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 戦略研究会

 「対機雷戦装備品としての水中無人機(UUV)について」

(コラム117 2018/07/25)

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   さる平成30年6月28日読売新聞(夕刊)の一面には次のような報道があった。「機雷探知 無人潜水機で-初の国産 離島奪回を想定-」1
   内容としては、海底の機雷を捜索する初の国産無人潜水機を2019年度に購入し、22年度に就役予定の新型護衛艦に導入するというものである。
   記事によると、この無人潜水機は、遠隔操作の無人ボートと組み合わせて運用され、海底に設置された機雷を探知、位置情報を水上の無人ボートに送り、ボートから爆雷を発射し、機雷を処分する仕組みであり、無人潜水機の試作機は開発済みとのこと。離島が占拠された場合の奪回作戦時、離島の周辺に機雷を設置された場合、護衛艦や機雷を処分する掃海艇が接近できないため、このような無人装備品による運用を想定しているものと考えられる。
   今年の5月に出された「新たな防衛計画の大綱及び中期防衛力整備計画の策定に向けた提言」2の具体的方針には、防衛力の質・量の拡充の中に、ISR機能の強化が挙げられており、従来の護衛艦、哨戒機等の警戒監視アセットのほかに、持続性のあるISRアセットとしての無人機の活用が提言されているが、特に、水中環境では音響の世界が主流であり、水中無人機には、水中での音波伝搬の各種制約を極力低減し、かつ、複雑な環境に適応できる自律性と機能性を持たせことが重要となってくる。
   水中無人機(Unmanned Underwater Vehicle:以下、UUVと呼称)は、ケーブルを使用して遠隔操縦するROV(Remotely Operated Vehicle)とは異なり、自律的な運用が可能であり、母艦や水中作業員が機雷に接近することなく探知できる。取得した海底データは装備品の性能にもよるが、ある程度の識別が可能な画像が得られ、対機雷戦における人的なリスクを大幅に軽減可能とする装備品と言え、その使用する用途に応じて各種バリエーションが存在する。
   機雷の捜索手段として活用されている代表的な装備品としてはREMUSシリーズがある。現在、海上自衛隊において採用されているUUVはREMUS-100及び600であり、運用形態に応じて活用されており、米海軍も同様にMk-18MOD1及びMOD2と呼称され活用されている。
   新聞報道に紹介された試作品は、防衛装備庁が「自律型水中航走式機雷探知器の研究試作」の事業において開発した試作品であり、合成開口ソーナーを搭載し、低周波・高周波の合成開口ソーナーのハイブリッド運用により、低周波部は埋没したターゲットを、高周波部は海底に露出したターゲットをそれぞれ分担して探知できる機雷探知用UUV3である。この試作品が装備品として採用されれば、現有のUUVと比較して高解像度の画像が得られ、オペレータによるターゲット認識度が向上するとともに、これまで探知が不可能であった埋没ターゲットの探知が可能となることから、対機雷戦能力の飛躍的な向上が見込まれる。
   対機雷戦用UUVでは、オペレーションに必要な「迅速性」「確実性」「安全性」の各要素を可能な限り満たせる機能と母艦の限られたスペース内での狭隘かつ荒天下における取扱い、搭載性及び整備性を考慮した機能を備えるのが望ましく、今後さらに運用実績を重ねつつ、オペレータ要望を反映した更なる機能改善が望まれる。
   将来の機能改善・発展において重要となる技術要素については、
   ・ 高度な自律性
      (プランニング、航法精度、信号処理、水中データ通信、不測事態対応)
   ・ 持続性(補給システムとの連接)
   ・ データ分析、評価能力(収集データ前後処理、比較、評価)
   ・ 関連システムとの連接
      (母船からの発進・回収、データ通信、指揮支援システムとの連接)
   ・ その他(メンテナンスの簡易化 等)
が挙げられる。
   防衛装備品の他にも、同じく海底を探査する無人潜水機に関する報道4もあり、海洋を仕事の場にする各種無人潜水機は、用途にあわせてその機能や規模が多岐にわたる。その性能を実現する先進技術は日進月歩であり、例えば、データ通信においては、海洋研究開発機構により水中光通信の実証試験もなされており、実用化に至れば、水中IOT実現に大きく寄与するものと期待されている。5
   また、近年AIやディープラーニングを活用した治安対策ツールとして活用されている画像認識は、水中ターゲットの自動類識別の精度向上が期待できる技術であり、水中領域におけるゲームチェンジャーとなりうる技術ではないだろうか。
   無人機を活用する主たる目的は、Danger・Dull・Dirtyと言われる作業を人に代わって無人機が行うものであり、危険かつ単調な作業を長時間にわたり実施する対機雷戦におけるUUVの位置付けは、まさに人的リスクを低減でき、かつ、作業効率と精度の向上に大きく寄与できるメリットがある。
   冒頭の提言にある長距離打撃力(スタンド・オフ・ミサイル等)の導入6に関する防衛大臣の記者会見7では、「わが国の防衛に当たる自衛隊員が相手の脅威の圏外から対処できるようにすることで、自衛隊員の安全を確保しつつ、わが国を有効に防衛するために導入するもの」との発言もあり、人的リスク低減と隊員の安全確保に直結する装備品の所要はますます重要視されるものと考えられる。
   陸・海・空のみならず、宇宙・サイバー・電磁等の領域といった新たな領域を含めた将来の戦闘様相において、特に水中領域においても技術的優位性を獲得するための水中無人機の活用について、具体的な検討が必要な時期に来ているのではないだろうか。
   今後とも、水中を活躍の場とする無人潜水機の発展と、これをサポートするその他の無人装備品、関連支援施設の実現を可能とする様々な技術開発から目が離せない状況である。

(幹部学校運用教育研究部 作戦研究室 北 貴之)

(本コラムに示された見解は、幹部学校における研究の一環として発表する執筆者個人のものであり、防衛省、海上自衛隊の見解を表すものではありません。)

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1 読売新聞夕刊1面 2018年6月28日
2 自由民主党政務調査会(平成30年5月29日)「新たな防衛計画の大綱及び中期防衛力整備計画の策定に向けた提言~「多次元横断(クロス・ドメイン)防衛構想」の実現に向けて~」
3 防衛装備庁HP「技術シンポジウム2017(発言要旨)」12項
http://www.mod.go.jp/atla/research/ats2017/img/ats2017_summary.pdf
4 読売新聞1面 2018年6月25日
5 国立研究開発法人海洋研究開発機構2017年10月2日プレスリリース
http://www.jamstec.go.jp/j/about/press_release/20171002/
6 自由民主党政務調査会(平成30年5月29日)「新たな防衛計画の大綱及び中期防衛力整備計画の策定に向けた提言~「多次元横断(クロス・ドメイン)防衛構想」の実現に向けて~」
7 防衛省HP「防衛大臣記者会見概要」2018年4月27日
http://www-d.mod.go.jp/j/press/kisha/2018/04/27.html