海上幕僚長ご挨拶

海上幕僚長  海将 酒井 良 
海上幕僚長 海将 酒井 良

 海上幕僚長の酒井です。
 いつも海上自衛隊ホームページをご覧いただき、ありがとうございます。
 今年も、桜の花が美しく街を彩る季節となりました。桜は、出会いや別れの象徴でもあります。その桜をシンボルとして戴く海上自衛隊においても、新しい出会い、再会、そして旅立ちを含む様々な出来事がありました。
 皆様に私達の活動をより一層ご理解いただけるよう、その一端をご紹介します。  

海上幕僚長  海将 酒井 良
海上幕僚長 海将 酒井 良

 2月10日から18日の間、オマーン国及びドイツ連邦共和国に出張してまいりました。オマーンにおいては、同国海軍司令官・ラフビー少将を表敬し、我が国の海賊対処行動・情報収集活動への支援に対する謝意を伝えるとともに、地域の海洋安全保障環境について意見を交わしました。また、ドイツにおいては、同国海軍からの公式招待により、ミュルヴィク海軍兵学校を含む各基地・部隊を視察するとともに、同海軍トップである海軍総監・カーク中将との間で、海上自衛隊とドイツ海軍との更なる連携の強化について、有意義な意見交換ができました。加えて、ミュンヘンにおいて開催されたミュンヘン安全保障会議に参加し、欧州内外の政治家や有識者、軍人等からなる会議参加者とともに、国際的な安全保障課題と、その解決のための努力の方向性について議論しました。

 2月28日、米海軍第7艦隊司令官として着任されたばかりのケイチャー中将の来訪を受けました。横須賀に司令部を置く第7艦隊と海上自衛隊とは、日頃から緊密に連携し、共同訓練等を通じて相互運用性の向上に取り組んでいます。ケイチャー司令官との間では、地域の安全保障情勢について認識を共有するとともに、日米同盟の抑止力・対処力向上のための更なる協力の方向性について活発な議論ができました。
 同日午後には、米海軍省トップであるデル・トロ海軍長官が来省され、表敬を受けました。デル・トロ長官との間では、造修整備や装備技術協力等、ロジスティクス面を含めた日米海軍種間の連携強化の方策について、意見を交換しました。

 3月13日、第53次派遣海賊対処行動航空隊が約5か月間の任務を終え、無事に八戸航空基地に帰国しました。中東地域の緊張が高まる中、時に気温が50度を上回るジブチを拠点に、過酷な任務を完遂できたのは隊員の真摯な努力もさることながら、ご家族や関係者の皆様のご理解とご支援があったからに他なりません。海上幕僚長として、ご家族と関係者の皆様に心より感謝申し上げます。

 3月14日、チリ共和国海軍司令官・デラマサ大将が、海上自衛隊の公式招待により来日しました。チリは、距離こそ遠いものの、我が国とは太平洋を挟んだ隣国であり、これまでも海上自衛隊と同海軍とは、艦艇の相互寄港や人的交流等を通じて、関係を強化してまいりました。懇談においては、「自由で開かれたインド太平洋」を実現するための今後の協力の方向性について意見を交わすことができました。翌15日は、横須賀地区の海自部隊や記念艦「三笠」等の研修を通じて、我が国及び海上自衛隊への理解を得るとともに、16日には、広島県江田島市の幹部候補生学校における卒業式に参列いただきました。

 3月15日、米海軍兵学校合唱部のメンバー約80名が来省し、防衛省A棟1階エントランスホールにおいてコンサートを行いました。同合唱部は、米国アナポリスにおいて教育訓練を受ける海軍士官候補生で構成されており、米国内でもトップクラスの合唱団として、過去には大統領就任式で披露した実績もあります。当日は、日米両国の国歌に始まり、賛美歌や米国の民謡等、9曲が歌い上げられました。庁舎を出入りする多くの防衛省職員もしばし足を止め、ホールに響き渡る美しい歌声に酔いしれました。
 この日出演した士官候補生の中には、卒業後に海軍又は海兵隊士官として日本に赴任する人もいます。このひと時の文化交流が、将来の日米同盟の更なる礎となることを期待しています。

  最後に、3月16日、広島県江田島市の幹部候補生学校において、第74期一般幹部候補生課程及び第76期飛行幹部候補生課程の卒業式が行われました。防衛大学校及び一般の大学等から採用され約1年間の教育訓練を終えた一般幹部候補生197名、並びに航空学生として採用されパイロット等としての教育訓練を受けてきた飛行幹部候補生61名が、それぞれ厳しい修練を乗り越え、新たに幹部自衛官としての第一歩を踏み出しました。
 式典においては、一人一人への卒業証書授与、優秀な成績を収めた学生への優等賞状授与に引き続き、代表者に対して、チリ、ペルー両国から勲章が授与されました。そのうち、チリ共和国のアルトゥール・プラット海軍兵学校勲章は、ご来賓として参列されたチリ海軍司令官・デラマサ大将から、代表者に直接授与されました。
 卒業生は、式の終了後、ご家族・ご来賓の温かい拍手に包まれながら、思い出の詰まった「赤レンガ」(幹部候補生学校本館)から表桟橋へと颯爽と行進していきました。一人一人の表情は、決意と誇りに満ちており、中には感極まって目を潤ませている者もいました。卒業生たちはその後、江田内に停泊していた練習艦「かしま」、掃海母艦「うらが」、護衛艦「さわぎり」、護衛艦「むらさめ」に乗り込み、一般幹部候補生は近海練習航海とそれに引き続く約半年間の遠洋練習航海へ、飛行幹部候補生は約1か月間の外洋練習航海へと、船出していきました。彼ら彼女らが、それぞれの練習航海を通じて幹部としての自信をつけ、更に成長して無事に帰ってきてくれるのを楽しみにしています。

  海上自衛隊は、令和6年度も引き続き「自由で開かれたインド太平洋」の実現に資するため、海賊対処行動・情報収集活動を含む平素からの活動を不断に継続するとともに、同盟国である米海軍との連携の強化、価値観を共有する各国との協力の深化に取り組んでまいります。今後も変わらぬご理解・ご支援を賜りますよう何卒よろしくお願い申し上げます。

令和6年4月1日

 第35代 海上幕僚長 海将 酒井 良