理(首相)である李克強(LI Ke-Qiang)が務め、副主任は楊晶(YANG Jing)国務院秘書長とともに常万全(CHANG Wan-Quan)国防部長が就き、事務局長に相当する秘書長には盛斌(CHENG Bin)中央軍事委員会国防動員部部長が充てられている。
    10 中華人民共和国兵役法第36条。
    11 コラム071「中国海警は第2の中国海軍」参照(リンク)、コラム059「国家海洋局と中国海警局」参照(リンク
    12 中国軍網「新形势下海上民兵建设要冲破哪些思想藩篱?(新情勢下の海上民兵建設にとって突破すべき思想とは)」http://www.81.cn/mb/2016-04/20/content_7071612.htm、平成29年2月26日アクセス。
    13 海軍民兵:海上民兵について、時折、「海軍民兵」と表記する記事を目にすることがあるが、用法の区別については明らかではない。
    14 海軍民兵軍事訓練と審査大綱(海軍民兵軍事訓練与考核大綱):内容は確認できていない。
    15 杨春江、刘栋「中国海军民兵:我助战舰搏大洋中国海軍民兵、軍艦を助けて広大な海洋へ)」『中国民兵』2013年3月号、pp.18-20。
    16 中国国防部網「回首这一年,感受军改带来的新变化(この1年を回顧、軍改革の新たな変化に感動)」http://www.mod.gov.cn/mobilization/2016-12/21/content_4767360_5.htm、平成29年2月26日アクセス。
    17 中国軍網「民兵思想政治教育如何契合年轻人口味?(民兵の思想政治教育は如何にして若者の口に合わせるか)」http://www.81.cn/mb/2016-12/22/content_7418655_2.htm、平成29年2月26日アクセス。
    18 中国新聞網「海上民兵动员征召:行政命令曾不如“船老大”(海上民兵動員召集:老船頭は行政命令に勝る)」http://www.chinanews.com/mil/2016/11-28/8076635.shtml、平成29年2月26日アクセス。
    19 中国漁政:日本の水産庁に相当する組織。法執行部隊(艦船)は平成25年(2013年)に他の海上法執行機関とともに国家海洋局(中国海警局)に統合された。
    20 石油プラットフォーム(オイル・リグ):海底の石油を掘削・生産するための海上構造物。
    21 Andrew S. Erickson and Conor M. Kennedy, "China’s Daring Vanguard: Introducing Sanya City`s Maritime Militia", CIMSEC, NOVEMBER 05 2015, http://cimsec.org/chinas-daring-vanguard-introducing-sanya-citys-maritime-militia/19753, 平成29年2月27日アクセス。
    22 APCS:Daniel K. Inouye Asia-Pacific Center for Security Studies
    23 Jonathan G. Odom, "The True’ Lies’ of the Impeccable Incident: What Really Happened, Who Disregarded International Law, and Why Every Nation (Outside of China) Should Be Concerned", Michigan State journal of International Law, Vol 18.3.
    24 Andrew S. Erickson and Conor M. Kennedy, "Riding A New Wave of Professionalization and Militarization: Sansha City's Maritime Militia", CIMSEC, September 01 2016, http://cimsec.org/riding-new-wave-professionalization-militarization-sansha-citys-maritime-militia/27689, 平成29年2月27日アクセス。
    25 Little Green Men:ウクライナ危機において活動していた武力集団。ロシア軍の特殊部隊であるとも言われている。
    26 Andrew S. Erickson and Conor M. Kennedy, "Directing China's 'Little Blue Men' : Uncovering the Maritime Militia Command Structure", Asia Maritime Transparency Initiative, https://amti.csis.org/directing-chinas-little-blue-men-uncovering-the-maritime-militia-command-structure/、平成29年2月28日アクセス。
    27 コラム077「国際社会の既存のルールと中国」参照(リンク
    28 解放軍網「民兵绝不能成为企业主看家护院的“私兵”(民兵は企業を守る私兵には決してならない)」http://www.81.cn/mb/2016-11/03/content_7340663.htm、平成29年2月26日アクセス。
    29 コラム056「海上民兵と中国の漁民」参照(リンク
    30 環球網「社评:韩国无需证明自己“不容欺负”(社説:韓国は『虐待していない』と自己証明すべし)」http://opinion.huanqiu.com/1152/2011-12/2262389.html、平成29年2月26日アクセス。