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 戦略研究会

 海洋安全保障雑感~米国東海岸便り(No.11)~
-初代ロードアイランド州名誉総領事-

(コラム104 2018/5/31)

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   平成30年(2018年)、米国東海岸ニューイングランド地方、米海軍大学が所在するロードアイランド州に初めて日本国名誉総領事が誕生した1


(在ボストン日本国総領事館提供)

   5月24日、州都プロビデンスの小高い丘にそびえる州政庁・州議会議事堂(Rhode Island State House)において在ボストン日本国総領事主催による名誉総領事就任披露が行われ、州知事代理、州下院議長代理をはじめとするロードアイランド州の政官軍学財界関係者、州在住の邦人及び日系企業代表など多くの人々が祝福に駆けつけた。式ではハーレー(Jeffrey A. Harley)米海軍大学校長が米軍を代表して祝辞を述べた。

   名誉総領事とは、我が国及び我が国国民の利益の保護、外国との文化交流の促進等を図ることを目的として、その地域の方が任命されるものである2

   今回、名誉総領事に就任されたファレル(William R. Farrell)氏は、平成2年(1990年)から平成7年(1995年)まで在日米国商工会議所(ACCJ:American Chamber of Commerce, Japan)(東京)で専務理事を、平成15年(2003年)から平成24年(2012年)まで全米日米協会会長(NAJSA:National Association of Japan America Societies)(ワシントンDC)等、日米の民間交流における枢要な役職を歴任されたほか、平成10年(1998年)から平成19年(2007年)までの間には、日米オールスターゲームやワールド・ベースボール・クラシックの運営に携わるなど、あらゆる分野において日米関係の発展に尽力された人物である。平成24年(2012年)にはそれまでの功績により旭日中綬章を日本政府より授与されている。


(筆者撮影)

   ファレル名誉総領事と我が国との関係は防衛・安全保障の分野にも広がっている。
   そもそもファレル名誉総領事と日本との最初の接点は、米空軍将校として我が国に赴任したことが始まりであり、冷戦期の最前線、日米同盟を現場から見た生き証人でもある。

   同時に、政治学博士でもあるファレル名誉総領事は、研究者であり教育者の顔も有している。昭和57年(1982年)から平成2年(1990年)まで米海軍大学教授として、平成7年(1995年)から平成8年(1996年)までハーバード大学上席研究員として、その後、平成20年(2008年)から今年まで米海軍大学非常勤教授として、もっぱら日米関係、安全保障、テロリズムについて後進育成と研究活動に携わってこられた。
   この間、ファレル夫妻は米海軍大学に留学中の多くの海上自衛官及びその家族に対して献身的な支援を続けられるなど、そこから生まれた深い絆が今日に至るまで綿々と途絶えることなくつながっている。

   ロードアイランド州は、ニューヨークとボストンの中間に位置し、植民地時代の風情を色濃く残す大西洋に面した小さな州であり、米国東海岸から見る日本は、広大なアメリカ大陸を越え、太平洋の向こうはるか遠くに位置する島国である。
   アメリカ合衆国は広大であり、全土が一様に知日・親日の雰囲気を有しているとは限らない。それぞれの州や地域によって日本や日米同盟に対する意識や理解にはおのずと濃淡がある。ロードアイランド州は全米最小の州ではあるが、ペリー提督ゆかりの地として下田市と姉妹都市関係にあり米海軍大学の所在地でもある州南部のニューポート3と、北部に位置する州都プロビデンスとの間に温度差があることは否めない4

   日米同盟を国家安全保障の基軸として位置付ける我が国にとって、日米同盟を確固たるものとして継続するためには、日米両国が民主主義国である以上、国民の理解と支持が不可欠であることは言うまでもない。理解と支持を得るためにはコミュニケーションが不可欠であり、適切な伝道者が必要である。
   政治、経済、文化のみならず日米同盟に対する深い見識と幅広いネットワークを有するファレル氏の名誉総領事への就任は、我々にとってこの上なく心強いパートナーの登場である。

(米海軍大学連絡官、米海軍大学インターナショナル・プログラム教授 山本勝也)

(本コラムに示された見解は、幹部学校における研究の一環として発表する執筆者個人のものであり、防衛省、海上自衛隊の見解を表すものではありません。)

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1 米国務省の規定では、Honorary Consul Officerとされるが、当地では慣例的に名誉総領事(Honorary Consul General)と呼んでいる。
2 外務省「名誉(総)領事」一覧、 www.mofa.go.jp/mofaj/annai/zaigai/soryoji/index.html
3 コラム092「ペリー提督からケリー提督へ」参照。
4 ロードアイランド州(the State of Rhode Island and Providence Plantations)。米国独立当時の13州のひとつで、面積は滋賀県と同程度(3,189平方キロ)、人口は約105万人。
   ロードアイランド州は、8月第2月曜日を全米で唯一「戦勝記念日(Victory Day)」として祝日に指定する全米唯一の州であり、また近年では、8月15日を「Korea Day」として慶祝する決議を州下院議会が採択している(2016年及び2017年)。
   Providence Journal, “Editorial: On Victory Day, thoughts of Guam”, August 13 2017,
http://www.providencejournal.com/opinion/20170813/editorial-on-victory-day-thoughts-of-guam,
   State of Rhode Island in General Assembly, “Celebrating August 15,2017, as ‘Korea Day’ in the State of Rhode Island”,
http://webserver.rilin.state.ri.us/BillText17/HouseText17/H6249.pdf