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海上自衛隊について

海上幕僚長指針

  1. 出港針路 (Getting Underway)・・・全般方針

       海上自衛隊は歴史的な転換点に立っている。
       我が国を取り巻く安全保障環境は一層厳しいものとなりつつあり、海上自衛隊の役割は国家安全保障戦略の下、多様化と拡大の方向にある。
       我が国の防衛の核心である海上自衛隊は、「精強、即応、伝統の継承」を指針として、各種事態に対し迅速に対応し、解決していく。

  2. 海上模様 (Sea State)・・・情勢

       我が国周辺の国際関係は依然として不透明不確実である。純然たる平時でも有事でもない、いわゆるグレーゾーンの事態が増加、かつ長期化する傾向にあり、これらが重大な事態に転じる可能性も懸念されている。
       アジア太平洋地域の安定化は、海上自衛隊が積極的に取り組むべき課題であるが、米国も戦略の重点をアジア太平洋地域に移す「リバランス」を継続しており、強制的な財政削減を受けつつも、この地域の兵力の近代化と増勢を進めている。また、同様に重要な課題であるグローバルな安全保障環境の改善についても、これまで海上自衛隊は、ペルシャ湾、インド洋、アデン湾等の海域で、国民の生命、自由及び幸福追求の権利を守るために汗を流してきたところであるが、いまだテロや海賊等のリスクが現存するとともに、各国の利害が本格的に衝突する可能性も否定できない情勢にある。
       海上自衛隊は、今後とも米海軍等と適切に共同又は協力しあい、我が国の国家安全保障の基本理念である国際協調主義に基づく積極的平和主義を具現化していく。

  3. 占位 (Positioning)・・・現況

       他方、海上自衛隊がその実力を真に発揮するためには、解決すべき課題がある。
       少子化、高学歴化が進むとともに、募集対象人口の減少は著しく、募集環境は一段と厳しさを増している。併せて、近い将来、定年退職者の一層の増加が見積もられるなど、抜本的な人事施策が必要不可欠である。また、国家安全保障戦略等の策定、安全保障関連法整備に係る議論等を踏まえ、新しい安全保障環境に適合する運用態勢へと改善していかなければならない。
       更に、我が国の経済は緩やかな回復基調にあるものの、防衛予算は更新時期を迎えた装備品の全てを代替できるレベルにはなく、より効率的、効果的、計画的な防衛力整備の推進が必須である。

  4. 任務 (Tasks)・・・当面の施策

       このような情勢下において、当面、海上自衛隊が努力を集中すべき重点事項は、人的基盤、作戦基盤、そして装備技術基盤の強化である。

    (1)人的基盤の強化
       精強な部隊を維持するためには、優秀な後継者を継続的に育成しなければならない。人材は有限である。女性自衛官の採用数の拡大、退職自衛官の活用、体力練成の奨励等の施策により、心身ともに健全な隊員の確保に努める必要がある。加えて、隊員が後顧の憂いなく任務に邁進できるよう、隊員家族に対する平素からの支援態勢についても、更なる強化を図っていく。
    (2)作戦基盤の強化
       あらゆる施策は、統合運用と日米共同の強化を基本とする。統合運用能力の強化に資することを前提に、部隊毎、あらゆる分野で米海軍との相互運用性を高めるとともに、統合部隊司令部の幕僚機能を強化すること等により、海上自衛隊の作戦基盤強化を図っていく。
    (3)装備技術基盤の強化
       組織改編に伴う業務フローの変更に適切に対応するとともに、統合機動防衛力の構築に資するため、資源を重点的かつ柔軟に配分し、実効性の高い海上防衛力を効果的・効率的に整備する。加えて、隊員の術科技量(技術力)を維持向上させる制度の構築を図っていく。

  5. 仕向地 (Destination)・・・目標

       先般、いまだ震災の傷跡を色濃く残す岩手県大槌町を訪問した。
       海上自衛隊は震災直後からこの地域に展開し、救援活動に従事した。とりわけ掃海部隊は、津波で流され漂う瓦礫を縫うように湾内深く進入し、水中処分員は凍える水温と数十センチに満たない水中視界の中、我が身の危険を顧みず黙々と行方不明者を求めて潜水を繰り返した。
       正面に海、背後に山が迫る生活環境下において、生活インフラを託していた唯一の幹線道路が壊滅した被災民にとって、震災直後、湾口に海上自衛隊の灰色の船影を認めたときに感じたであろう、感動を伴う心強さは想像に難くない。
       東日本大震災で掃海部隊等が見せた不撓不屈の精神は、日本海軍七十七年間の伝統と遺産を継承し、海上警備隊の誕生以前から連綿と受け継いできた海上自衛隊の伝統に基づき発揮されたものである。
       海上自衛隊が人々を心から感動させる存在となること、精強で、事態に即応し、国民に「日本の誇り」として認められることが我々の到達すべき仕向地である。そこに至る唯一の道は、伝統を継承しつつ、粛々と精強及び即応を維持することである。

    以上

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