海上自衛隊幹部学校

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 留学制度

留学生便り

韓国合同軍事大学校

3等海佐 竹澤 慶展

 

(学校概要)
    私は現在、大韓民国のほぼ中央である大田広域市に所在する合同軍事大学校の合同基本正規課程に留学しています。課程期間は、平成30年1月から平成30年12月までの約1年です。海上自衛隊としては、合同軍事大学校の前身である海軍大学の時代から毎年留学生を派遣しており、私で22代目になります。

    合同軍事大学校は、わが国における各自衛隊幹部学校に相当し、合同基本正規課程が指揮幕僚課程に当たり、韓国の陸海空軍士官及び各国陸海空軍の留学生(中佐から大尉)に対する統合教育を行っています。2011年12月にそれまで各軍所属であった陸海空軍大学を統合し、国防部直轄機関として創設されました。校名にある「合同」とは日本における「統合」であり、統合教育に重点を置いているのが特徴です。合同軍事大学校には、年間を通じていくつもの課程が存在しますが、私を含めた外国人将校は合同基本正規課程を履修しており、この課程が合同軍事大学校の主たる課程と言えます。

    合同基本正規課程の主たる目的は、戦術部隊の指揮官/参謀の育成、自軍(海軍)作戦計画作成/遂行の専門家の育成、他軍(陸空軍)作戦計画/教理/武器体系の熟知、統合/連合作戦遂行能力の体得、統合性と連携した国防政策及び国防企画体系への理解です。現在の合同基本正規課程は第7期目であり、従来の海軍に対する勉強を基本として、「合同(統合)」という要素を非常に重要視して教育が行われています。


【合同軍事大学校:上段左から5番目が筆者】

(教育内容等)
     本課程は48週のカリキュラムで構成されており、大きく共通統合、自軍教育、統合教育の3つのセクションに分けることができます。共通統合は戦時における統合の基本概念の理解と研修による他軍の現状の体験を、自軍教育は自軍についての作戦及び戦術の専門家の育成を、統合教育は情勢に応じた統合及び連合作戦遂行能力の育成をそれぞれ目的としています。共通統合及び統合教育は陸海空軍将校混成のグループで行われ、自軍教育は海軍及び海兵隊に分かれて行われます。

    教育方法は、40名程度のグループで講義を受け、個人またはグループでの課題作成、15名程度のグループでのセミナー形式の発表及び討議という構成を基本として実施され、外国人将校も韓国人将校とともに同じ教育を受けますが、課目及び教育内容によっては、外国人将校のみで班を編成する場合もあります。

    教官は大佐、中佐クラスの現役武官、退役後軍務員として勤務している教授、さらに国家安全保障機関等の専門家等であり、それらの教官がまず、それぞれの項目に対して講義を行います。その後、個人研究又は討議を中心としたグループ研究を行い、研究成果を発表し、その成果について全体で討議が行われます。教務は、討議を重視しているのが特徴であり、討議を通じて学生将校間で知識を共有するとともに、理解を深めることが狙いとなっています。なお、退役軍務員の教授の中には、北朝鮮との散発的な武力衝突に関わった経験のある教授もおり、貴重な体験談を聞くこともできました。

(外国人将校等)
    本課程の学生将校数は陸軍219名(外国人将校19名を含む)、海軍(海兵隊を含む)60名(同16名)、空軍72名(同13名)です。このうち外国人将校については27ヶ国から48名が留学しており、細部は以下のとおりです。また、年間を通じて、各種の行事や家族帯同の研修等が計画されており、外国人将校とその家族には、韓国という国の文化や歴史に対する理解を深めてもらいたいという学校側の強い意気込みが感じられます。 具体的には、38度線付近の研修から、地元の野球チームの観戦ツアーまで幅広い研修に参加することができています。

     また、外国人将校1人に対して円滑な学生生活のために2人(民間、学生)のスポンサーが付き、公私両面においてサポートしてくれます。

派遣国 人 数 内 訳
アメリカ 3 海・空・海兵隊
イラク 1
インド 1
インドネシア 3 陸・海・空
ウガンダ 1
ウクライナ 1
ウズベキスタン 4 陸(2)空(2)
エジプト 1
エチオピア 1
カザフスタン 1
カンボジア 3 陸・海・空
キルギスタン 1
サウジアラビア 1
タイ 2 陸・海
中国 3 陸・海・空
トルクメニスタン 1
ナイジェリア 1
ネパール 1
パキスタン 2 陸・空
フィリピン 4 陸・海・空・海兵隊
ブラジル 1
ベトナム 3 陸・海・空
ペルー 1
マレーシア 1
メキシコ 1
モンゴル 3 陸・空・海兵隊

    外国人将校同士はとても仲が良く、自国を出て韓国で母国語以外の言語を用いながら共に学ぶ同志として、公私ともに深い付き合いをしています。世界各国から集まった彼らと話をしながら、文化や宗教、歴史観、国際情勢に対する認識、日本への関心の違い等、毎日大きな刺激を受けています。なお、最近は日本旅行に対する関心も高く、実際に夏季休暇に旅行に行く学生には、最大限の支援活動をしているところです。

(所 感)
    日本と韓国の関係は、「近くて遠い国」と表現されることがあります。お互いの外見的な姿や顔が似ているにもかかわらず、お互いの考えを理解しきれないために、このような言葉で表現されるのかもしれません。簡単に友好関係を築けるような関係ではないというのが、日本人の一般的な認識かもしれませんが、私が実際に韓国人に接した限りでは、個人レベルでは、大きな関心を寄せていることは強く感じます。現在、韓国人の中では、日本旅行が大人気であり、2017年に韓国人の8人に1人が日本に旅行に行ったという統計もあります。また、現時点で約半年間の滞在経験においても、日韓の話題には事欠かず、韓国人の方から、好意的に話題を振られることも多いです。具体的には平昌オリンピックにおけるスピードスケート女子500mでの小平奈緒選手と李相花選手の友情や、ロシアで開催されたFIFAワールドカップでの日本チームの活躍等を賞賛する韓国人も多くいました。

    また、現在朝鮮半島情勢は大きな転換期を迎えていますが、そのような状況の中で、韓国人の学生や留学生と頻繁に意見を交換するのは、日本の安全保障の一翼を担う自衛官として非常に勉強になっていると感じています。北朝鮮が対話に応じる前には、日米韓の三カ国の連携の重要性を強調する意見をよく耳にしましたが、4月27日の劇的な南北首脳会談、6月12日の米朝首脳会談を経て、韓国の学生やメディアの意見にも変化が見られるようです。現時点(2018年6月)では、米韓合同軍事演習の中止が決定され、演習に参加経験のある学生からは、今後の先行きが不透明だというような意見もありました。

   このような東アジアの安全保障環境が激動する中で、それを肌身に感じられる場所で様々な経験ができることは非常に有意義だと感じています。韓国とは複雑な関係ではありますが、実際に人と人が顔を合わせて交流することにより、相互理解は深まるものだと考えます。20年に渡って続く留学制度の意義の一つはここにあるのだとも感じています。日本の安全保障環境は、周囲からの影響を抜きにして考えることはできないので、韓国との関係も継続して考えていく必要があるものと考えます。

    最後に、このような素晴らしい環境の中で学ぶ機会を与えていただいたことに、感謝申し上げ、本学校で学ぶ残りの期間で、知識見分を深めることは勿論のこと、お互いの理解を深めていけるように引き続き努力したいと思います。