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 戦略研究グループ

 Joint Operational Access Concept (JOAC) について

(トピックス008 2011/12/21)

 12月8日、安全保障の民間ニュースサイトであるAOL Defenseは、エアー・シー・バトル (Air Sea Battle) コンセプトの上位コンセプトとなるJOAC (Ver 1.0) が統合参謀本部で承認されたと報じました1

 本コンセプト(JOAC)は、様々な敵対勢力の妨害すなわち、アクセス拒否 (A2: Anti-Access) 2とエリア拒否 (AD: Area-Denial) 3に対し、統合部隊がいかにしてオペレーショナル・アクセス4を達成するかについての構想を示しています。

 本構想は、湾岸戦争やイラク戦争において、米軍が作戦に先立って自由に陸海空部隊を作戦区域に展開したのに対し、今後の敵(国家主体及び非国家主体を含む)は、自らにとって好ましい行動方針として米軍に対してA2/AD戦略を採用してくる可能性があると指摘しています。その背景には、(1)作戦空間におけるアクセス及び行動の自由を拒否しうる兵器・技術の劇的な改善と拡散、(2)海外における米国の防衛態勢の変化(海外基地を提供してくれる国家の減少等)、(3)宇宙及びサイバー空間が、重要性を増し、かつ、争われる作戦領域となっていることがあります。

A2/AD概念図5


 そこで、本構想では、米国は国益保護のため、世界のいかなる地域に対しても確実に軍事力を投入できる能力を保持しなければならないとの認識を示し、このため、能力を向上させつつある敵による軍事的な妨害に対抗して、作戦区域に軍事力を投入し、かつ、これを維持する能力を米国が保持する必要があるとしています。この課題、すなわち敵のA2/ADに対抗してオペレーショナル・アクセスを達成するためのコンセプトの中心 (the Central Idea) が、作戦領域間の相乗作用 (Cross-domain Synergy) です。作戦領域間の相乗作用とは、いくつかの作戦領域の組み合わせにおいて自らの優位性を高め、他の領域における劣位を埋め合わせるもので、その組み合わせの中で任務上必要な行動の自由をもたらす優位性を獲得するものと定義されています。そのためには、今まで以上に統合 (integration) の度合いを深め、より下位の部隊レベルから緊密な連携を確立することが求められます。

作戦領域間の相乗作用 (Cross-domain Synergy) 6


 作戦領域の相乗作用を中心的な概念として、作戦の計画立案のための諸原則が以下のとおり示されています。

 ・ 事後の作戦におけるアクセスへの障害を減らすことも考慮に入れて、より幅広い任務の必要性を基礎として、アクセス獲得のための作戦を実施せよ。
 ・ アクセス促進のため、事前に作戦区域を準備せよ(省庁間協力、関係域内国との調整等)。
 ・ 多様な基地設定オプションを考慮せよ。
 ・ 同時並行的な展開、作戦により、主導権を獲得せよ。
 ・ 敵のA2/AD能力を混乱させるため、1つ以上の領域(domain)における優位を他の領域で活用せよ。
 ・ 味方の偵察・哨戒活動を防護しつつ、敵の同活動を混乱させよ。
 ・ 任務達成に必要な、敵の防衛網の突破及び維持のため、局地的な領域優勢の空間又は回廊を作り出せ。
 ・ 戦略的な距離から、鍵となる作戦目標に直接機動(攻撃)せよ。
 ・ 周辺部から敵の防御を後退させるのではなく、敵のA2/AD防衛を縦深攻撃せよ。
 ・ 敵の目標設定を困難にするため、欺瞞、秘匿、曖昧さを通じて、奇襲を最大化せよ。
 ・ 敵の宇宙及びサイバー能力を攻撃しつつ、我の宇宙及びサイバーアセットを防衛せよ。

 一方で、本コンセプトを導入するに当たっては、グローバルな規模で同時並行的に作戦が行われるために指揮統制に大きな負荷がかかることや、多国間の情報共有等の課題のほか、作戦領域間の相乗作用が達成できない場合等のリスクも10項目が挙げられています。

 本コンセプトは、今後の米軍のオペレーションのトレンドを占う上で重要な文書であり、同盟国であるわが国としては、エアー・シー・バトル構想と並んで今後も注目が必要です。


(幹部学校研究部 平山 茂敏) 


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1 http://defense.aol.com/2011/12/08/joint-operational-access-concept/ accessed on 19 Dec 2011
2 敵部隊が作戦区域に進入することを阻止すべくデザインされた、通常は長距離の活動及び能力、 Joint Operational Access Concept version 1.0, Joint Chiefs of Staff, 22 Nov 2011, p6
3 敵部隊を近づけさせないのではなく、作戦区域内で敵の行動の自由を制限するようにデザインされた、通常は近距離の活動及び能力、同上、 p6
4 任務達成に十分な行動の自由を有した軍事力を作戦区域に投入する能力、同上、 p1
5 同上、 p11
6 同上、 p15

 本トピックスに示された見解は、幹部学校における研究の一環として発表する執筆者個人のものであり、防衛省または海上自衛隊の見解を表すものではありません。