役割

 日本は、四方を海に囲まれた典型的な海洋国家であり、世界第6位の長い海岸線と世界第6位(海洋白書)の広大な排他的経済水域を持っています。
 外国からの資源・食糧や海外の市場に多くを依存する我が国の貿易は、その9割以上を海上交通に依存しているため、海洋の安全確保や国際秩序の安定が欠かせません。
 しかし、既存の国際秩序とは相容れない一方的な自国の権利の主張や海賊行為、テロ、密輸などの海上での犯罪など、海洋の自由で安全な利用に対するリスクが存在しています。 こうした課題に対し、国際社会で協調した取り組みが進んでいます。
 海上自衛隊は、周囲を海に囲まれた我が国にとっての生命線である、海洋の自由で安全な利用を守るため、日々警戒監視や訓練等に取り組んでいます。

海上自衛隊の目標

 平成25年21月に閣議決定された国家安全保障戦略、そして平成30年12月に閣議決定された防衛大綱を踏まえて、海上自衛隊は、
①我が国の領域および周辺海域の防衛
②海上交通の安全確保
③望ましい安全保障環境の創出

という3つの目標を達成するべく活動しています。その基本的な考え方は、平素からの対応により脅威が及ぶことを抑止する一方、万が一有事に至った場合には、日本国民の生命・身体・財産、そして領土・領海・領空を守り抜くということです。
 そのため、海上自衛隊は、日々の警戒監視活動等、24時間365日多種多様な業務に従事すると同時に万一の事態生起時に備え、我が国を断固として防衛する態勢を継続的に維持・強化してまいります。

平素からの対応

警戒監視

 各種事態に際し、自衛隊が迅速に対応するためには、平素から領海・領空とその周辺を常時警戒監視し、情報の収集・処理にあたることが、極めて重要です。
 このため、海上自衛隊は平素から哨戒機(P-1, P-3C)などにより航行する船舶などの状況を監視するほか、ミサイル発射に対する監視など護衛艦・航空機を柔軟に運用して周辺海域における警戒監視活動を行っています。また、我が国の領水内で潜没航行する外国潜水艦や武装工作船などへの対処能力の維持・向上を図っています。

有事への対応

弾道ミサイル攻撃への対処

 国際社会におけるさまざまな努力にもかかわらず、弾道ミサイルや大量破壊兵器の拡散は依然として進展しています。
 弾道ミサイル防衛(BMD:Ballistic Missile Defense)システムにおいて、海上自衛隊はイージス艦にスタンダード・ミサイル(SM-3:Standard Missile-3)を搭載し、発射試験を成功させるとともに米海軍とのBMD対処訓練を行うなど、弾道ミサイル対処に関する戦術技量の向上に努めています。
 我が国は、弾道ミサイル防衛用能力向上型迎撃ミサイルの日米共同開発に取り組むなど、弾道ミサイル攻撃に対する独自の多層防衛体制の整備を着実に進展させています。

島嶼部を含む我が国に対する攻撃への対処

 島国である我が国に対する武力攻撃が行われる場合には、航空機や艦船などによる我が国の船舶や領土への攻撃などが考えられ、また、陸上部隊を我が国領土に上陸させるため輸送艦などの活動も予想されます。
 周辺海域を防衛するための作戦は、対潜水艦、対水上艦艇あるいは対機雷等への作戦を効果的に行うことで敵の侵攻を阻止し、その戦力を撃破、消耗させることを目的としております。

災害への対応

 海上自衛隊は、国内外で災害が発生した場合には、災害派遣や国際緊急援助活動に従事し、被災者や遭難した船舶・航空機の捜索・救助、水防、医療、防疫(ぼうえき)、給水、人員や物資の輸送といった、様々な活動を行います。その際、国内では地方公共団体等、海外では被支援国や他国の救援部隊等と緊密に連携しつつ、生活支援・応急復旧活動等を実施します。
 海上自衛隊はそのために、応急的に出動できる艦艇を指定しているほか、救難機・作戦機の待機態勢を整えています。

日米同盟に基づく米国との共同

  日米安保体制を中核とする日米同盟は、我が国のみならずアジア太平洋地域の平和と安定のために不可欠な基礎をなすものです。また、同盟に基づく日米間の緊密な協力関係は、世界における多くの安全保障上の困難な課題に効果的に対処する上で重要な役割を果たしています。
 海上自衛隊と米海軍は、これまで蓄積してきた相互運用性をより一層発展させつつ、各種訓練等を通じた相互の信頼醸成や各種戦術技量の向上など、緊密な連携の強化を図っています。

日米安全保障体制(防衛省サイトへ)

海上自衛隊が実施する活動

環境の形成
安全保障協力の強化

 海上自衛隊は、様々な安全保障上の課題に国際社会と協力して取り組み、常に安全保障環境を改善し続けることにより、脅威が及ぶことを抑止します。そのために、共同訓練・演習、防衛装備品・技術協力、能力構築支援、軍種間交流等を含む防衛協力・交流に取り組み、また、グローバルな安全保障上の課題への対応にも貢献しています。

海洋安全保障の確保

 海洋国家である我が国にとって、法の支配、航行の自由などの基本的ルールに基づく秩序を強化し、海上交通の安全を確保することは、平和と繁栄の基礎となります。
 ソマリア沖・アデン湾における海賊対処について、防衛省・自衛隊は、政府の方針に基づき平成21年3月から活動を継続しており、平成27年5月には、自衛隊初の多国籍部隊司令官となるCTF151司令官を派遣する等、海賊行為の未然防止に貢献し国際社会から高く評価されています。
 また、令和2年2月からは、護衛艦と哨戒機により、中東方面における日本関係船舶の安全確保のための情報収集活動を開始しました。

終わりに

 海上自衛隊は、創設以来、我が国を取り巻く「海」の安全を守るため日々努力を重ねてきましたが、近年、海洋をめぐる安全保障環境が大きく変化する中で、我々の果たすべき役割にも変化が生じており、特に国際的な活動の場で我が国に求められる役割が、ますます重要なものになっております。
 我々海上防衛に携わる者達も平和を願う日本国民の一人として、我が国のみならず、アジア太平洋地域及びグローバルな海洋の平和と安定に寄与するため、引き続き日々の活動に取り組んでまいります。