海上自衛隊幹部学校

交通案内 | リンク | サイトマップ | English

HOME /米海大ナウ!/009

 米海大ナウ!

 新たな視点を提供:現代戦略フォーラム

(009 2015/06/24)

米海軍大学   客員教授
本校戦略研究会(SSG)
1等海佐    下平   拓哉

   毎年6月の卒業式目前、米海大においては「現代戦略フォーラム(Current Strategy Forum)」が実施されます。1949年に始まったこのフォーラムは、政府関係者や著名な学者、高級軍人らが米海大に集い、最新の安全保障問題に関して議論を交わす場ですが、すべてが米海大の学生のために実施されます。複雑化する安全保障環境を踏まえ、学生に新たな視点を提供することを目的として、様々な分野から最新の安全保障問題を扱うスペシャリストが招かれます。
   第66回目となる今年のフォーラムのテーマは、「競争環境下における戦略と海洋パワー」であり、台頭する国家の現在・過去・未来、21世紀の諸問題、挑戦を受ける海洋ドメイン、経済と国家安全保障、米海軍の役割と任務等を扱いました。米海軍作戦副部長のミッシェル・ハワード(Michelle J. Howard)大将の他、戦略予算評価センター(CSBA)のアンドリュー・クレピネビッチ(Andrew F. Krepinevich Jr.)所長、ディフェンス・ニュースの最も影響力のある100人やフォーリン・ポリシー誌の世界の頭脳トップ100にも選出されているピーター・シンガー(Peter W. Singer)博士、新アメリカ安全保障センター(CNAS)のパトリック・クローニン(Patrick M. Cronin)所長等、錚々たるメンバーが参加しました。

   【米作戦副部長ハワード大将の基調講演】
   陸、海、空、宇宙、サイバー、さらに電磁波(EM)スペクトル等の全領域における自由なアクセスの重要性とそれに対する挑戦についての紹介がありました。そこでは、特に直面する課題としてサイバー戦を掲げ、サイバー戦は伝統的な封鎖(Blockade)と同様の意味合いがあるとし、シミュレーションと訓練の重要性を強調していました。
   https://www.youtube.com/user/usnavalwarcollege


【アンドリュー・クレピネビッチCSBA所長】

   フォーリン・アフェアーズ誌2015年3/4月号の「島嶼防衛(Archipelagic Defense)」で今話題のクレピネビッチ博士は、リスクが増大しリソースが減少するという現在の安全保障環境下において、いかにして戦略を立てるべきかという問題提起をしました。
   そこでは、戦略的縦深性をどのように確保し、また同盟国とどのような協力をしてゆくかが重要としました。
    また、今後ますますテクノロジーの重要性が高まることを指摘し、そこでは戦略を決定するリーダーシップの重要性とその決定を迅速に実現化してゆくスピードの必要性を強調し、これらを理解できる戦略家の育成が急務としました。

   Andrew F. Krepinevich , “How to Deter China : The Case for Archipelagic Defense,” Foreign Affiars, March/April, 2015.
   https://www.foreignaffairs.com/articles/china/2015-02-16/how-deter-china

【ピーター・シンガー博士】
   近未来の第3次世界大戦の様相を描いた『ゴースト・フリート(Ghost Fleet)』で有名な戦略家シンガー博士は、これからは、ハイテクとローテクの戦争になるとしました。そして、戦争における勝利を目的とするのであれば、戦争を終わらせることができるのは何かを考えなければならないと問題提起しました。今後は、サイバーをはじめSFの世界に出てくるようなテクノロジーが重要であり、SFのようなフィクションを越える可能性があるものとして、アイデアすなわち、人的要素が重要になることを力説していました。