海上自衛隊幹部学校

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 戦略研究会

 「IAMDについて」

(コラム120 2018/08/31)

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   去る本年3月16日、小野寺防衛相がBSフジのプライムニュースに出演し、日本の安全保障上無視できない脅威として、弾道ミサイルに加え、巡航ミサイルや無人機にも対応していく必要があり、そのため重要になるのはIAMD(Integrated Air and Missile Defense:統合防空・ミサイル防衛)である旨の発言があった。
   米統合刊行物(Joint Publication)によればIAMDは戦域レベルの枠組みで実施される防空諸作戦CA(Counter air:対航空)とMD (Global Missile Defense:地球規模のミサイル防衛)、HD(Homeland Defense:母国防衛)及びGS(Global Strike:地球規模の攻撃)等を同期させ、シームレスに移行させようとする試みであり、対象は有人・無人航空機、ミサイル及び野戦砲等である。戦域レベルのCAはOCA(Offensive Counter Air:攻勢対航空)とDCA(Defensive Counter Air:防勢対航空)に分かれ、航空機の離陸前後/ミサイルの発射前後における破壊や被攻撃時の被害極限措置等を含み、物理的破壊に加え、サイバー、電子戦等のあらゆる手段を駆使して実施される1
   そして、IAMDを装備面で実現するものとして、注目されているのが米海軍のNIFC-CA(Naval Integrated Fire Control – Counter Air:海軍統合射撃管制-対航空)であり、その中核をなすのがCEC(Cooperative Engagement Capability:共同交戦能力)とSM-6である。CECは射撃管制に必要な大量のデータをビークル間で共有し、SIAP(Single Integrated Air Picture:単一統合航空状況図)を作成するセンサーネットワークであり、SM-6はSM-2ER(Extended Range)ブロックⅣをもとに終末誘導部を戦闘機に搭載されているAMRAAM(Advanced Middle Range Air to Air Missile)のアクティブシーカーに換装したもので、イージス艦のレーダー探知圏外のミサイル、航空機及び艦艇に対処可能であるとともに2015年から2017年の間に3度にわたり、弾道ミサイルのターミナルフェイズにおける迎撃試験に成功している2
   日本におけるIAMDに関する取り組みとしては、平成27年11月に当時の中谷防衛相が太平洋空軍司令官と意見交換した3ことを皮切りに平成28年度に「将来の統合防空の在り方に関する調査研究」が実施され4、本年2月にはこれまでBMD特別訓練として実施していた訓練を日米共同統合防空・ミサイル防衛訓練として実施した5
   装備面では、本年7月に進水した7隻目のイージス護衛艦「まや」にCECが搭載され、来年度以降に本格運用する航空自衛隊の早期警戒機E-2Dにも搭載を検討中との報道もある6。また、平成30年度予算でイージス護衛艦に搭載するためのSM-6の試験用弾薬を取得する7
   仮にE-2D及びイージス・アショアにCECが搭載され、イージス艦及びイージス・アショアにSM-6を搭載すれば、IAMDは我が国の国土防衛をさらに堅固なものとするであろうことは容易に想像できる。
   しかしながら、我が国に対する脅威は対地攻撃のみではない。IAMDの一翼を担い、日本周辺海域のどこへでも機動的に展開し、敵のミサイルを捜索する目であると同時に迎撃ミサイルを発射する母体ともなり得る艦艇部隊も当然の事ながら敵の主要な攻撃対象となり得る。そして、これを喪失すれば、国土防衛の能力も大きく削がれることは明白であり、艦艇部隊のCAすなわち艦隊防空にも十分に配慮する必要がある。
   艦隊防空の現状について考察するとイージス艦の高い部隊防空能力は世界中に知れ渡っており、もし仮に敵が護衛艦部隊に攻撃を企図した場合、これを超える飽和攻撃を仕掛けてくることは想像に難くない。また、対艦弾道ミサイル(DF-21D)及び対艦攻撃能力を有する可能性がある中距離弾道ミサイル(DF-26)については終末速度がマッハ10に及ぶとみられるとともにMaRV(Maneuverable Re-entry Vehicle:機動性を有する再突入弾頭)化されている8。イージス艦とE-2DをCECで接続し、イージスシステムのレーダー探知圏外にある発射母体(航空機及び艦艇)または発射直後のミサイルをSM-6で破壊できれば、すくなくとも飽和攻撃による護衛艦部隊に対する被攻撃リスクは格段に低くなると考えられる。
   今後IAMDの導入を推進していく中で、艦隊防空への効果も十分に把握した上で、限られた兵力を適切に配分し、国土防衛とのバランスを取ることが重要である。

(海上自衛隊幹部学校運用教育研究部 作戦研究室 井口 龍二)

(本コラムに示された見解は、幹部学校における研究の一環として発表する執筆者個人のものであり、防衛省、海上自衛隊の見解を表すものではありません。)

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1 米国におけるIAMDには攻勢作戦も含まれるが、小野寺防衛相の発言にもあるとおり、我が国は安全保障上の脅威に対応するためにIAMDを導入するものであり、攻勢作戦は検討の対象外と考えられる。
2 Raytheon SM-6 Missile SOPHISTICATED MULTI-MISSION WARFARE https://www.raytheon.com/capabilities/products/sm-6
3 防衛省・自衛隊:中谷防衛大臣による米太平軍司令部等訪問(概要) http://www.mod.go.jp/j/press/youjin/2015/11/24_gaiyo.html
4 我が国の防衛と予算―平成29年度概算要求の概要
5 平成29年度日米共同統合防空・ミサイル防衛訓練について www.mod.go.jp/js/Press/press2018/press_pdf/p20180215_01.pdf
6 日刊工業新聞 電子版 2018年(平成30年)8月27日月曜日 https://www.nikkan.co.jp/articles/view/00474083
7 我が国の防衛と予算―平成30年度概算要求の概要
8 Chinese Anti-Ship Ballistic Missile Development and Counter-intervention Efforts https://www.uscc.gov/sites/default/files/Erickson_Testimony.pdf